CDMA版『iPhone 4』がauからでないと考える理由
今回はぱおぱおさんのブログ『Blog of Mobile!!〜最新ケータイ情報〜』からご寄稿いただきました。
CDMA版『iPhone 4』がauからでないと考える理由
長らくうわさが絶えることのなかったCDMA2000方式の通信に対応した『iPhone 4』(型番A1349)が発表された。このCDMA版『iPhone 4』はVerizon Wireless向けに投入される端末だ。Verizon Wirelessは3Gネットワークの通信方式にCDMA2000方式を採用しており、CDMA2000方式は日本でもKDDIが採用している。
そしてCDMA版『iPhone 4』が発表されたことを受けて、KDDIの携帯電話ブランドau向けにもCDMA版『iPhone 4』が投入されることを期待させるような記事を書くメディアも見られる。皆さんは、CDMA版『iPhone 4』がauから出ると考えているだろうか?
とりあえず、俺の答えは“No”だ。
まず、1つ目の理由はUIMスロットを搭載していないことだ。CDMA2000は基本的にR-UIMカードを採用していないキャリアが多いのだ。UIMスロットを搭載していなければ、当然ながらCDMA版『iPhone 4』にauのR-UIMカード(au ICカード)を挿入することはできない。だが、初期のauのWIN端末はUIMスロットを搭載していなかった。『CDMA W32H』と『CDMA W32S』が初めてau向けでUIMスロットを搭載した端末であり、それ以前のau向け端末は全てUIMスロットを搭載しておらず端末に情報を書き込む方式であった。
ということなので、仮にUIMスロットを搭載していなくてもau向けに投入することは不可能ではないのである。まぁ、他の端末と違ってUIMスロットがないと、UIMスロットを搭載している端末より導入が少し面倒になるとは思うが……これだけの理由では説得力に欠けることは分かっている。
最大の理由は2つ目の理由だ。それは周波数だ。
CDMA版『iPhone 4』の仕様はApple Inc.公式ホームページでも公開されている。技術仕様のCDMA modelの対応周波数の欄には“CDMA EV-DO Rev. A (800, 1900 MHz)”と記載されている。モバイルネットワークはCDMA2000 1900/800MHzのみに対応していることが分かるでしょう。実はKDDIが採用している周波数もCDMA2000 1900/800MHzなのであるが、ここからが問題なので詳しく見ていこうか。
まずは、1900MHz帯から。
auが採用している1900MHz帯は移動局送信の周波数が1926.25MHz〜1938.75MHzである。CDMA版『iPhone 4』が対応している1900MHz帯の移動局送信の周波数は1851.25MHz〜1908.8MHzである。同じ1900MHz帯であるが、どちらかが内包されているわけでもなく互換性はない。
因みに、基地局送信はKDDIが2116.25MHz〜2128.75MHzで2100MHz帯を使っており、CDMA版『iPhone 4』が対応するVerizon Wirelessは1930MHz〜1990MHzで1900MHz帯を使っているので全く互換性がないことが分かる。
次に 800MHz帯だ。
KDDIは従来の800MHz(当記事では以下、旧800MHzと呼称)と新800MHzの2つの800MHz帯を使用していることは有名な話だろう。これも有名な話であるが、旧800MHzは海外で使用されている800MHz帯とは上りと下りの周波数が逆転しているため互換性はないのである。
auの新800MHzの移動局送信の周波数は824.76MHz〜829.23MHzである。CDMA版『iPhone 4』が対応している800MHz帯(日本で言う新800MHz帯)の移動局送信の周波数は824.7MHz〜848.81MHzである。824.76MHz〜848.81MHzで使用可能である。そう、auの新800MHz帯でCDMA版『iPhone 4』が使えるのだ。
実際にVerizon Wireless公式ホームページに記載されているFAQにも国際ローミングでの使用可能地域に日本と記載されているのだ。日本での国際ローミングはauの新800MHz帯を使うと理解して間違いない。
ここからが重要だ。
使えると言っても、KDDIが採用しているCDMA2000 1900(上りは2100MHz帯)/新800/旧800MHzのうち新800MHzのみである。しかも、その新800MHzはdocomoのPDC方式の通信サービスが終了する2012年3月までは15MHz幅のうち5MHz幅しか使用できないのである。仮に、auからCDMA版『iPhone 4』が出たらそれなりに売れるだろう。しかもスマートフォンはPCサイトを閲覧したり高画質動画を視聴したりと大容量通信をする機会が多いのである。
大容量通信が見込まれる端末が売れるとなるとトラフィック負荷が増大することは容易に考えられる。しかも新800MHzの5MHz幅の帯域しか使えないとなると輻輳(ふくそう)が起こり易くなることが懸念される。それに加えて、KDDIの1900MHz帯(上りは2100MHz帯)と旧800MHz帯のエリアでは使用不可であるためエリアの不安も生じてくるのである。
KDDIの1900MHz帯(上りは2100MHz帯)と旧800MHz帯では使えないために使用可能なエリアが限定され、しかも唯一使用可能な新800MHz帯では輻輳(ふくそう)が懸念される……そんな端末をだすと思うか?
俺の答えは“No”だ。
以上のことより、今回発表されたCDMA版iPhoneがauに投入されることはないと考えているのだ。
注1:当記事の“CDMA版『iPhone 4』”はモデル番号“A1394”を指す。
注2:移動局送信の周波数は日本の総務省及び米国の連邦通信委員会を参考にした。
執筆: この記事はぱおぱおさんのブログ『Blog of Mobile!!〜最新ケータイ情報〜』からご寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信
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