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“たたき合う文化”から“たたえ合う文化”へ

風観羽

今回はSeaSkyWindさんのブログ『風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る』からご寄稿いただきました。

“たたき合う文化”から“たたえ合う文化”へ
別格のスティーブ・ジョブズ氏

アップル社のCEOであるスティーブ・ジョブズ氏が病気療養のために再度メディカル・リーブに入ったというニュースは、各所に大きな衝撃をもたらしているが、特にアップル社の本拠地であるシリコンバレーではひときわ大きな騒動になっているようだ。最近現地に出張した日本人に聞いてみても、日本にいると想像できないくらい大きなショックを皆感じているという。シリコンバレーには数多くの著名人がいるが、やはりジョブズ氏は別格のようだ。

米国人の価値観を変えたジョブズ氏

先日、一連の関連記事の中に、大変興味深い論点を述べたものを見つけた。ニューズウイークウェブ版に掲載された、フリージャーナリストの瀧口範子氏のコラムである。

ジョブズ氏はプライス第一で製品の美しさなどほとんど見向きもしない米国人に、プライス以外の“美しさ”という価値を植え付けた、という。

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それによって、安物買いのアメリカの大衆は美しい製品に目を開かされたと言っても、決して過言ではないと思う。それまでのアメリカ人の判断基準は、ともかく“プライス”。アメリカ人は1セントでも高いものを買わされると、自分の頭が悪いためにだまされて悔しいという感情を持つ人がほとんどだ。そんな彼らに、プライス以外の価値観を植え付けた貢献はかなり大きい。

その価値観によって、現在のシリコンバレーもかなりの恩恵を受けている。製品の美しさはもとより、ユーザー・インターフェイスの明確さや使いやすさ、インターネットとコンテンツとコンピュータがコネクトする際のスムーズさ、ウェブサイトやブラウザーなどのすっきりした使い勝手、そもそも異なった複数のデバイスがシンクロするといったことまで含めて、これらは、アップルが牽引(けんいん)することによって発展してきた技術革新だ。ただの多機能性や速さだけではない製品のあり方は、純粋にエンジニア志向の世界からは生まれなかっただろう。
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「ジョブズ再療養に凍りつくシリコンバレー @シリコンバレーJournal」2011年01月18日『ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト』
http://www.newsweekjapan.jp/column/takiguchi/2011/01/post-275.php

もの自体の価値に無頓着な米国人

確かに、米国のマーケティング実務を担当したり、実際に現地で暮らしてみるとわかるが、一般の米国人の暮らし向きは驚くほど質素だ。日本にいて、米国の映画等を観ていると広い庭やプール付きの豪邸に目を奪われがちだが、食べ物はやたら量が多くてカロリーたっぷりではあるものの、大味でとてもおいしいとは言えない。日常生活にある製品を一つ一つ見ていくと、無骨でデリカシーをあまり感じない物ばかりだ。ちょっと良さそうなものは皆欧州や日本からの輸入品だったりする。米国人がお金を持っていないということではない。要は興味がないのだ。そんなことより少しでも安い方がいいと考える消費者が多いということだ。

価値観自体を変えた

今でこそ、これほど『iPhone』や『iPad』が売れることがわかってしまうと、これらの製品が導入される前の米国市場の消費者のことを思い出すのが難しいと感じてしまうほどだが、私の知る普通の米国人プロダクトに対する嗜好性(しこうせい)を前提とすると、どう見ても『iPhone』も『iPad』も過剰品質だ。“合理的なマーケティング”“教科書通りの経営”を標ぼうする人であれば、もっと見た目を犠牲にしてでもコストを削れというようなことを言ったに違いない。だが、ジョブズ氏はそうはしなかった。そして、いつしか米国のかなり多くの人の嗜好(しこう)や価値観自体を変えてしまった。

同様の事例として、スターバックスのハワード・シュルツ氏のケースを思い出す人も多かろう。元来、米国のコーヒーは薄くて水みたいで、とてもそれ自体をじっくり味わうことが想定された飲み物ではなかった。シュルツ氏はイタリアのカフェを見て、アメリカにこれを導入することを思いつく。その結果はもはや誰もが知っている。スターバックスは全米に高級なコーヒーだけではなく、いわば新たな“カフェ・カルチャー”を普及させた

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