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「大阪都になれば『西成』の地名を消せる」ビラに批判が続出

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大阪市を廃止して現在の24行政区を大阪府の直下で5区の特別区に糾合する協定案、いわゆる『大阪都』構想の是非を問う住民投票は最終盤を迎えました。連休明けにマスメディア各社が行った世論調査では反対(大阪市存続)が賛成を10ポイント前後リードする傾向が共通して出され、橋下徹市長率いる大阪維新の会ではこの結果に危機感を強めて賛成(大阪市廃止)への投票呼びかけを強化しています。そんな中『Twitter』では西成区限定で配布されていると言う賛成側のビラの画像が出回っており、その内容に批判が相次いでいます。

問題のビラは、次のように「西成」という地名の否定から始まっています。

都構想で住所から「西成」をなくせます。
西成のマイナスイメージを消して、住みよい便利な街として人を呼び込む
 →お店・学校・町会が元気になります
若い人が出ていってしまう西成区
 →毎年人口が減っている あと20年設したらこどものいない過疎地(?)に

この後に続けて「町名については、アンケートを取りその結果を見て、市長が決定します」とされていますが、平成の大合併で新しく誕生した市の多くに見られたように住民アンケートは参考程度の扱いしかされない場合もあり、必ず1位になった名称が選ばれるとは限りません。もし町名で「西成」の地名を残して欲しいと言う案が1位になっても、このビラで「西成」と言う地名に対する否定的な姿勢を公にしているのが大阪市廃止に賛成する側の意見であるとすれば「西成」を避けて2位や3位の町名が選ばれる可能性が高いでしょう。

そもそも、このビラでは「西成」という地名に対する「マイナスイメージ」が区民の間で共有されていると言う前提に立っていますが、元をたどれば奈良時代に郡郷制が敷かれた際の摂津国西成郡(「西生郡」とも)から1300年以上続く由緒ある地名を受け継いだ区名です。しかも、西成郡の範囲には現在の西成区だけでなく大阪市の北西一帯、海沿いから淀川の北岸や難波に至る広い範囲までを含んでいました。大正末期に大阪市が周辺の町村を編入して市域を拡大し、東京市を抜いて全国一の大都市となった“大大阪”の時代に西成郡は消滅しましたが、最後に編入された玉出町・今宮町・粉浜村・津守村の4町村が旧郡名を区名に採用したのは玉出町と今宮町が互いの町名を区名に採用するよう主張して譲らなかったための折衷案と言う側面もあるにせよ、奈良時代から続く由緒ある「西成」の地名を残すことに意義があると考えられた結果であるのは言うまでもありません。

1945年に大阪市街を焼き尽くした空襲の被害が軽微だったこともあり、戦後も昭和初期の下町情緒を残す一方で対外的には日雇い労働者の街として知られるあいりん地区(釜ヶ崎)の存在が広く知られています。特に1960年代から70年代にかけては暴動が相次ぎ、その様子が全国にニュースとして報じられたことがこのビラに書かれているような「マイナスイメージ」と結び付いていることには否定しがたい面もあるでしょう。問題のビラでは、次のように続けています。

●これまでの政治家は誰もこの町を変えてくれませんでした。
都構想で特別区になると、予算を決めることのできる区長が生まれるので、本当にこの町の希望がかないます。赤バス再開も可能性があります。

このビラの一番の問題点は、良いところもそうでないとところも含めて街に愛着のある住民の視点が決定的に欠落しており、上から目線の「施し」に終始していることにあります。特に、100円均一で地域の足として活用されながらも2013年に全廃された赤バスの再開について「可能性があります」と言う書き方で期待を持たせて逃げ道を作るやり方はこのビラの製作者が批判する「これまでの政治家」の無責任さとの違いが見出せません。当然ながら『Twitter』でもビラの内容全体に対して「まるでいじめ」「西成の地名よりも維新の会の差別意識を無くすのが先だ」と批判が相次いでいます。

なお、ビラの最後には「5・17 大阪維新の会」と記載がありますが、現在のところ大阪維新の会からはこのビラが本当に会の関係者が配布したものであるのかどうかについてコメントは出されていません。

画像‥『Twitter』で拡散されている大阪都構想賛成を呼び掛けるビラの写真

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