映画のような話が現実に自分に起きた(small G)

映画のような話が現実に自分に起きた(small G)

今回はsmall Gさんのブログ『small G』からご寄稿いただきました。

映画のような話が現実に自分に起きた(small G)

今回のアメリカへの一時帰国の旅、ちょっと興味深いものになりました。

まずセントレアからデルタエアラインの飛行機に乗って日本を発って7時間ほど経った頃だったでしょうか、いつものように機内の映画を観ながら時間を潰していました。
すると突然画面が静止して機内アナウンスが、、、日本語と英語で入ってきました。


「お客様の中でお医者様はいらっしゃいませんでしょうか。
機内で具合の悪い方がおられます。
いらっしゃいましたら、機内のアテンダントまでお知らせ下さい。」

思わず、ウッとなってしまいました。来たよ、映画のワン・シーン!
たしかに私は医師ですが、ベテラン、名医等という方々とは程遠いし、疾患によっては私の知識が全く及ばないものも「当然」あるわけですから、何か「具合の悪い方が~!」と言われても当然、万全の対応など出来ないということで・・・。
また、これは大切なことですが、医師にとってはきちんと対応できる薬と疾患を大まかに推測可能なデータが無い中で、症状と問診だけで病気を診断して重大な投薬や判断をするのは非常に危険を伴う可能性をもった行為であるということ何ですよね。おまけに日本の薬とアメリカの薬は力価や使い方が違いますからそれを知った上での投与でない限りはやはりそれ自体もリスクであることを認識しておかないといけませんし。

そういった中、オノレの首を持ち上げてソローっと周りを見回したところ誰もアナウンスに反応している様子もありません。内心「(´ヘ`;)ウーム…」という気持ちになっていたのですが、一体何が起きとんねん、、、頼むから循環器系の判断が難しい疾患ではありませんように・・・という気持ちを抑えつつ、「長い間我慢していた小便を膀胱から開放するついで」に前の方の席へ歩いて行くと、そこで何やら数人のスチュワーデスが集まって、子供さんとそれを囲む二人の女性との間で相談し合っていました。

もしかして、、、と思って「勇気を振り絞って」アフリカン・アメリカンのアテンダントに「私MDですけど、何かお困りでしょうか?」と尋ねたところ、目の前に立っている四歳くらいの男の子を診て欲しいというリクエストが、、、。
私小児科ではないんですが、と一応の断りを入れて「内科医として」診察させてもらうことを一言言って日本人のお母さんらしき方に「どうされましたか」と尋ねたところ、一時間ほど前から自分の子供が体を掻いているので、どうしたのかと思ってシャツを捲って体を見てみたら皮疹がと。
私も実際に子供さんの身体を診察させていただいたところ、体幹前面と両脚の背部を中心にして直径が1~3センチ位の膨疹が限局的にみられました。

更に詳しく問診をすると、機内食を食べて結構時間が経っているということ、以前には出たことがなかったということ、またアラジックな疾患を今まで発症したことはなかったということでした。更に、この旅ではお薬も何も飲んでいないとのこと。また、調べてみると赤色描記は出ませんでした。

機内の準備薬剤としてアレルギー用にはベネドリルがあったのですが、アメリカの成人用ドラッグの小児投与薬用量に自信がなかったことと、子供さん自身に問診をしても気持ち悪くないということ、吐いたりもしておらず息苦しさ(呼吸の様子もその時点で全くなく膨疹が出たのを母親が確認後約一時間半経過していた)等もないことから、急速に進行する何らかのショック状態の一表現形としての膨疹ではなかろうと判断できたので「多分、蕁麻疹として判断して問題ないでしょうし一応このままで慎重に様子を見ておいて、ランディングしてから小児科にかかっても問題はないでしょうが、何かあったらまた呼んで下さいね」というコメントを残してその場は切り上げました。

善意の第三者の責任に関しては云々という文言が私の頭を過ったのですが、、、取り敢えずは他に名乗る人が居なければやらなければいけないのは少なくとも医師免許を持った人間が出るべきことは明白でしたので、筍(たけのこ)医者なりの判断を示したという次第。

その後も時々通りすぎるアテンダントさんに状態を伺ったところ、「安定していて、皮疹の拡がりも無い」ということでしたので、取り敢えず安心しましたが、デトロイトまでは内心ドキドキの残り三時間半のフライトでした。

しかし、シリアスなものでなくて本当に良かったです、、、。丁度アラスカのジュノーを通過して少しくらいの所でしたが、場合によってはカナダ領内の何処かの病院に緊急着陸をする判断をするのが私自身になることだってあった訳ですからビビリますよね・・・正直。

まあ、何事も無くて本当に良かった良かった。
私自身にとっては一生忘れられないフライトになりました。こんなことは頻回に起きて欲しくないものです。

あ、そういえば、この診察の後でアテンダントさんが私の所にやって来て、感謝の言葉を述べるとともに、ボーディングパスの後ろに名前と住所を書いてくれと言われたので書きましたところ、「後で感謝の印としてデルタからトラベルバウチャー($150か250とか言ってたような?)を送らせて頂きます。」とのことでした。お心遣いだけでバウチャー自体は要りませんけど、記念に使わずにとっておこうかな。

しかしこういったインシデントは軽いものからシリアスなものまで含めれば毎日毎日世界の空で起きていることなのでしょうから、一定のプロトコルを各社が持っている事は間違いないわけです。
それにしても、各社が標準的に持っている機内のドラッグの一覧表のコピーが欲しいな~と、事後に改めて思いました。

執筆: この記事はsmall Gさんのブログ『small G』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年10月13日時点のものです。

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