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尖閣映像のインターネット上に流す行為は現行の公益通報者保護法の範囲外

政治・経済・社会
弁護士阪口徳雄の自由発言

今回は阪口徳雄さんのブログ『弁護士阪口徳雄の自由発言』からご寄稿いただきました。

尖閣映像のインターネット上に流す行為は現行の公益通報者保護法の範囲外
この実行行為者が公務員であれば、その公務員は懲戒解雇はされることは確実。

現行の公益通報者保護法の“通報対象事実”は、事業者が刑事罰になるか、間接的に刑事罰になる事実がある場合に労働者が通報しても保護される仕組み。

この映像を一般国民に公開しないことは事業者(=政府、海上保安庁など)が、直罰規定に違反する違法行為をしたとか、間接罰に違反する行為をした場合ではない。

この“通報対象事実”だけで、公益通報者保護法の枠をはみ出した行為として、現行法の枠内では保護されないことは確実。

通報の手段もインターネットという通報情報が回収不能方法で、公開する行為も手段の相当性を欠き、裁判所では懲戒解雇相当と判断されるだろう(手段の相当性の欠如)。

現行の公益通報者保護法の枠内では保護されないが、では内部告発者を保護する判例上形成されてきた一般法理でも保護されるかとなると、今回の事件はおよそ保護されないだろう。

衝突の事実があったことは政府も認め、映像の存在も秘密にはしていない。ただ、広く公開することは外交上、マイナスになるから公開しないという政策判断によって、公開しないという。他方では、公開することによって中国の横暴をもっと早く阻止できたとか、公開しないから“弱腰外交”になっているという批判は政府の行為の当否の問題としては肯定できるが、違法、不正レベルの問題ではない。

この政府の行為の当否を論じているのではなく、この映像を公開した者を公益通報として保護すべきかどうかである。

私が事務局長であった公益通報者支援センターは現行の公益通報者保護法の“通報対象事実”は極めて狭く、犯罪行為だけでなく、生命、身体、健康などに関する不正行為も含めるべきという提案をしてきた。

今回のように政府の外交上の行為までは、想定の範囲外であった。しかし西山事件のように、外交問題に関して政府が秘密の約束をし、それを国会で追及されても、“そういった密約はない”という事実を政府が隠ぺいしていたようなケースは、政府の不正行為に対する“公益通報”として正当行為として含ませるだろうと想定していた。

今回の政府の判断には法的に違法であるとか、例えば隠ぺいなどという不正行為という範ちゅうの問題でもない。外交上公開が是か非かという、政府の政策の当否を巡る議論のように思える。

私達のような公益通報者保護法を広く改正すべきという立場でも、今回のような、外交上問題となる映像を公開する行為は“公益”概念を飛び越え、過剰なイデオロギー的な行為としてうつる。従来の保護すべき公益通報(内部告発)とは異なる。

もし、外交上秘密にすべき事案(例えばある国のスパイに関する情報を入手した場合とか、外国のテロリストに関する情報など)でも、その通報者が、これらを秘密にする行為は違法と考え、インターネットに公開する行為は正当な通報として保護されるならば広く国民の利益が害される。

私達は官房機密費の情報公開請求の裁判をしている。本当に国の秘密、外交の秘密情報を入手するためなら、それを公開せよとまでは言っていない。官房報償費が政府の野党議員対策費であったり、国会議員の海外旅行のせん別であったり、マスコミの記者の買収費用であったりする、違法、不正の出費だからその公開を求めているのである。

このような中国漁船の挑発的“衝突” “接触”レベルに乗せられ、逮捕することも問題であり、逮捕しながら、粛々と日本法にのっとり処分すると外務大臣が言いながら、途中で釈放する行為にも賛成できない。

まして、この程度の映像を秘密にするという政府の行為にも賛成はできない。船長を逮捕した段階で、もっと早く公開しておればよいという考えには賛成する(しかしそれは結果論)。

今となっては、尖閣列島問題で、中国と日本の民族排外主義者らがこの問題をあおりたて、隣国が対立することにもっと賛同できない。この両国の衝突の結末は、軍備拡張が待っている。喜ぶのは、軍拡論者でしかない。

それにしても、仙谷長官が、自民党すらできなかった、機密漏えい罪を制定しようとする発言は本末転倒も甚だしい。厳しく批判されるべき。

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