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地方のまちを変える「TSUTAYA図書館」改装1年後の効果は!?

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「ここが図書館!?」。館内に一歩足を踏み入れると、誰もがそう感じるに違いない。平置きされた雑誌や書籍、洒落た照明、コーヒーを片手に読書を楽しむ家族連れ。

2013年4月に改装オープンした武雄市図書館だ。TSUTAYAを運営する株式会社カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者として図書館運営に当たる。図書館内には、書籍販売や音楽・映像レンタルショップの蔦屋書店とスターバックスコーヒーが併設されている。

改装オープン以来、地方の公立図書館の新しい試みとして、新聞・テレビをはじめメディアで広く紹介された。この「TSUTAYA図書館」について知らないという人は少ないのではないか。その知名度もあってか「田舎暮らしの本」を発刊する宝島社が毎年行う2014年版「住みたい田舎ランキング」の第2位に武雄市が選ばれた。

【画像1】武雄市図書館外観。1999年建築の既存図書館を利用して改装した(写真撮影:村島 正彦)入館者は3.6倍。県外を含む遠方からの来館も

この図書館は、人口5万人の田園風景の広がる佐賀県武雄市にある。併設の駐車場には、夏休みに入ったこともあるだろうが、九州隣県や本州を含む県外ナンバーのクルマが4割ほど見られ、ほぼ満車の状態。1年間の来館者数は改装前の3.6倍に。改装オープン以来1年1カ月で入館者100万人を記録した。

武雄市教育部文化学習課の錦織賢二さんは「公共施設である図書館が知られるようになったことで、もとからある武雄温泉という観光資源とともに、武雄市への来街者が増えた」と、この一年を振り返る。

【画像2】武雄温泉のシンボル、武雄温泉楼門(1915年建築)。東京駅を手掛けた辰野金吾(佐賀県出身)による設計。国指定重要文化財で、昨年12月に修復された。東京駅ドーム天井の8つの干支レリーフと、温泉楼門の4つの干支とで、12の干支がそろうことで話題に(写真撮影:村島 正彦)

図書館がもたらした効果は3つあると錦織さんは語る。
1つ目は経済効果だ。
年間の来館者数は約92万人。そのうち約35万人が市外からの来館だと推計する。また、図書館への行政視察は1年間で約700件、7900人が視察に訪れた。市役所を通さない非公式な視察・見学も数多くある。「観光課では、宿泊や飲食などの消費が約20億円/年だと推計している」という。

2つ目は、市民への効果だ。従来は年間331日・10時~18時の開館が、民間による指定管理制度によって、365日・9時~21時開館へと利便性が大幅に拡大した。入館者・貸し出し数の増加にその効果が見てとれる。蔦屋書店の豊富な品ぞろえで「博多に行かなければ手に入らなかった雑誌・書籍に身近に触れられるようになった」。

そして「テレビ・新聞で取りあげられたこともあって、市民の自信や誇りにも繋がっているようだ。スターバックスの効果もあり、図書館がオシャレをして行く場、市外から来たお客さんを連れていくところになっている」という。この夏実施したアンケートでは、利用者の87%が改装後の図書館について「満足」と回答を寄せた。武雄市図書館をきっかけに、武雄市へ定住も

3つ目は、今後の展開や波及効果にあるという。
昨年の9月から図書館脇の広場で商工流通課とタイアップして、毎月第一日曜日に地元産品など中心にした「マルシェ」を開催してにぎわっている。

蔦屋書店が、代官山蔦屋で作家のトークイベントなどを開催しているが、こうしたイベントを武雄市図書館でも開催して、人気作家や文化人の講演に直接武雄で触れられるようになった。市では、現在の図書館とは別に、キッズライブラリーの構想もあるという。

こうした図書館や付随する試みが、「新たな利用者・来街者を生み出し、武雄市が住みたい街になることが目標です。武雄市図書館を訪れ武雄市の魅力を知ってもらい、交流人口から定住人口につなげていきたい」(錦織さん)と語る。「これからの、武雄市のまちづくり全般に取り組んでいくなかで、武雄市図書館はその魅力づくりのエンジンになる。キラリと光る街を目指したい」と言う。

その効果か、武雄市の地価は下げ止まり、図書館近くには新しいマンション建設の動きもある。武雄市図書館で本を借りよう!

武雄市図書館は、武雄市民のみならず、全国どこのひとでも図書館カードを作成し、本を借りることができる。

武雄市図書館カード(TSUTAYAの「Tカード」を兼ねる)は、図書館内外のサイン計画を行ったデザイナーの原研也さんのデザインによるものだ。身分証明書があれば、誰でもつくることができる。(但し既にTカードを持っている場合は、重複してTカードでつくることは不可。またTカード機能のない従来の「図書利用カード」を作成することもできる)

【画像3】武雄市図書館オリジナルのTカード機能付きの図書カード。サイン計画を手掛けた原研也さんのデザイン(写真撮影:村島 正彦)

館内は、エントランスから入ってすぐは、蔦屋書店の本の販売ゾーンだ。約600タイトルの雑誌がそろう。その他、書籍や文具・雑貨などの品ぞろえも豊富だ。雑誌・書籍は、館内であれば、カフェでも閲覧コーナーでもどこでも持ち出して読むことができる。

【画像4】エントランスホールの販売ゾーン。オススメの本が平積みされ、武雄市図書館オリジナルグッズも並ぶ(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像5】販売ゾーンには雑誌が600タイトル。「GA」や「a+u」など、大きめの都市の書店でしかなかった建築専門誌も並ぶ(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像6】スターバックスコーヒーのコーナー。販売用の雑誌・書籍、図書館の蔵書いずれも館内であれば、どこでも自由に読むことが可能だ(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

本の販売ゾーンと、貸し出しの図書ゾーンは、販売:白いサイン、図書:黒いサインで区別されている。図書ゾーンの本棚は、少し高め。改装を機に、閉架の書棚にあった本も全て開架棚に置き、蔵書数は20万冊。「本の森」の中にいる気分になれる。

【画像7】右側の「料理」という黒いサインは図書館の本、左側の「文庫」という白いサインは販売用の本だ(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像8】閉架を開架棚にしたことで、これまでの倍の20万冊の図書が閲覧可能に。背の高い書架で「本の森」にたたずむ気分に(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

館内の図書や書籍を検索したいときは、館内に設置されているiPadで確認することができる。
セルフカウンターでは、図書の貸し出しや、蔦屋書店の本の購入(レジ機能)もできる。画面の指示に従えば、誰でも簡単に操作できる。このセルフカウンターで、Tカードを使って図書を借りると、1日1回3ポイントが貯まる。貸し出し業務を、セルフサービスによってコスト負担してもらった分を還元するという考え方だ。図書館利用を促す狙いもある。

図書館では一度に10冊まで本を借りることができる。また、借りた本は、ヤマト便と提携しており、専用のバッグで全国どこからでも一律500円で返却することが可能だ。

【画像9】エントランス脇にあるセルフカウンターで、本の貸し出しを自分で行うとポイントが貯まる(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

武雄市図書館での実績を踏まえて、全国の複数の自治体でCCCと図書館運営の連携を図る動きもあるという。

公共施設の民間管理委託については、さまざまな議論はあるものの、武雄市図書館は、市民の満足度の向上や市外・県外からの高い注目など、期待された以上の成果を挙げたといってよいだろう。

図書館に限らず、民間のアイデアやノウハウを取り入れた公共施設の魅力づくり、ひいては地域の魅力づくりがますます広がっていくことを期待したい。
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/09/19/69585/

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