増加する高齢者のアルコール依存は認知症への警鐘?
65歳以上のアルコール依存症患者数が増加
最近、老後にアルコール依存症になる人が増え、認知症のリスクの危険性が懸念されるようになりました。アルコール依存症の65歳以上の割合は2012年に24.3%にまで増えましたが、その増加要因について考えてみます。
アルコール依存症は定年退職や配偶者との死別をきっかけに酒量が増え、依存症にかかるケースが多いとされています。仕事熱心な人ほどなりやすいとされ、現役時代は仕事に追われていたため、老後はのんびりしたいと考えている人が多いようです。しかし、いざ定年を迎え仕事を辞めてみると、慣れない退屈な毎日が待っています。退職直後は行きたかった旅行や友人たちとの釣りやゴルフなどで遊びを満喫しても、次第に飽きてしまいます。
今まで仕事一筋で大した趣味も持たなかったため、定年後は何をしていいか分からず、地域に友人もいないため、お酒に走りやすくなります。もともと現役時代から酒でストレス解消をしていた人ほど危険です。定年後は家族も注意することがなくなり、何でもできる自由にブレーキをかけることが難しくなります。そして、体の機能が衰弱し始める年代、酒浸りで運動や栄養が不足すれば、筋肉や脳の衰えに拍車がかかります。
飲酒量が増えるほど脳が萎縮していく
以前から大量に飲酒する人には、脳が小さくなる脳萎縮が高い割合で見られることは知られていましたが、最近の調査によれば、飲酒量が増えるほど脳が萎縮するということが分かってきました。
認知症で施設に入所している高齢者の29%は、大量飲酒が原因の認知症と考えられるという調査結果もあります。過去に5年間以上の大量飲酒の経験がある高齢男性では、大量飲酒の経験のない男性と比べて認知症の危険性が4.6倍と報告されているのです。このように大量の飲酒は、認知症の危険性を高めることが示されています。
アルコールを毎日2杯以上摂取すると、老後の物忘れの進行が最大で6年早まるという研究結果もあり、アルコール依存症は死に直結するという自覚が必要です。そして、それは自分一人の問題ではありません。側にいる家族や周囲の負担も大きくなります。
一度アルコールに依存すれば、生涯にわたる断酒が必要
もし、アルコール依存症の兆候が見られた場合、早めに専門医にかかることが必要です。アルコール依存症は早期治療が重要です。誤解されやすいのですが、アルコール依存症は心が弱い人だけがなるものではありません。もともと、アルコールは依存性のある物質なので、誰でも依存症になりうるものです。躊躇せずに専門家を訪ねてください。
アルコール依存症を治すためには強い意志、周りのサポートも大切です。生活態度を見直し、できれば同じ苦しみを味わった仲間を見つけ、仲間同士で励まし合い、一緒に断酒をすると良いでしょう。そして、人から勧められる「一杯くらいなら大丈夫」というお酒もきっぱりと断る勇気も持ってください。
一度アルコール依存症になれば、生涯にわたって断酒を続ける必要があります。そうなる前に、退職後の「自分にできる事探し」をお勧めします。引きこもらずに新たな趣味を持ち、地域のボランティアに参加する。まだまだ自分の知らない自分に出会える機会や、自分を必要とする場所があるはずです。「何もすることがない」と思う前に「何ができるか」を考えて行動することが、豊かな人生を過ごす工夫になると思います。
(飯塚 和美/心理カウンセラー)
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