定期的に通う書店を見つけることで発見する本の「別の魅力」とは
2014年12月22日、渋谷教育学園渋谷中学高等学校にて行われた、作家・中村邦生さんによる講演「文学を楽しむ――なぜ富士には月見草が似合うのか」。中高生に向け、文学の楽しさをわかりやすく、かつ本質を突きながら語った、同講演が加筆修訂され、一冊の本『はじめての文学講義――読む・書く・味わう』となりました。
本書では、文学をより一層楽しむために、読む際あるいは書く際、持っておくと良いさまざまな視点について、古今東西の文学作品を例に挙げながら語られていきます。同時に、学生たちから寄せられた文学にまつわる疑問にも、中村さんは丁寧に答えていきます。
たとえば高校1年の学生からは「魅力的な文章とはどのようなものか」という質問が。この質問に対し中村さんは、魅力的な文章は、五感のすべてを刺激してくるものだと指摘します。
「しばしば書き手はどうしても視覚に依存してしまうんですが、それ以外の嗅覚、触覚、聴覚、味覚のすべてを感じさせる文章というのは、とても魅力的だし、心に残ります。場合によっては、このうちの二つを組み合わせると描写がうまくいくということがあります」
また、ある学生からは、たくさんの本のなかから自分が読むべき本を見つける方法、本を選ぶ基準を知りたいとの質問。この質問に対しては、実際に書店へと足を運ぶ習慣をつけることが、まずは大事だといいます。
「自分が定期的に通う書店を見つけてほしいと思います。その書店では、どこの棚にどんな本があって、どんなジャンルがまとまっているのか、憶えてしまうくらいの書店をつくってください。(中略)そうすると、本というものの別の魅力に気がつきます。表紙のデザインや判型、活字のレイアウトや紙の感触など、物としての魅力的価値を発見するのです。(中略)新刊本というのは生鮮食品なんですよ。だから、書店に足を運ぶか運ばないかで、思考力と感性への栄養に違いが生まれます」
実際に本を手にとり、装幀をはじめとした本の放つ雰囲気、物としての魅力から、その本がどんな内容なのかと期待すること。それだけでも大いに思考や感性は鍛えられていき、次第に自分が読むべき本が何か、自ずとわかってくるのだといいます。
文学作品に触れるとき、より一層楽しむためにも知っておきたい視点の数々。中高生はもちろん、大人でも考えさせられ、得るところの多い一冊となっています。
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