地デジハイビジョンを1週間分 全チャンネルまるごと録画! 『地デジ版 SPIDER PRO』発表
1週間休みなく、すべてのテレビチャンネルを録画できるというレコーダー『地デジ版 SPIDER PRO』が12月15日(水)に発表された。
『SPIDER』は、もともとアナログの地上波をすべて録画できるデバイスとして、法人向けは『SPIDER PRO』、個人向けは『SPIDER zero』として発売されていた。
今回発表された『地デジ版 SPIDER PRO』も法人向けとしてリリースされたものであるが、果たしてアナログ放送用からどのような変貌を遂げたのか。発表会の内容を元に、その全貌をお届けしたい。
— テレビが“難しく”なった?
PTP代表取締役社長である有吉氏が最初に口にしたのは、「最近、(電気屋の)テレビ売り場に行きましたか?」という言葉。テレビはその機能があまりに発達しすぎてしまったため、「テレビ売り場なのにテレビが主役ではないくらいに、専門用語が並んでいる」という。
言われてみれば「イーサネット」「HDD」という言葉をはじめ「無線LAN」や「CPRM」、「DLNA」、「COPP」といった、様々な言葉がテレビのスペックには関わってきている。
かつて、「テレビは非常に易しく、パソコンが難しい」という図式であったはずが、テレビの機能は増えて複雑になり、パソコンはiPadに代表されるような容易なインターフェースが出現した。つまり、かつての図式の逆転が起きているのだ。これはテレビがパソコンの領域に踏み込んだことにより、“パソコンのかつての難しさ”までも取り込んでしまったのが原因のひとつだ。
『SPIDER』では、こうした複雑さを排除し、気軽に見れる「テレビの良さ」を取り戻すとともに、便利になった部分を強調することに主軸を置いている。
続いて有吉氏は、忌避すべき要素として、「カタログスペックのわかりづらさ」「リモコンのボタンの無意味な多さ」「伝統的すぎる番組表」などを中心に、『地デジ版 SPIDER PRO』の機能を説明していく。
— 「わかりやすい」という思想
こと、パソコンにおいてはCPUのクロックやハードディスク容量、メモリ総量などいわゆるカタログスペックで語られる場面が多かった。『SPIDER』をそうした慣習に当てはめ、スペック列記することはもちろん可能である。しかし今回の発表では、ユーザーにとって“必要なものだけを取り出した形”で披露された。
画質: 地デジハイビジョン画質
容量: 1~2週間分の地デジ8チャンネル分を録画できる容量
外部記録媒体: SDカードスロット内蔵、Blu-ray Disc、DVD対応
接続: HDMIのみ
解像度が1440×1080(HD)であり、録画コーデックはH.264/AVCを用いて、3TBの常時録画領域に保存されている……といった情報が無いわけではない。しかし、これらは大部分のユーザーにとっては不要な”ノイズ”なのだ。このこだわりは思想となってユーザーインターフェースを形作っている。
— リモコンのボタンは多ければ多いほどいいのか?
