石原慎太郎×田原総一朗(1) 「国の官僚はバカだから、地方の成功をマネしない」

ニコニコ動画の討論番組に出演した石原慎太郎東京都知事

 石原慎太郎・東京都知事がニコニコ動画の討論番組に初めて出演した。新番組『田原総一朗 談論爆発!』の第1回ゲストとして2011年5月17日、ニコニコ生放送のスタジオに登場。歯に衣きせぬ発言で物議をかもしてきた石原氏らしく、その口からは「バカ」という言葉が何度も出た。最初に批判の対象になったのは、霞が関の官僚だった。石原氏によると、「国の官僚はバカだから、地方で成功したことは絶対にマネしない」のだという。

 以下、番組での石原氏と田原氏のやりとりを全文、書き起こして紹介する。話は霞が関批判から始まり、税制を変えた元首相への不満、自民党への苦言と展開していく――

アシスタント: この番組は、常にジャーナリズムの第一線に立ち続ける田原総一朗さんに、ゲストの方と徹底討論してもらう。記念すべき1回目のゲストは、先月行われた都知事選で4度目の当選を果たした石原慎太郎東京都知事。

石原慎太郎東京都知事(以下、石原): よろしく。

田原総一朗氏(以下、田原): この人は、日本で一番難しい人。誰かまわず怒るから。

アシスタント: 今日は番組の視聴者からのメールを受け付ける。

石原: つまらないメールは出すなよ。

田原: 石原さんよろしく。石原さんは都知事選に出ないと思ったのに、どうして出たのか。

石原: 僕は150%出るつもりはなかった。災害(東日本大震災)が起こる前で、なかなか日本もやっかいな時代になってきたが、東京は東京で私なりに仕事をしたつもりだった。国がマネをしてほしいこともやったが、国の官僚というのはバカだから、変なプライドがあって、地方で成功したことは絶対にマネしない。

田原: たとえばどんなことがあるのか。

石原: 会計制度を変えた。日本の周辺で、日本のようなバカな会計制度をやっているのは、北朝鮮とフィリピンとパプアニューギニアだけ。

田原: どういう会計制度なのか。

石原: まったく発生主義の複式簿記。公会計制度はちょっと違い、企業の持っている資産と国が持っているのと、地方自治体が持っているのと・・・たとえば東京には地下鉄があるが、最初に渋谷から浅草までできたのが、当然償却していることになっているが、価値がある。退避壕になったりと。それから高速道路も補修しているので、帳面のうえで償却が済んでいても、それをどういう計上にするのかは、なかなか難しい。いずれにしろ、単式簿記というものは繰り越しができないので、年度末、2月3月にはやたらと工事をする。あんなバカなことをやっている国はない。

田原: 3月までにいっぱい金を使わないと、(予算が)なくなってしまう。

石原: そう。大蔵省がお金を出してくれなくなる。

田原: 財務省が。

石原: 今は財務省か。なんだか知らないが行き当たりばったり。僕が一番怒ったのは自民党もダメなのだが、福田内閣のとき・・・福田内閣というのは(福田赳夫氏ではなく)息子のバカ内閣のこと。

田原: 福田康夫。

石原: 康夫。どうにもならない。

田原: 親父(赳夫氏)はいいけど、息子はバカだと。

笑顔で答える石原都知事

石原: 何も知らない。北京オリンピックのとき元首の席に座っていて、自分の国の選手団が入場したときどの代表も立ち上がって手を振るのに、手を振らなかったのはあいつと北朝鮮の代表だけ。奥さんは手を振ってたが。あとで(当時の福田総理を)怒った。それでなんと言ったかと思えば(選手団に)「せいぜいがんばってくれ」と言ったと。辞書を引けば、「せいぜい」も「うーんと」という意味かも知れないが、日常会話で「せいぜい」といえば「ダメだろう」と(いう意味)。

田原: オリンピックの選手というのは命を賭けている。

石原: その通り・・・まあいい。そのとき(当時の福田総理は)突然法律を変えた。税法を。これはもう抵抗できない。とにかく東京は儲かっているから、子供の財布から親がお金を取ろうと法人事業税の分割基準を変えた。あの時は税収がかなりあったが、それでいくと4,000億円(国に)とられる。あのときは税収が減ったから3,700億円ほどとられたが、民主党は「こんなバカな話はあるか。地方自治体が傷つくじゃないか。地方主権を侵害することはない」と国会で猛反対してくれた。

田原: 東京都が会計制度を変えようとしたら・・・。

石原: いや、その話ではない。それとは別。とにかく彼は業腹だったんでしょ。場あたりでやってきたから、財政そのものも破綻しそうになって。

田原: 国が。

石原: どっかいい財源ないかなと思ったら、法人事業税を変えたら、東京からも結構金取れるし、愛知県もちょっと、それから浜松市も儲かっている。それは量は少ないが、それをとにかくずっと取るっていう。とりあえず2年というけど、今年もとられる。反対した民主党が政権とったんで、「おい、あれ返してくれ」って言ったら、ニヤニヤ笑って、菅(直人首相)は何も言わない。

