『新ブラックジャックによろしく』作者に出版社社員「漫画がなくても私は生きていける」
医者の卵、つまり研修医である斉藤英二郎がさまざまな指導医のもと、理想と現実に狭間で葛藤し、答えを導き出していく物語。それが、漫画『新ブラックジャックによろしく』だ。もともと講談社で『ブラックジャックによろしく』を連載していたものの、小学館の『ビックコミックスピリッツ』に異例の移籍を遂げ、『新ブラックジャックによろしく』として新たにスタートした。
ここ最近の報道ですでにご存知の方も多いとは思うが、作者である佐藤秀峰先生は現在の出版社と作家の関係において納得がいかない部分が多くあり、インターネットで漫画を配信するという道を作る(創る)ことを決心。漫画を連載しつつ、新たな道を歩くために試行錯誤し、ようやく『新ブラックジャックによろしく』のインターネット配信に向けて準備に入ったところのようだ。詳しくは、『“新ブラックジャックによろしく” が最後の作品になると思います』と『経費が1800万円!? 人気漫画家が原稿料と印税を暴露!』の記事を読んで欲しい。
しかし、漫画家ひとりではやれることに限界がある。さまざまな人たちにアドバイスをもらっているようなのだが、とある出版社のお偉いさんに本の流通に関して協力を求めたところ、「漫画が無くなっても、会社がある限り、私達は給料をもらえるんですよね」と一蹴されたという。
出版社のお偉いさんとの話の流れとしてはこうだ。漫画家が独自に自分の漫画を流通させ、本屋に並ばせるためには出版社と本屋との間にある取り次ぎ会社と、最低でも毎月200万円以上の取引をしなくてはならない。また、出版社が作った単行本はあくまで出版社のものなので、社員割引として80パーセントの価格で販売することはできるが、著者とはいえそれ以上低価格で渡すことはできない。さらに、たとえ流通経路を作ったとしても、本屋が佐藤先生の本を取り扱ってくれるかどうかわからない。
出版社のお偉いさんが佐藤先生に話したことをカンタンにまとめると、個人で本を全国の本屋に流通させることは、ほぼ不可能ということである。このことについて当編集部が独自に調査をしたところ、非常に興味深いことが判明した。出版業界に詳しいX氏にお話をうかがった。
記者 と、佐藤先生が言われたそうなのですが。
X氏 そのお偉いさんの言っていることは核心であり偽りがない。
記者 個人が本屋に本を並ばせることはできないのですか?
X氏 できるといえばできるし、できないといえばできない。
記者 明確にどういうことでしょうか?
X氏 大手取り次ぎ会社は、三大出版社の子会社なんですよ。
記者 本当ですか!?
X氏 すべてがそうではないですが、三大出版社の出資によって作られた会社が牛耳っている。
記者 牛耳っているんですか? その影響とは?
X氏 佐藤先生が死ぬ気で流通を確保できたとしても、本屋に並ばない。
記者 圧力ですか?
X氏 そういうものも存在します。体裁を考えて置かない場合もあります。
記者 では、絶望的なんでしょうか?
X氏 そんなことはない……と思う。
記者 といいますと?
X氏 これは真実味がある話だけれど、あくまでウワサとして聞いて欲しい。
記者 はい。
X氏 『〇ミッ〇〇ンチ』の新〇社が、大御所の漫画家さんを抱えているのをご存知ですか?
記者 はい。『〇〇の〇』の先生や『〇ろしく〇カド〇ク』の先生がいますね。
X氏 新〇社もそこそこ大きな会社ですが、『〇ミッ〇〇ンチ』が出るまでは漫画界では大手とはいえない存在だった。
記者 ふむふむ。
X氏 それでも漫画を流通させ、大成功している理由がわかりますか?
記者 どうしてでしょう。
X氏 大御所の先生を抱えているからです。大手出版社も圧力をかけにくい。
記者 なるほど!
X氏 それと関連した話をもうひとつ。漫画家の小池一夫先生をご存知ですか?
記者 はい『子連れ狼』の作者ですよね。
X氏 そうですね。その小池先生は自分で小池書院という出版社を作り、流通させているんですよ。
記者 でも、大手出版社の圧力が取り次ぎ店に行くことはないのですか?
X氏 小池先生の場合、ないです。
記者 どうしてですか?
X氏 『〇ミッ〇〇ンチ』の例と似ていますよ。小池先生が大御所すぎるんです。
記者 それだけ漫画界に影響を与えている人になれば、圧力もかけられないと。
X氏 そうですね。『子連れ狼』の作者といえば、大御所のなかの大御所ですからね。
記者 なるほど。
X氏 それにしても佐藤先生、『新ブラックジャックによろしく』の斉藤先生(主人公)とまったく同じような性格の方ですね。こういう人は誰かが手を貸さないとダメです。それなりの権力を持った人物が。そんな人が出てくることを私は望みます。
インターネットで漫画を配信、独自に漫画を本屋に流通させる。さまざまな方法を模索している佐藤先生。人に感動と知識と人生観が変わるほどの物語を与えている『新ブラックジャックによろしく』を、佐藤先生が締め切り以外に何の心配もせず描ける日が来ることを祈りたい(このニュースの元記事はこちら)。
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