かわいすぎる代表取締役“もふくちゃん”こと株式会社モエ・ジャパン福嶋麻衣子さんインタビュー(後編)
秋葉原の“いま”を語る上で外せないものが、萌(も)え系ライブ&バー『ディアステージ』と、アニソンDJバー『MOGRA』だ。そして、これら2つの店舗を運営するのが、モエ・ジャパンの代表取締役社長“もふくちゃん”こと福嶋麻衣子さん。新しい道を模索し続ける“もふくちゃん”が、『日本の若者は不幸じゃない』という本を出版した。「不幸じゃない」その言葉には何が隠されているのか、福嶋さんにお話を聞いた。
前編はこちらからご覧ください。
●コミュニケーションでものを売る時代
――『ディアステージ』にはどういう女の子たちが集まってくるのでしょうか。
福嶋:アニメソングシンガーになりたいか、アイドルになりたいか、そのどちらかが多いですね。他にも「何か面白そう」って入ってくる子もたくさんいます。高校行ってなかったりドロップアウトしてたり、教育システムに順応できなかった子たちたちが多いんです。
教育は人間本来の生っぽい部分を去勢してしまうと思うんです。それがない分、教育から落ちこぼれちゃった女の子の考えはめちゃめちゃ面白い。本質的なんです。
大学でレポート書いたりしてるうちには絶対に生まれない「その発想はなかったー」というようなことをウルトラCで軽々とやってくれる。表現にタブーがないんです。いわば天才たちですよ。そうやって出てきたものをどうやって生かすか、そういうところにやりがいを感じています。
『Dear☆Stage(ディアステージ)』
http://moejapan.jp/dearstage/
――『ディアステージ』に行ったときに、女の子がブロマイドのようなもの見せてくれたんです。全部手作りで、完成度の高いものではなかったんですけど、一生懸命作ったということが伝わってきて、女性の私でも応援したくなりました。
福嶋:今までは高価なプロモーションビデオを作って、宣伝打っていたら自動的に売れていた時代でしたけど、今はそんなことをしても誰の心にも響かない。でも目の前で女の子ががんばっていて、「買ってください」って言われたら、「ああ、買おうかな」っていう気持ちになりますよね。それがすごく今の時代に即してる。やっぱりみんなコミュニケーションを求めてるんです。
私は音楽そのものは無料でも良いと考えているんです。そのかわり音楽に関わるコミュニケーションの価値を重要視しています。今後の音楽ビジネスはどんどんコミュニケーションを重視したものになっていくと思っています。
●アキバランド化計画
――もう1軒『MOGRA』というDJバーをやっていらっしゃいますよね。こちらはどのような思いがあったんでしょうか。
福嶋:代官山に『Unit』、渋谷に『club asia』など、各街にひとつやふたつ、代表的なハコがあるのに、秋葉原にはなかったんです。秋葉原にも音楽文化を収容して、きちんと発信するハコが必要だったし、みんなも求めていたので、絶対に作りたいと思って『MOGRA』を作ったんです。
『MOGRA』
http://club-mogra.jp/
――『MOGRA』にはゲーム音楽のイベントに行ったことがあります。
福嶋:ゲームソングのイベントはすごく人気があるし、支持してくれる層がこんなにいると発見できただけでも、本当にあの店を作ってよかったです。
――次はどういったお店をやろうと思っているのですか。
福嶋:これまでは、音楽、音楽、ときたので、次は見る方、お絵かきとか二次元のメディアとか、見えるものの方に焦点を当てたものを作りたいと思っています。
――『ディアステージ』や『MOGRA』の2号店のようなものは考えていないのでしょうか。
福嶋:コピーアンドペーストではなく、本当に面白い秋葉原カルチャーを色濃く流すお店を作っていきたいと思っています。
私が尊敬している人はウォルト・ディズニーなんです(笑)。秋葉原って、ネコ耳つけていようが、男の子が女の子の格好をしていようが、コスプレしていようが、あたり前だから誰も見ない。『ディズニーランド』内でキャラクターの耳をつけていても変じゃないのと一緒で、秋葉原にはそういうことが許容される空気があるんです。
だから私は秋葉原の街全体を『ディズニーランド』みたいに捉えているんです。そのアトラクションとして、スプラッシュマウンテンである『MOGRA』があり、ビッグサンダーマウンテンである『ディアステージ』がある。じゃあ次はカリブの海賊を作ってみようかとか、そういうようにお店を展開していきたいと思っています。
●「日本の若者は不幸じゃない」
――『日本の若者は不幸じゃない』という本を出版されましたが、“もふくちゃん”は今の世の中や若い人たちをどうとらえているのでしょうか。
福嶋:若者は不幸だって意見もあるけど、今アイドルになりたいとか、秋葉原で働きたいという女の子たちからは不幸の欠片も見えなくて、むしろ「元気だなー」という印象を受けます。その子たちの、政治とか社会の仕組みに囚われていない感じが私は好きですね。
――雇用が減っているという話題もありますよね。
福嶋:雇用が減っているというより、大手に就職しにくくなっているだけのように感じます。中小企業は逆に全然手が足りないので人を入れたくて必死なのに、大人たちが作った「いい会社に就職しろ」という無駄な概念があるから、それに囚われた若い人たちが不幸になっている。別に小さい会社だってみんな幸せになれるし、大手を選ばなければ就職先なんていくらでもありますよ。
もっと若者が自由に育っていったら、「あぁ、この会社面白そうだ」と自分で仕事を見つけて就職するようになるだろうし……。就職活動っていろいろすごいゆがんでいて、早くあのシステムを変えないと、全員不幸ですよ、そりゃ、一生不幸!
