レアなオースティンが拝めるけど、色々残念なスポ根モノ『スティーヴ・オースティン ノックアウト』
久々のプロレスラー出演映画シリーズとなる今回は、WWEの90年代後期の大スター選手、ストーンコールド・スティーヴ・オースティン主演作『スティーヴ・オースティン ノックアウト』(2011)をご紹介。国境警備員、傭兵、借金取りなどを演じて来たオースティンですが、今作は元ボクサーの高校用務員というややまともな一般人役です。
母が再婚し新しい父親の住む土地の高校に転校したマシューは、転入生の洗礼として、学園一の美女に声をかけるも、その彼氏ヘクターに難癖をつけられた挙句、早速イジメの対象に。ボクシングの名レフェリーだった祖父の影響もあって後日、ボクシング部入部試験を受けるも、その部のエースはあのヘクターだった。
テストマッチでボコられ、入部も叶わなかったが、訳知り顔の用務員のハゲオヤジに弟子入りすると、親にも内緒でボクシングを開始。彼女までゲットするリア充ライフを満喫していたのだが……。
要は『ベスト・キッド』のボクシング版です。マシューと彼女との恋愛模様に古典映画『メトロポリス』の映像を使うなど、女性監督らしいロマンチックな演出が目立つのも特徴。オースティンは主演だけど、主役ではないという役柄です。
そんなワケで、元ボクサーのよしみで用務員バーンズ(オースティン)が、マシューをいっちょ前に仕上げるも、親バレしちゃったり、コーチ資格もないのに教えていたせいで大問題発生。どうにかマシューのボクシング部レギュラー入れ替え戦出場は実現し、決戦の日には……みたいな感じでクライマックスへ。
典型的スポ根映画の文法で作られているので安心して観られる部類の作品、なんですが、そこはプロレスラー出演映画。残念な部分もしっかりあります!
まず、現役時代のオースティンのパンチは足を踏み鳴らすような独特な打ち方で、ボクシング流のコンパクトに脇を締めて打つ代物ではありません。そのせいかお手本として素振りを見せるシーンすら無し!
指導場面でも、ただミット打ちをさせているだけにしか見えず、あとは外を(もっさり)走っているか、リングサイドから指示出しするだけで、元有能ボクサー感はかなり薄味。最後のシーンしか出てこない祖父役の俳優さんの方が元ボクサー・名レフェリーの貫禄があるというのはいかがなものか。
加えて、短期間の撮影期間だったのでしょう。主人公マシューは、最初から最後まで小太りのまま! 正直、パンチの打ち方を少し覚えたおデブちゃんのままなので、何だか感動のフィナーレを若干モヤモヤさせてくれます。
そうはいってもアクション一辺倒のオースティン主演数作に比べると万人にオススメ出来る(気がする)レアな作品であることは確かなので、そうですね、そう、女性にも観てもらいたい作品ですね!
ちなみに本作でのオースティンは、いわゆる”ストーンコールド”ギミック定着後のトレードマークである髭(ドーナツ形状?)を、顎鬚だけの口髭を剃り落とした状態。実はかなりレアなお顔だったりします。
(文/シングウヤスアキ)
■関連記事
古舘実況でウルトラシリーズとプロレスの親和性の高さが分かる『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』
「ハッスル」における天龍・川田的な"本職の意地"が楽しめるSW便乗珍作『宇宙からのメッセージ』
WWEの「ジェシー&フェスタス」のネタ元とされる『二十日鼠と人間』で心が曇る
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。