石原慎太郎×田原総一朗(5) 「大手出版社のアニメエキスポ震災でパーになった。ざまあみろ」

石原慎太郎東京都知事「大手出版社のアニメエキスポ震災でパーになった。ざまあみろ」

 過激な性描写を含むマンガやアニメを規制する東京都青少年健全育成条例で、マンガ家や出版社、ファンから大きな反発を受けた石原慎太郎知事が2011年5月17日、ニコニコ動画の討論番組『田原総一朗 談論爆発!』に出演した。番組後半、都条例に関する視聴者の質問が読み上げられると、石原知事は「子供の手の届くところに置くなという条例を作った。なんでこれが、言論統制になるのか」と反論。さらに、東京都が中心になって開催するアニメフェアをボイコットして、独自のアニメエキスポを企画した大手出版社の動きに言及し、「『俺たちは幕張でやる』と言ったら、震災がきて両方ともパーになった。ざまあみろ」と刺激的な言葉をはいた。

石原慎太郎×田原総一朗(4) 「世論とは何か。我欲の塊ではないか」

 以下、番組でのやりとりの全文を書き起こして紹介する。

田原総一朗氏(以下、田原): では、ここで(質問の)メールを。

アシスタント: はい。「先ほどのお話でもありましたが、節電についてお聞きします。パチンコや自動販売機の電力消費を問題視していた都知事にあえておうかがいします。テレビ局もそれに匹敵するくらい電力を消費すると思いますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。どこか一社だけ放送していれば問題ないのではないでしょうか。ネットもありますし」と、群馬県の男性の方から届いている。

石原慎太郎東京都知事(以下、石原): 賛成。NHKだけが絶対ではないから、民放が代わるがわるに・・・まぁ、それなら民放は食べていけないが。

田原: こういう意見で危ないのは「深夜番組をやめろ」と(いうもの)。『朝まで生テレビ』をやめることになる。

石原: だいたい、あんなのに出るのが間違っている。夜は寝るもの。テレビは昼に見るのが正解。

田原: これはおじいさん(の意見)。年寄りでいいから。早寝早起きと。

石原: あなたはそっちでエースだから。

アシスタント: (ニコニコ動画の)コメントでは、「今後の東京のことも聞きたい」という意見が多い。特に、都の青少年育成条例に、反対している人が多いが、それに対してどのように思っているのか。

石原: その連中に聞きたいのだが、僕らが対象にしているエロ漫画を読んだことがあるのか。自分で読んでみなさい。たとえば、小学校の先生が自分の教えているクラスの少女と結婚して、夫婦生活する。そんなことは現実にありえない話だが、それが漫画になって出てくる。それから、中学生のお姉さんと受験勉強でがんばっている5年生か6年生の男の子が恋愛に陥って、激しいセックスをする。近親相姦。私たちは「それがいかん」といっているわけでない。そういう漫画を描く奴は外国だったら通用しない。検閲にかかって。それは目をつぶってやろうと。だけど、その本を子供の手の届くところに置くなという条例を作った。なんでこれが、言論統制になるのか。

田原: そこだ。そこが誤解されている。そういうのを出すなといっているわけでなく、子供の本棚に全部置いてあると。たとえば大人の本でも、ヌードが多い本はビニールで囲ってある。その程度のことをやれということでしょ?

石原: そうそう。

田原: 僕は最初、誤解していた。「そういうエロ本があるのは、けしからん」と言ったと思って。なに言っているんだと。石原さんの小説なんてのは、全部レイプなんだよ。しかも集団暴行。そんなことを書いてきたのに何を言うかと思った。

石原: 大きな出版社までが、被害妄想か知らんが、(東京国際)アニメフェアをやったら「あんなところには行かない」と。「俺たちは幕張でやる」と言ったら、震災がきて両方ともパーになった。ざまあみろと。

アシスタント: こちらは愛知県の男性の方(からのメール)。「自宅待機しているニートを強制的に社会復帰させるために、何か法的整備はできないでしょうか。人口減少化の進む日本には貴重なマンパワーです」という意見が。

石原: その前に、そういう人間を生み出した社会というものをだんだん是正してくためにも、高校を卒業した年齢で1年か2年、集団生活をさせればいい。法律で決めたらいい。韓国もやっている。自衛隊か消防か警察か。最低でも青年海外協力隊に行って集団生活で奉仕業務に従事させたら、しゃんとする。

