「鉄腕アトム」も夢じゃない。AIの飛躍的進歩
非産業用分野でのロボット技術革新と実用化が進む
最近、ロボットの話題が世間を賑わせています。特にここ数年、これまで主流であった工場内で使用される産業用ロボットに加えて、一般消費者にもなじみのある、家庭用ロボット、介護用ロボット、ホビー用ロボット等の非産業用分野での技術革新と実用化がかなり進んできたことが最も大きな理由ではないでしょうか。
家庭用ロボットで最も実用化が進んだのは、自律的に部屋を動き回ってくれる「ルンバ」に代表されるお掃除ロボットです。また、ホビー用ロボットでは、最近、ソフトバンクが発表した感情認識ロボット「PEPPER」が記憶に新しいところです。この種のロボットとしては低価格である20万円弱で市販されるということで世間に驚きを与えました。
また、広義のロボットとしては、自動車の自動運転技術も実用化の視野に入ってきました。世界の自動車会社が、一般道路での自動運転技術を開発しています。これまでは、限定された実験場での成功例がほとんどでしたが、一般道を自動で走ることなんて驚きです。
ロボットを実現するための中心技術「AI」とは?
さて、このようなロボットを実現するための中心技術がAIです。AI技術(artificial intelligenceの略、人工知能)とは、一言でいうと、コンピュータを使って、人間の思考や振る舞いと同様の機能を実現する技術です。これが、半導体の技術革新による極小化、インターネットの技術革新によるクラウド化等によって大きく進歩しました。
人間は、視覚や聴覚や皮膚感覚(力覚)等によって外部の環境を認識し、それぞれの情報を融合して筋肉を動かすわけですが、コンピュータを使って見えたもの、聞えたものに対して自律的に適切な判断を加え、行動を起こすことができれば、それはまさに人間の機能をコンピュータで実現できることになります。話しかけられた内容に対して適切に答えたり、行動できる技術、これがAI技術なのです。
科学者の究極の目標「AI」。第3次ブームの今、大きな潮流に?
コンピュータは人間の計算能力をはるかに超えた万能の機械なので、「そんなことは簡単なのではないか」と思われるかもしれません。しかし、これがとても難しいのです。工場の産業用ロボットは、予めプログラムされた動作を繰り返す機能が主で、最近まで、自律的に判断する機能をほとんど持ちませんでした。チェス競技で、人間がコンピュータに初めて負けたのが1996年、将棋の世界では、2010年代になってやっとコンピュータが人間よりも優勢になりました。お掃除ロボット「ルンバ」は部屋の状況を判断して自律的に動き回ることができます。これは、米国のAI研究成果を取り入れて開発したもので、発売は2002年でした。ロボットが産業用として本格的に実用化されたのが1970年代ですから、AI技術の面でやっと人間に伍した機能が実現できるようになったのは、ごく最近のことなのです。
このAI技術は、人工的に人間と同様な知能を実現しようとする科学者の究極の目標ですので、関心が深く、コンピュータの出現以来、過去60年代、80年代~90年代の2度ブームが到来しました。しかし、いずれも十分な成果を得られずに期待外れに終わりました。現在は第3次ブームが到来しているといわれていますが、今回は以前の状況とは異なり、半導体技術、インターネット技術、高品質モータ技術等の要素が融合しており、かなり大きな潮流になるのではないでしょうか。
ロボットといえば、日本人にとっての原点は、SF漫画の「鉄腕アトム」です。現在活躍中の多くのロボット研究者や技術者が、鉄腕アトムの実現を夢見てその職業の道に入ったといわれています。しかし、日本は産業用ロボットでは世界を席巻しましたが、「ルンバ」に見られるようにAI技術では欧米に後れを取ってしまいました。「鉄腕アトム」を夢見る日本技術者の飽くことのない熱意で、ぜひAI技術でも世界をリードし、ロボット王国を築きあげてもらいたいと思います。
最新の気になる時事問題を独自の視点で徹底解説するWEBメディア「JIJICO」。各分野の専門家が、時事問題について解説したり、暮らしに役立つお役立ち情報を発信していきます。
ウェブサイト: https://mbp-japan.com/jijico/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。