――本の中に“不況ネイティブ”っていう言葉がでてきました。そういう概念が私にはなかったので印象に残っているんですよ。
福嶋:親たちが描いている理想と若者の現状だけをみると、やっぱり不景気で不幸というようになってしまいがち。でも私たちは生まれた時からそうだから全然なんとも思わないし、たぶん10年後の若者もきっと変わらないと思うんです。たとえ背負うものが大きかったとしても、それが当たり前として生まれてきたら、不幸って気付かないと思う。大人が若い人に「不幸だ」って言われなければ(笑)。
あいつらは年金もらえないから不幸だって言うだけじゃ何も変わらない。そういう子たちが活躍できるような社会にするために、大人が何をできるかということをむしろ考えたいです。
政府や国が悪いと考えがちだけど国は簡単には動かない。でも身の回りのできることで、変えていくこともできるわけだから、国に頼らずに行動すればいいじゃんって思うんです。
――でも、『ニコニコ動画』や『Ustream』が浸透してきて、自分で何か発信する、というハードルは低くなりましたよね。
福嶋:それはすごく良いことだと思っています。何かやったら誰かが見てくれる。世界に影響を与えたりすることが、昔に比べたら身近で容易になっているし、そもそも資本主義なんだから、誰も文句言えないくらいのお金を稼げば、極端な話、国だって動くわけだから。せっかくならそれくらいのダイナミズムで物事を考えられるような若者がどんどん出てきてほしいと思っています。
――ありがとうございました。
* * * * *
“もふくちゃん”との再会。彼女は、華奢(きゃしゃ)でかわいい外見と、夢を描く強い力と、問題をものともせず走り続けるエネルギーを持った、賢くてかっこいい女性だ。「こんどはこういうことをやろうと思っているの」そんな彼女の話を聞くといつもワクワクする。
『日本の若者は不幸じゃない』は、彼女の目線を通した秋葉原やオタク文化、“もふくちゃん”自身のこと、そして世の中や若者たちに向けたメッセージが込められている。ちょっぴり喝を入れながらも、多くの人を元気づける。未来に希望が持てないとか、自分は不幸だと思っている人も、「大きな夢でももって生きよう」そんな気持ちにさせられるはずだ。
「不幸だ」と言ってしまうのではなく、生きている“いま”のなかに希望を見つけ、未来へ、次の世代へと夢をつむぎたい。
日本の若者は不幸じゃない – 福嶋 麻衣子 / いしたに まさき 著 『ソフトバンク新書』:
http://blog.sbcr.jp/shinsho/archives/2011/01/post_121.html
* * * * *
福嶋麻衣子さん(もふくちゃん)プロフィール
3歳からピアノを始め、国立音楽大学附属音楽高校ピアノ科にてクラシックピアノを学んだ後、東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科へ。音大時代に自らサーバーを立て配信していたウェブ上の生配信パフォーマンスプロジェクト『喪服の裾をからげ』は国内外の有名ブロガーにも取り上げられ話題に。小説『カラマーゾフの兄弟』で修道僧の三男が僧服を脱ぎ捨て、古い体制から新しい世界へ飛び込むシーンから名付けたというこのプロジェクト名から“もふくちゃん”と呼ばれる。様々な音楽に触れる中、なぜかアニソンに目覚める。秋葉原で話題の萌(も)え系ライブ&バー『ディアステージ』やアニソンDJバー『MOGRA』の運営、アイドルのプロデュース等を行う株式会社モエ・ジャパンを創立、代表取締役社長に就任。
もふくちゃん/福嶋麻衣子『Twitter』: http://twitter.com/mofuku
アキバで働くスク水社長のアメブロ: http://ameblo.jp/mofukushacho/
株式会社モエ・ジャパン: http://moejapan.jp/
『Dear☆Stage(ディアステージ)』: http://moejapan.jp/dearstage/
『MOGRA』: http://club-mogra.jp/
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