田原: その点では、昔ドイツが分かれている頃、西ドイツは徴兵制だった。僕は行って「徴兵制はおかしい。人間には基本的人権があるんだから、軍隊に行きたくない人はいかなくていいじゃないか」という話をした。いろいろあった。結論からいうと「そうだ、その通りだ」と。だから、軍隊に行きたくない人間はそのことを申し出れば徴兵で行かなくていい。その代わり、軍隊は10ヶ月。(行きたくない人間は)12ヶ月社会奉仕しろ、と。「どっちにする?」と。これでちょっと参ったな、と思った。そういうことでしょ、石原さんの言いたいことは?

石原: そう。それで例えば斎藤環君という友人の若い精神病学者が、引きこもり・ニートの専門家なのだが、彼が預かっているそういう感じの人たちに聞くと、「君、もし徴兵制がきたら、警察に入隊するか、自衛隊に入隊するか」と言うと、喜んで言うと。100%「うん」と言うと。

田原: 「うん」と言うの? では、なぜ引きこもりなのか。

石原: それは知らない。とにかくやっぱり自分の救済は集団生活でしか、自我というものを鍛え直すしかないというのが、分かっているのだろう。感覚的に。

田原: 僕は政治家に一番抜けているのは、ここは石原さんに期待しているのだが、金権(政治の時代)が終わったと。金権はダメだと。僕は金権がいいとは思わないけど、金権に代わる新しいノウハウができていない。何ができていないかというと、菅(直人首相)さんにしても谷垣(禎一自民党総裁)さんにしても何か言うが、言うことに命を賭けていない、全然。なぜ、あんなにだらしないのか。今の政治家は。

石原: 個人によって、いろいろ焦心もあるだろう。金権に代わるものは「我欲の抑制」。とにかく日本人は野放図になりすぎた。

田原: 野放図とは?

石原: とにかくなんでも欲望を叶えようとしている。だから増税に反対、片方ではモンスターペアレントとかモンスターペイシェントとかが出てきた。学校の先生――ろくなやつがいないこともないんだよ、でも頑張っている先生や頑張っている医者が皆ひどい目に遭っている。

田原: どう痛い目に遭っているのか?

石原: 自分を殺してでも、無茶苦茶な要望にペコペコしなければいけない。とにかく、今の教育の荒廃、医療の荒廃には、いろいろな要因があると思うが、ただしていくと、ある大きな部分、全部とは言わないが、つまり父兄の妙な欲望とか、患者のわがままとか、そういったものが跋扈(ばっこ)している。どこに行っても。とにかくこんなに国民のわがままを通さなければいけないのでは、政府も流行らない、店も流行らない。

田原: だが、国民をそんなにもわがままにした理由は政治にある。特に自民党にある。

石原: そう。

田原: 石原さんは自民党だった。

石原: だから僕は愛想を尽かして辞めた。

田原: どこに愛想を尽かせたの、自民党の?

石原: もうとにかく結局、最後は役人の言いなり。僕は、官僚は必要だと思う。昔は大官僚がいた。岸信介もそうだし、賀屋興宣もそうだし、椎名悦三郎だってそう。この連中たちが偉かったのは、アンチテーゼがあった。それは何かといえば「軍」。軍というものに抵抗してでも――それが習慣であったから、発想力もステディだし(安定していた)。

田原: 後藤田正晴もそうだ。

石原: まぁそうだろう。

田原: 彼は戦争中台湾にいたが、(日本国内で)多くの人が死んでしまった。ところがアメリカ軍は、台湾に攻めてこなかった。申しわけないという気持ちがある。後藤田さんには。

石原: それで要するに、軍に対する反発・抵抗って何かといえば国家を考えなかった。国家の利害損得で考えるから命がけで抵抗した。賀屋さんの言いなりになって統制経済をやったら、高橋是清なんて賀屋さんに代わって殺されるわけだ。賀屋さんは非常に責任を感じてた。そういう政治家が・・・。

田原: あぁ、賀屋興宣というのは統制経済をぶち上げた。

石原: 日本で初めてやった人。

田原: で、高橋是清は反対した?

