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勝てば官軍 負ければガラパゴス

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Life is beautiful

今回は中島聡さんのブログ『Life is beautiful』からご寄稿いただきました。

勝てば官軍 負ければガラパゴス
私が数年前からこのブログで使っている“ガラパゴス化”という言葉、今やテレビや雑誌でまで見る様になり、何だかうれしいような悲しいような、複雑な気持ちである。

私が最初に公の場でこの言葉を使ったのは、2001年のCTIA(米国最大の携帯通信業界のカンファレンス)でのこと。UIEvolutionというベンチャー企業を立ち上げたばかりでもあり、この業界でなんとか注目を集めようと、「NTTドコモの“iモード”のことなら詳しいので、日本の若い人たちのライフスタイルが“iモード”でどう変わったからなら解説できるよ」と会議の主催者に連絡すると、いきなり2000人も収容できる会場を割り当てられたのだ。

私がNTTドコモから来た人間だと勘違いした人もいたようで、会場は超満員。冒頭でドワンゴの『釣りバカ気分』 *1 の面白さを手振り身振りで伝えたところそれが大受けで、日本のギャルの生態系の解説も交えながら、日本の“ケータイ文化”がいかに米国のそれと異なった進化をしているかを一時間ぶっとうしで解説したのを覚えている。
*1:携帯サイト『ドワンゴセブン』にて2003年12月より配信されているバーコードリーダー機能を活用した釣りゲームアプリ。『JANコード』や『QRコード』を読み込むと、その情報に応じて釣れる魚が変化する。

その講演の中で、非関税障壁で海外メーカーを実質的に閉め出し、日本という島国の中だけで数多くの日本のメーカーがしのぎを削るという特殊な環境で、携帯電話が海外と比べて異常なスピードで進化している状況を“ガラパゴス状態”と呼んだのが始まりである。

もちろん、その当時は私自身も“日本メーカーに海外進出のチャンスあり”と見ていたので肯定的な意味で使っていたのだが、それが今や“独自すぎて海外で通用しない”というネガティブな意味になってしまっているのは何とも皮肉である。

日本の携帯電話がなぜ海外で通用しなかったのかについては、このブログでも何度も書いて来たのでここでは繰り返さないが、ぶっちゃけて言えば、

勝てば官軍、負ければガラパゴス

というひと言につきると思う(ちなみに、これは私が発明した言葉ではなく、ブログの読者がコメント欄で書いたことば)。

問題は“独自”であることではなく、自分が作ったものを世界市場で成功させたり、自分が決めた仕様を“デファクト・スタンダード”にするのが下手な点にある。

NTTドコモは、『iモード』を国内で成功させるだけでなく、WCDMA(Wide-band Code Division Multiple Access)の標準化に大きく貢献したり、AT&T Wirelessに投資をして3Gネットワークの構築を促したり、と実は色々と努力はしたのだが、結局のところ“縁の下の力持ち”にとどまり、一番おいしいところはQualcommやAppleに持って行かれてしまった、というのが現状である。

何がいけないかと言えば、結局のところは交渉力と政治力とマーケティング能力で、なんだかそのあたりは幕末の不平等条約以来あまり変わっていないんじゃないかと思う。

そうは行っても、“CD”,“DVD”,“Blu-ray”なんかの標準化に関しては、日本のメーカーも結構活躍していたわけで、そのあたりに何か学べるものがあるはずだ。

まあ、とにかく大切なことは、積極的に開発投資をして、自分がイノベーションを起こす側に回ること。先日も「(“ePub”や“HTML5”の標準化会議の場で)外国の人たちに縦書きの重要性を話しても理解してもらえない」と嘆く日本の技術者に会ったが、嘆く暇があったら自らが『WebKit』や『Firefox』を進化させる側に回り、そこでリーダーシップを取る立場に立った上で、縦書きを自ら実装してしまい、既成事実としてデファクト化する、ぐらいの強引なやり方を取るべきだと思う。

“ガラパゴス化”を恐れて、他社と違うこと本流でないこと、を避けていたらイノベーターにはなれない。「そんな特殊なことをしていたらガラパゴス化しますよ」というコンサルタントには気をつけた方が良い。

一説によると、今の人間の先祖であるホモ・サピエンスは、ちょうどガラパゴスのような隔離された環境で短期間に異常進化をとげたのだという。強烈な生存競争に勝ち抜いたホモ・サピエンスは、島からでると、先住民をあっという間に滅ぼし、世界の覇者になったという。“ガラパゴス世界を制す”の良い例である。

結局のところ、独自であろうとなかろうと、世界で通用する製品を作らなければだめだということ。勝たなければだめだということ。“勝てば官軍、負ければガラパゴス”である。

執筆: この記事は中島聡さんのブログ『Life is beautiful』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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