機能の多さが、そのままボタンの数になってしまっている「テレビのリモコン」。現在、およそ60~70個ものボタンがついているのが当たり前だ。かつて「シンプルリモコン」として家電メーカーが出したリモコンですら、45個のボタンが並んでいたという。
そこで「毎日、誰もが使う」「レスポンスが最重要」「いまやネットとの連携は当たり前なのだから、パソコンとの併用を超える操作性」という高いハードルを開発陣は自らに課した。4歳から89歳のリサーチを経てたどり着いたのは“ケータイ”方式。十字キーとボタンのみで、全ての操作を可能にしたという。
また、赤外線リモコンではなく無線方式にしたことで、あの“本体へリモコンを向ける動作”をも無くした。このことによりユーザーの意識を「画面のインターフェースと自分だけ」に集中できるようになったのだ。
— “伝統的な番組表”の一歩先へ
メニューをはじめとしたユーザーインターフェースはどう変わったのであろうか。
かつてのアナログ放送版『SPIDER』シリーズでは、アイコンのみのメニュー画面と、新聞のラジオ・テレビ欄(ラテ欄)のような番組表がメインであった。
他社のハードディスクレコーダーなども大部分は、この方式を採っている。
『地デジ版 SPIDER PRO』のメニュー画面では、ライブのテレビ画面を主体に、チャンネル選択とメニュー選択ができるようになっている。
新聞のラテ欄のようであった番組表も動画サムネイルが付き、拡大された番組情報も出るようになった。特筆すべきはこれらの情報が視線を動かす必要がないように配置されていることだ。加えて、動作が異常と言えるほど軽い。
また、数日前の番組を選ぶ際、以前だとかなり長い時間十字ボタンを押していないといけなかった。ところが今回はスクロール加速度もかなり練られていて、相当に軽快な動作だった。
見ること、選ぶことに集中できるため「番組表」の状態で、どんな番組があるのかを選ぶだけで十分楽しい。有吉氏いわく「これでも、ノーチューニングなんです。まだまだ速くなりますよ」と、自信をあらわにした。
— 驚異的な検索性能
テレビのキーワードが、googleの急上昇ワードに常に影響している今だからこそ、『地デジ版 SPIDER PRO』では検索のしやすさにも大きな力を注いでいる。
リモコンだけで文字入力しなければいけないというハンディを解消するため、データベースからの抽出ワードをもとに、ケータイ顔負けの予測変換を行っている。『SPIDER PRO』では、テレビならではのキーワードが優先的にデータベースから並べられる。
そして、驚異的なのが映像内での検索。
例えば「石川遼」と検索したときに、ワイドショーの中で「次は石川選手についてのレポートです」というたったCM前の5秒間の映像が検索結果に並ぶ。「ゼネラル」と検索すれば、あるニュース番組の中で「ゼネラルモーターズCEOがプリウスを批判したニュース」の部分だけをピックアップする。
番組単位ではなく、コーナーごとに抽出するデモンストレーションは圧巻であった。
— 「テレビの“次の50年”を作る」
「テレビ番組、知っているだけ挙げていってみて」と言われたら、あなたはいくつ思い浮かぶだろう。人にもよるが、思い浮かぶのは20~30番組くらいらしい。ところが、現在放送されている番組は1週間で2000番組。CMは4500から5000種類に上る。
つまり、大部分の人は1%程度の番組しか知らない、ということになってしまう。
「99%を知らずに“テレビがつまらない”と言わないでください。まだまだ、僕らの知らないすごく面白い番組があるんです」と有吉氏は述べる。
さらに「我々はエンジニアですが、ハートはサービス業者であると思っています。ですので、皆様からのフィードバックが一番の宝です。」「“できないかもしれないけど” というご要望を、あえて我々にぶつけてください。その時に、もっと進化した『SPIDER』をお見せできると思います」と締めくくった。
『SPIDER』シリーズは、もちろんハードウェア部分でも工夫はされているが、もっとも優れているのは使う人間の事を考えた設計思想かもしれない。
“慣習”や”伝統”に縛られたユーザーインタフェースを採用している大手家電がそこに着目しない限り、『SPIDER』シリーズの独走は止まらないだろう。
なお、今回発表された『地デジ版 SPIDER PRO』は、広告代理店やリサーチ会社、企業の広報部など、多くの情報を必要としている企業向けにリリースされた。そのため、『地デジ版 SPIDER PRO』本体は80万円、『地デジ版 SPIDER PRO用サービス利用料』は月額6万円という価格設定になっている。
『地デジ版 SPIDER PRO』発売は2011年4月21日で、現在予約を受け付けている。
なお、一般消費者向けである『地デジ版 SPIDER zero』は、2011年夏に発表予定、2011年12月下旬発売予定となっている。
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