石原: いや、そうじゃない。それは押し切っている。要するに賀屋さんの言うとおりやった。それが軍は気に食わなかった。なんかパリの軍縮会議に行った時、山本五十六に賀屋さんはぶん殴られた。山本五十六か、その部下か知らないが。まぁ、そういう官僚はいたが、今の官僚はダメ。彼らは何と言うかというと、「我々の取り得はございます。石原さんは官僚がお嫌いかも知れないですけれど、日本の官僚にもすごいところがあるんです」。それが何かといえば、「コンテニュイティとコンシステンシー」、つまり「継続性と一貫性」だという。こんなものは変化の時代に通用しない。

田原: ただ、逆にいうと政治家は選挙がある。だから地方出身の政治家が、「金帰月来」でいって金曜には地元に帰って月曜にやってくる。忙しいと。勉強している暇があまりない。また、落ちる。落選したらどうしようもない。官僚は落選しないし、それに地元に帰る必要がない。だからまさに継続性があって、専門的に勉強できる。だから官僚が優れているといえるのではないか。政治家がそんな官僚に対抗するにはどうすればいいのか。

石原: 自分の発想を持てばいい。官僚を使うのは政治家の責任だから、官僚に好かれてはダメ。例えば自分の功を誇るわけじゃないが、僕は運輸省の時に成田に行って、美濃部(亮吉氏)が反対してできなかった新幹線の路盤が残っているから、「なんで地下3階までできていて、一般の普通線を引き込んで通さないんだ」と言ったら、最初官僚は反対した。(だから)「俺(石原氏)一人で行く、視察も」と。そうしたらついてきた。湿気が溜まってボトボト垂れているから「これは国民の涙だよ。これいつまで放置しておくんだ。新幹線はきっこないんだから在来線でいいじゃないか」と言ったら、迷妄から冷めて官僚はすぐ動く。それで3ヶ月で会社を作って始めた。竹下総理大臣(当時)が褒めてくれた。それから、羽田(空港)の4番目の滑走路だって、足りないのはわかっている。だから亀井(静香)が政調会長をしていたときに、「君も運輸大臣をやっているからわかるだろう。ちょうど予算の編成期直前だから調査費を付けさせろ」と。航空局長呼んだら「とてもできません」と言うから「じゃあお前クビだ。次官を呼べ」と。次官に文句を言ったら次官がニヤニヤ笑って「分かりました。調査費で」。ついたら途端にパッとできちゃう。

田原: 石原さんに言ってほしい。日本は「経済大国」といいながら、ハブ空港もなければハブ港もない。みんな韓国に取られている。なぜ? なぜハブ空港作れないのか。なんでもハブ空港にすればいい。

石原: 羽田をハブ空港にしたじゃないか。

田原: してないよまだ。24時間やってない。

石原: 24時間飛んでいる。あなた何を言っているの。24時間開かれている。

田原: なんで成田があるの、じゃあ。

石原: 成田があったっていいじゃないか。ニューヨークだって、3つも4つも。要するにボルチモアの・・・。

田原: 今はハブ空港と言えるのか。

石原: もちろんそう。

田原: ハブ港はないね?

石原: 港はね、これはまたちょっと難しい問題があって。なかなか組合とか労務者の関係があって。アメリカなんかはもっと手を焼いていて、どうにもならなくて、ニューヨークとサンフランシスコと、とにかく大事な港をUAEに売った。ところが、これは国策として危ないといって買い戻した。東京もとにかく何とかしないといけない。

田原: (先ほどの言い方は)間違えた。石原さん(が都知事)の時代に羽田をハブ空港にしたのか。

石原: それから要するに東京と川崎と横浜の港を1つにした。

田原: そう、1つにして。ハブ港になってないんだけど。

石原: いやだから、これからハブにする。それはこれからの外交の問題もあるし、セールスの問題もあるし、国内法を変えないと。たとえば、横浜で荷物を下ろした船が、ついでにお客があるから(と言って)北海道の函館とかには寄れない、これは。国内航路の貨物船を優先するため荷物を積み替えるのだが、こんなバカなことをやっている国はない。

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http://live.nicovideo.jp/watch/lv49658192?ref=news#41:15

(ふじいりょう、村井克成、亀松太郎、秋本直樹、大住有、岩本義和、土井大輔、丹羽一臣)

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