田原: 何も言わないというのは、わかってないのでは。

石原: いや、わかっている。それで、とにかく言いたいことはいっぱいあるが、負けるのを覚悟で訴訟を起こそうと。こんなバカなことを地方分権の時代に国がやったらかなわんぜ、と。それで弁護士に相談した。「石原さん、これは負けます。向こうは法律を決める権限を持っているんだから、地方がブツブツ言ったって、通ったものは通った。しょうがないんですよ」と。でも、それはやっぱり見せしめのためにやろうじゃないか。負けるの覚悟、やろうと言ったら、「もっと損しますよ」って言う。どんなこと? と聞くと、4000億円を対象に訴訟を起こすと、証紙に4億円払わないといけないと。

田原: 4億、なるほど。

石原: それで証紙1枚に4億円かとあきらめた。その代わりねじこんでいって、日本のために東京のために、外環(自動車道)を、共産党の美濃部(元知事)が反対して潰したきりになっていたから、これを優先的にやるようにしてくれと言ったら、「わかりました」と言うが、それもどっか行った。

田原: 外環というのは、今どこかにいったのか。

石原: いや、それで私の兄弟分の亀井(静香氏)が頑張ってくれて、工事費もついた。今は国がこんなガタガタ。だから民主党の政権はなんだかわけがわからない。「コンクリートより人だ」なんて言っているから。道路は一切作らないようだ。

田原: 「コンクリートから人だ」なんて言っていると。でも、人がコンクリートに守られているなんてことは知らないわけだ。

石原: そう。

田原: 民主党もどうしょうもないが、自民党は何をやっているのか。

石原: どうもしょうがない。もうちょっと果敢にね。僕ら政局もわからないが、国民の鬱憤を晴らすようなことを言ってもらいたいが。息子(石原伸晃氏)に、もうちょっとラディカルに乱暴にやれと言ったら、「お父さんを反面教師にして、言うことは聞かない」と言うから。

田原: なに、親には何でも言いたいことを言う。相当、言葉の上では暴力的な言葉をはく、そういうことは一切しないのか。

石原: いや、教養があるからそうはできないのでは。(自民党の谷垣禎一)総裁もそうではないか。女学校の校長先生みたいに、なんか乙に澄まして迫力がない。

田原: 今の総裁ね。あれは実は僕の友達はね、谷垣さんは何とかもっと小泉(純一郎)さんあたりから総裁に立候補させよう、出馬させようと思って僕も頼まれて何度か煽ったことがある。4回やったが、あれは野心もなければ意欲もない。

石原: 意欲があるから総裁になったのではないのか。

田原: ないと思う。

石原: まぁ、それはあなたのほうが詳しい。

田原: (意欲が)あるなら、もっと本気になって民主党をぶっ潰そうと考えろ。まぁいいや、話を元に戻したい。なんでやらないつもりの(都知事に立候補したのか)。

石原: いろいろあった。僕が辞めた後に立候補する人をシミュレーションすると、まず第一に25%(の票を)取る人がいないだろうと。

田原: いない。

石原: (そうなると)再選挙になる。非常に混乱が起こると。まず、そうだった。それで実は、僕はこの人を口説き落としたら、自民党、公明党、民主党は賛成して――民主党もだよ、連合もついてくる。まったく政治色のない人。ある人物を頼んだの。

田原: 口説いた。

石原: うん。

田原: 誰だろう。政治家じゃない。

石原: 政治家じゃない。

田原: 財界人でもない。

石原: 違う。要するに、日本の代表的な知的な人物。能力もあるし。断られた。

田原: なんで断られたのか。

石原: とにかく「私の任じゃない」と。残念だったが。それで松沢(成文元神奈川県知事)君が(都知事選出馬の)意志があることをかねがね聞いていたので。経緯をくどくど話しても決まったことでしょうがないが、自分の引退声明をした後で、バトンタッチをするということでやろうと思ったら、彼が先に名乗りを上げてしまった。それで非常に地元も混乱したし、東京も混乱した。いろんなことがあった。

田原: 松沢氏は、石原さんが「出ない、出ない」と言ったから、ポスト石原で出たものとばかり思っていた。

石原: そうじゃない。やる気があると言うから、「それじゃ僕が引退声明してから、その次の日に名乗りを上げろ。僕は引退するときに君の名前を出すから」と言ったんだが。(神奈川県知事)後継者の選択の都合があるから、ちょっとそれはできないって言うので、やっぱり僕が引退声明する前に出ると、変なことになって。「石原が出るとどうなるんですか」と聞かれときに、「それは石原さんと戦うしかない」と言うというから。それはちょっといろんな点でごちゃごちゃするぞ、と言ったんだが。向こうも都合があったんだろうが、残念ながら後継者も彼の意志ではない、全然違う人(黒岩祐治氏)に決まった。そんな話をしてもしょうがない。

石原慎太郎×田原総一朗(2) 「東京に『隣組』を復活させたい」

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]番組冒頭から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv49658192?ref=news

(ふじいりょう、村井克成、亀松太郎、秋本直樹、大住有、岩本義和、土井大輔、丹羽一臣)

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