仏像がハスの花の上に座っている理由とは?
「ハス」の花の上に座っている仏像、墓地でよく見かける「マンジュシャゲ」、仏花のイメージの強い「キク」、鬼門を守る「ヒイラギ」や「ナンテン」。このように私たちの身のまわりを見渡してみると、普段何気なく目にしている植物は、意外にも仏教と密接な関係があることに気付くのではないでしょうか。
農学博士・植物学者である稲垣栄洋さんは、著書『なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか』の中で、仏教の教義は、身近な植物の様子・生き方にたとえて説かれることも多かったといいます。
「古くから人々に親しまれた『植物の生き方』は、私たち現代人にも多くのことを教えてくれます。種から芽を出し、茎を伸ばし、花を咲かせ、実を結ぶ。やがて、花は静かに散り、枯れてゆく。仏教では、こうした植物のシンプルな生き方を理想とし、植物が咲かせる美しい花を、悟りの境地に達した聖人にたとえました。また、植物の美しく咲き香る姿と静かに散り枯れてゆく姿は無常観を、落とした種から再び芽吹くようすは輪廻転生を表すとされました」(本書より)
仏教と植物との関係。仏教が理想とした植物の生き方。具体的にその関係を、冒頭の「ハス」、「マンジュシャゲ」を例に、少し見てみましょう。
まずは、お寺の庭の池で目にすることも多い「ハス」。蓮華座と呼ばれるハスの花の台座に座ったり、ハスの花を挿した水差しを持つ仏像もあるように、古くから極楽浄土に咲くにふさわしい神聖な存在とされてきたハス。地の底の汚れた不浄の泥の中から茎を伸ばし、清浄な花を咲かせるハスの姿は、「善と悪、清浄と不浄が混在する人間社会の中に、悟りの道を求める菩薩道」にたとえられたといいます。
続いて、お彼岸の頃に、真っ赤な花を咲かせる「マンジュシャゲ」。墓地の周辺でよく見られることから、死人花・幽霊花・捨て子花といった不吉な別名をも持つマンジュシャゲですが、水にさらして毒を取り除けば、その球根を食べることができることから、飢饉や天災時の備えのために植えられたものなのだそうです。
そして、その植える場所として最適だったのが、頻繁に起こる洪水にあっても大丈夫なように、村の中でも最も安全な高台や盛り土の上に築かれた墓地だったのです。
さらにマンジュシャゲの根は、盛り土した墓地の土砂が崩れるのを防いだり、他の雑草の繁栄や、ネズミやモグラを避ける効果もあったため、埋葬された遺体を守る意味でも墓地にマンジュシャゲが植えられたのだそうです。普段何気なく仏花として利用し、墓地の近くでよく見かけるマンジュシャゲ。その背後には先祖の方たちの知恵があったことが伺えます。
本書では、この他にも、仏教と植物の66個の関係が記されており、身近な植物を仏教という観点から眺めてみると、意外な発見が潜んでいることに気付かせてくれる一冊となっています。
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