食糧よりも花が必要な場合も ノンフィクション作家が見た”報道とは違う”被災地
東日本大震災からの復興が始まったかのように見える東北地方。しかし、被災地の取材から見えてくるのは、報道とは乖離した現地の姿だった――2011年4月19日放送の『ニコ生ノンフィクション論 被災地で「遺された人々」の声を聴くということ』では、マスメディアの報道では伝えられない被災地の状況を、ノンフィクション作家の石井光太氏が「パーソナル」メディアならではの視点で報告した。
マスメディアでは連日、復興に向けた取り組みが「明るい話題」として報道されている。しかし、その一方で「復興しないでくれ」、「自分の瓦礫の家をそのままにしてくれ」と言う人もいるという。石井氏は、
「例えば老人にとっては、人生のすべてをそこで過ごしてきた。瓦礫と言うけど、ゴミじゃない。宝の山なんですよ。それを片っ端からなくしてしまえば、その人にとっては何も残らなくなる」
とし、復興に対する思いが単純ではないことを語った。また、遺体捜査では、「希望を持ちたい」や「腐った死体を人目にさらされるぐらいなら…」などの理由で「見つからない方が良い」と考えている人も多いという。
■ 食糧よりドライアイスや花が必要な人も
こうした負の側面は、なかなか既存メディアからは伝わって来ない。石井氏はこの理由を「目線が合っていない」報道をしているからだと指摘する。
「百ある内の1個でしかないのに、それが百あるように映されるわけですよ。百人いれば百通りの受け止め方があって、百通りのペースで物事を進めていかなくてはならない。でも、メディアやその外の人間は全然違う文脈の中で、全然違うスピードの中で物事を進めようとする」
こうした中で見落とされていることがある。4月に入り気温も上がって来ているが、遺体を発見するにしてもドライアイスが不足しているという。石井氏は、「おにぎり3つが4つになるよりも、ドライアイスをくれと言う人もいる。だけど、復興支援となると横並びになって、『食糧や衣服、毛布を送れ』でストップしてしまう」と語る。
遺体発見でもう1つ欠かせないものが「花」だ。しかし、現地では菊が1本しか売ってもらえない状況にある。
「(花を送るということは)食糧や水を送ることよりも、下手するともっと重要なことかもしれない。一生残りますからね。例えば、5日間野ざらしになった遺体を土葬するとなったとき、1輪でも良いから花を置きたいというのは人間の気持ちじゃないですか」
石井氏が伝える被災地の別の一面は「パーソナル」だからこそ、圧倒的なリアリティがあった。
ニコ生ノンフィクション論 被災地で「遺された人々」の声を聴くということ
http://live.nicovideo.jp/watch/lv46667008
(番組はタイムシフト機能で2011年4月26日まで視聴できる)
(野吟りん)
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ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
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