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LINE乗っ取り犯の「整理日本語言.txt」に見る「母語の干渉」(違いのわかる日本語――日本語教師の日本語メモ)

LINE乗っ取り犯の「整理日本語言.txt」に見る「母語の干渉」

今回はブログ『違いのわかる日本語――日本語教師の日本語メモ』からご寄稿いただきました。

LINE乗っ取り犯の「整理日本語言.txt」に見る「母語の干渉」

LINEのアカウントを乗っ取り、その知人に金券カードを買わせるという詐欺行為が頻発している。その乗っ取り行為を行っている犯人は中国語圏出身者であるというが、その「台本」が誤って送られてきたという記事があった。

「まさかの誤爆!LINE乗っ取り犯が“台本”を送信、その全文を公開」 2014年08月21日 『週アスPLUS』
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/248/248753/

その文字起こしをした方もいる。

「週刊アスキーが報じたLINE乗っ取り台本「整理日本語言(1).txt」の文字起こしと分類をしてみた。」 2014年08月21日 『piyolog』
http://d.hatena.ne.jp/Kango/20140821/1408608223

日本語教師としては、この不自然な日本語訳に、日々接している中国人留学生の誤用と共通するものを見る。(※もちろん、私の接している中国人留学生たちを犯人扱いする気は毛頭ないどころか、このような悪事とは無関係であると信ずる。たまたまLINE乗っ取り犯と彼らの母語が一致しただけのことであって、「これだから中国人は……」というような悪しき一般化を行ってはならないことは言うまでもない。)

以下、あくまでも言語的、日本語教育的な観点での分析である。

「手伝って」

・ 忙しいですか?手伝ってもらってもいいですか?
・ ちょっと手伝ってもらえますか?
・ 買い物手伝ってくれませんか?
・ 近くのコンビニエンスストアでiTunesカードを買うのを手伝ってくれないの ?
・ 携帯が壊れちゃったので、ちょっと手伝ってくれませんか?今いけないからです
・ 間違わないです、君に手伝ってもらいたいですけど、お願いします、すごく急いですから
・ 私は転売したら、少し儲かります。だから手伝ってほしいです。

中国語母語話者に限らず、「手伝う」や「助ける」の誤用は多いが、特に中国語の「帮助」という動詞をそのまま日本語で言おうとすると、この種の誤りになる。「帮助」は手助けだけでなく、「協力」や「支援」といったニュアンスも含まれる。それをすべて「手伝う」に置き換えてしまうと、誤りとなる。

日本語の「手伝う」には、「一緒に作業をする」というニュアンスがある。「近くのコンビニエンスストアでiTunesカードを買うのを手伝って」と言われたら、「カードの買い方(もしくはカードの所在)がよくわからないので、一緒に来て、一緒に買って」と依頼されたように受け取るのが日本語母語話者の感覚である。「宿題を手伝う」といったら、結果的にほとんどこちらがやることになるかもしれないが、主体は相手である。

つまり、「手伝う」というのは、相手が作業の主体であるが、そこに補助的に参加して一部を分担するという状況である。であるから、日本語母語話者は「今いけないから」→「手伝ってくれませんか」という発話をすることはない。自分が行けないのに「手伝ってもらう」ということはありえず、「代わりに買いに行ってもらう」ということになる。

そもそも、買い物を手伝ってもらうこと自体、ほとんどない。あるとしたら、ファッション音痴だから服をえらぶのを手伝ってもらうとか、買った物を運ぶのも難しいお年寄りの買い物に付き添っていくときとか、くらいだろう。買い物(狭義には、レジに購入したいものを持っていって、財布からお金なりクレジットカードを取り出して支払う作業)に他人の援助を要する人は限られている。だから、「私の代わりにコンビニで金券を買ってきて」という状況で「手伝って」と言ってしまうこと自体、非母語話者であることを表明しているといえる。

ただし、最後の一例のみは例外だ。「私は転売したら、少し儲かります。だから手伝ってほしいです。」、これは文章的にはOKだ。つまり、「わたしの金儲けを手伝ってほしい」=「コンビニで金券を買うという作業の部分だけ分担してほしい」ということで、それならわかる。文としてはOKである。しかし、親しい間柄でこういう発話をすることはない。いくら親しい知人や同僚であっても、「転売したら私が少し儲かるから、君はそれを手伝え」というのはいくらなんでも図々しい。手伝ったメリットが何もないではないか。それを言ってしまえば、LINE乗っ取り犯の収益モデルである「金券を買わせる」プロセス自体にストーリー上の無理があるということになるのだが。

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