「政治が安定しないということもあって一向に進みません」小説家丸山健二さんによる女川町役場の方へのインタビュー書き起こし

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丸山健二さん、女川訪問

先日、小説家である丸山健二さんが女川町を訪問されました。仙台時代の友人より「仙台近郊では女川町の被害が凄まじい」と聞き案内してもらったとのことです。その時、女川町役場できいたお話の内容の一部を書き起こしという形で掲載させていただくことになりました。また、女川町訪問の取材ビデオも一部公開させていただきます。

――311直後はどうでしたか?
被災当初、船や列車は山の上、ビルの上には車、道路は瓦礫の山でした。今は、瓦礫をだいぶ撤去して、車もスムースに通れるようになりました。

女川町の人口は3月11日時点で1万11人。実際に亡くなられた方ははっきりとはしていないですが、届け出があるもので6月6日現在でいえば死亡者が380人、行方不明者が444人。女川町3800世帯のうち1000世帯が一人か二人暮らし。高齢化率は約34%。これは宮城県で2番目です。そのなかで家屋全壊が67%。町の規模からすると宮城県のなかでも高い部類の壊滅度です。

震災から3ヶ月経ち、復旧から復興へとなるが、女川町の復興計画は公聴会などを通して意見を吸い上げ、最終的に8月末に答申が出るので、それに基づき復興を進めていきます。復興計画は8年。基盤整備2年、復旧3年、復興3年の8カ年計画です。これだと例えば家を建てるにも4年ほど待ってくれとなるがとても待てません。

それまでの仮設住宅の状況ですが、現在1000戸の目途がたっています。また、月日が経つにつれて町外に移動する住民も多くなってきています。町外へ出た人たちは、民間の賃貸住宅を正式に契約すれば仮設住宅とみなされて家賃を補助するという宮城県の制度を利用しています。ですので当初2000戸の予定だったのですが、最終的に1500戸前後で落ち着くのではないかと考えています。

――義援金の分配はどうなっていますか?
全壊と死亡者がいる場合は、共同募金会と宮城県からの1回目の義援金を合わせた50万円を5月30日に振り込み済みです。その後も受付から1週間程度のタームで対応しています。また生活支援金の受付も始めていますが、書類の処理手続きに時間が掛かるため振り込みはまだです。さらに444人の行方不明者の災害弔慰金についてもなんとか目途がついてきました。

――今後やってもらいたいことは?
瓦礫の一次処理としてコンクリート、木片、鉄と分けているが、これをどこに持っていくかが決まっていません。また、その処理に掛かるお金を国が持つか否かも決まっていません。早く決めてもらいたい。

町の様子

――女川町に再び住めるのですか?
今、1メートル20センチも岩壁が下がっています。大潮だと海水が陸地に入ってくる状態です。今後、港湾整備を行い、最終的には住居区を高台に設けるよう計画をしているところです。そのためには地権者の合意を得たうえで、山を切り崩すなどして埋め立て整備する必要があり、財源の確保が重要となります。国会議員の先生にもお話をしているところだが政治が安定しないということもあって一向に進みません。

――役場の被害状況はどうでしたか?
私たちは屋上に逃げてぎりぎり大丈夫でした。職員の1人が有休休暇で自宅にいて亡くなりました。データ関係はすべて津波によって流されましたが、仙台の企業に3月5日までのバックアップデータがあったので大丈夫です。失われた11日までのデータについては、町民の方へのヒアリングや周辺の市町村から情報をもらい空白を埋めようとしているところです。財務関係など役場の地下にあるサーバにあったデータについては全部ダメになったんですが、富士通さんがなんとかしてくれたので、県には「今年の決算は無理」と言っていたのだがなんとかなりそうです。

丸山健二さん、女川訪問

――住民の方々の様子はどうですか?
震災から3カ月経ったので落ち着いてきています。しかし働く場所がないということが一つの問題です。たとえば水産加工場の従業員は全員一旦解雇になってしまいました。失業保険もあるし、避難所で生活していればお金はかからないと思う人もいるでしょうが、将来のことを考えると収入がないのは問題です。

そこで、例えば自前のトラックを使った給水活動をボランティアで行っていた方に対して、いつまでも無償はどうだろうか? ということで、ボランティア活動を2週間行った方には、その後は給付金や役場からお金を払って活動を続けてもらうようにしています。役場としても負担はありますが、町民の方のために必要なことだと考えています。

――学校に通っている子どもたちはどうでしたか?
学校は高台にあるのでほとんど大丈夫でした。しかし、何かの都合で早退したりした子どもたち数人の行方がわかっていません。

――子どもたちの心のケアは?
比較的早く学校を再開して、子どもたち同士の交流はできています。また県外から来てくれた医療スタッフが面倒をみてくれたのである程度はケアできています。役場の職員も遺体捜索などを手伝っていたので心のケアが必要だったが、医療スタッフのお
かげで乗り切れています。

――ありがとうございました。

丸山健二氏プロフィール
1943 年 12 月 23 日生まれ。小説家。長野県飯山市出身。1966 年「夏の流れ」で第 56 回芥川賞受賞。このときの芥川賞受賞の最年少記録は2004年の綿矢りさ氏受賞まで破られなかった。その後長野県へ移住。以降数々の作品が賞の候補作となるが辞退。「孤高の作家」とも呼ばれる。作品執筆の傍ら、350坪の庭の作庭に一人で励む。
Twitter:@maruyamakenji

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