韓国「バーバリーあんぱん」をめぐる商標登録の行方

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韓国「バーバリーあんぱん」をめぐる商標登録の行方

韓国特許庁、「バーバリーあんぱん」の商標登録を拒絶

韓国の「バーバリー餅」という農業法人が、韓国特許庁に「バーバリーあんぱん」の商標登録の出願をしたところ登録が拒絶されました。これに対し、「バーバリー餅」が不服審判を請求したところ、その主張が認められたそうです。

まず、韓国の商標登録の流れを説明しましょう。韓国でも、商標登録は他の国と同様に特許庁が扱っています。出願人は韓国特許庁に出願します。出願は特許庁内の商標デザイン審査局で審査され、問題がないと判断されると「公告決定」され、一定期間、第三者が異議申立できます。異議申立がないと「登録決定」され登録料を納付すると登録となります。

審査において問題があると判断されると「意見提出通知書」が出願人に送られてきます。これに対し出願人が意見書などを提出して、問題が解消されると「公告決定」に進みますが、問題が解消されない場合は「拒絶決定」となります。「拒絶決定」に対して出願人は「特許審判院」に不服申立ができます。なお、特許審判院も特許庁内の組織です。

出願人の「バーバリー餅」が「特許審判院」に不服申立

今回のケースでは、審査局の判断は「拒絶決定」でした。その理由は「バーバリーあんぱん」は、ファッションブランド「バーバリー(Burberry Group plc)」と類似しているというものです。そこで、出願人の「バーバリー餅」が「特許審判院」に不服申立しました。その際に、以下の主張をしました。

(1)「バーバリー」という言葉は、ある意味の方言で、韓国内で広く使用されており、「Burberry」と発音は同じだが、観念がまったく違う。
(2)出願した商品は「あんぱん」であり、「Burberry」の製品だと誤解を招くことはない。

「特許審判院」はこの主張を大筋で認め、審査に差し戻しました。

指定商品が「あんぱん」であれば、商標の本体は「バーバリー」に

今回の問題、一見すると韓国の出願人が有名ブランド「Burberry」にタダ乗りしようとしたように見えますが、実はそうでもないようです。強いて日本に当てはめてみれば、「ぐっち」という言葉が「ごちそう」の意味で使われる地域があったとして(そして日本国内でその言葉が広く使われていて)、それを「あんぱん」に付けた「ぐっちあんぱん」を出願したら有名ブランド「Gucci」と類似だからダメ、と言われたという感じでしょうか。

「ぐっちあんぱん」を日本で「あんぱん」を指定商品として出願すれば、おそらく、今回のケース同様、審査段階では拒絶されるでしょう。審査は日本でも韓国でも定型的に行われるからです。

つまり、「バーバリーあんぱん」でも「ぐっちあんぱん」でも指定商品が「あんぱん」ということは、商標の本体は「バーバリー」や「ぐっち」にあるとみなされます。なぜなら「あんぱん」は指定商品の普通名称にすぎず、それ自体には識別性がないからです。そして、「Burberry」「Gucci」が菓子やパンについて商標登録されていたり、その周知性について一定の事実が認定されると審査段階では拒絶されます。

Burberryが異議を申し立てる可能性も

これに対し、審判(これは、審査官を長年やってきた審判官によって審理されます)では、かなり個別的な事情が考慮される場合があります。今回もおそらく「バーバリーあんぱん」にはそれなりの事情があるという考慮の下に、上記(1)と(2)の理由によって、審査段階の拒絶を覆したものと見られます。

今回の「特許審判院」の判断は審査への差し戻しですが、審査官は「特許審判院」の判断事項に拘束されるので、おそらく「公告決定」になるでしょう。もっとも、その後、異議申立が可能ですので、Burberryなどが異議を申し立てる可能性があります。これまでの手続きでは、Burberryは参考資料の提出程度しかできませんが、異議申立では当事者として関わることができます。今後の展開が興味深いところです。

(小澤 信彦/弁理士)

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