「取調べの可視化だけでは不十分。冤罪防止には参考人を含めた全面可視化を」
1度切りの人生。その人生を身に覚えのない罪で棒に振ったとしたら――。元参議院議員の村上正邦氏を中心とする「日本の司法を正す会」は、2006年から原則として月1回、さまざまな事件の当事者を招き司法のあり方を考える会合を開いている。2011年5月18日に衆議院第1議員会館で開催された院内集会「冤罪を許さない!」では、冤罪を訴える当事者たちが登場した。
茨城県で起きた独居老人の殺人事件「布川事件」では、自白の強要や証拠改ざん、証拠隠しなど警察・検察の不正が認められ、5月24日に再審無罪が言い渡される公算が高い。18年の服役(逮捕からは29年)生活を余儀なくされた桜井昌司氏は、
「証拠を隠して我々を犯人にした奴らが未だに平然と仕事をしているのは何でなんだ。やはり、こういう連中は犯罪者として裁かないといけないんじゃないですか。検察官・警察官の仕事は確かに大変。それは分かりますけれど、やったことが許されるわけがないじゃないですか」
と憤りを隠さない。人が関わる以上、ミスは仕方がないのかも知れない。しかし、判断を間違うのと、犯人に仕立てるのとでは大きな違いがある。
現在、マスコミ報道などでは取調べの可視化が議論にあがっているが、自白のテープが証拠として採用された布川事件は一部可視化では却って冤罪を生むという好例になっているという。ジャーナリストの魚住昭氏は、被疑者の取調べを全面可視化するだけでは不十分とし、
「特に(いわゆる村木事件など)特捜部での事件がそうだが、検事に弱みを握られている周りの参考人が『この人がやった』という調書にサインをしているから、いくら被疑者本人が否認しても、裁判では有罪になるシステムになっている」
と、参考人に対する調べも含めた全面可視化の必要性を訴えた。
■袴田事件、関係者の45年
1966年に発生した一家4人の強盗殺人・放火事件「袴田事件」で死刑が確定した元プロボクサーの袴田巖氏の姉・袴田秀子氏も集会に参加した。45年にもわたる長い獄中生活で、巌氏は拘禁反応による心神喪失の状態とされている。秀子氏は、
「去年の8月に面会できましたけど、それ以後、ずっと面会できません。前は『関係ないから知らない』というようなことを言いましたが、今現在は返事もしないようで、部屋から出て来ないと看守の方から聞きました。本人も何を考えているか良く分かりません。昔、元気な頃は『お姉さん、ありがとう』と言って手紙が来たんです。今でも腹の中ではそう思っているだろうと、励みにして(面会に)行っております」
と述べる。袴田事件もまた、自白の強要や証拠のねつ造が疑われており、今でも再審請求が行われている。
一方で、殺害された一家でただ一人難を逃れた長女(当時19歳)は、読売新聞の記者に「私は今でも、袴田が有罪、死刑と思っている。死刑囚として刑務所に入っていてもらいたい—-」(2010年12月17日朝刊)と語っている。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]魚住氏の発言部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv50126698?ref=news#1:04:08
(野吟りん)
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ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
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