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ギリシャ問題が起きたのはギリシャ人が怠け者や嘘つきだったからではない

Market Hack

世界は影響しあっていて、いまや一国の状況だけでものごとをとらえることはできないのですね。今回は広瀬隆雄氏が編集長を務めるブログ『Market Hack』からご寄稿いただきました。

ギリシャ問題が起きたのはギリシャ人が怠け者や嘘つきだったからではない
ギリシャ問題が一般の投資家にも注目されるに至って、いろいろな解説者がにわか仕込みの知識でギリシャ批判をしています。

「ギリシャ人は働かない」とか「ギリシャ人は統計で嘘(うそ)をついている」などの批判がそれです。

確かにこれらの議論に根拠が全くないわけではありませんが、これだけでは今回のギリシャ危機がなぜ起こったかを上手く説明できません。

国民性として勤勉とか怠惰ということは1年や2年程度で急に変わるものではありません。

だから怠け者だというだけでは「なぜ今なのか?」の説明にはならないのです。

実際、ギリシャのGDP成長率は2000年以降、つい最近まで一貫してドイツのそれより高かったのです。また通貨ユーロに参加する上での条件を規定した安定成長協約(SGP)をなしくずしにした張本人は実はドイツ(2005年の出来事)なのであって、いわゆる、PIIGS(=ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの略)ではありません。

PIIGS問題がなぜ起きたのを理解するには景気のサイクルと、欧州と米国での政策金利の上げ下げのタイミングのタイムラグという問題について考えてみる必要があります。

そこで通貨ユーロが登場する前の欧州にさかのぼって説明します。

昔からドイツはインフレが低く、放置しておけば他の欧州通貨に対してマルクが強含(つよぶく)む傾向がありました。

85年にプラザ合意 *1 が成立し、米ドルが世界の通貨に対して切り下げられ始めた時、ドイツの周辺の欧州各国にしわ寄せが来ました。

これはなぜかといえば優等生であるドイツは常にきつめの金利政策を取る習性があり、ドイツが引き締め気味の金利政策を取ると欧州周辺国の通貨もそれに引きずられる格好で米ドルに対して強含んでしまうからです。

すると競争力に劣るドイツ以外の欧州各国はすぐに不景気になります。

欧州周辺国が不景気になるとそれらの国の通貨はドイツ・マルクに対して弱含(よわぶく)むのです。

つまり欧州の経済システムに対するプレッシャーはアメリカがひと足先に不景気に突入し、金利を引き下げた時に最大化するということです。

このようなメカニズムは1991年の不況(湾岸戦争前後)でも見られた現象ですし、通貨統合のあった後(=但しユーロの導入はまだ先ですが)の、2001年の9・11の同時多発テロの際にも繰り返されました。

つまりアメリカとヨーロッパの政策金利の差が開いたときに欧州各国の経済の“実力の差”が露呈し、南欧などの体力の無い国がプレッシャーにさらされるのです。

昔、ドイツの金利を決めていたブンデスバンクや、現在、欧州の金利を決めている欧州中央銀行(ECB)はこの“迷惑”を顧みず、何度も同じ過ちを犯しています。

僕は昔から「ECBはキャデラックのように運動性能が悪い」と指摘してきましたが、この米国と欧州の金利政策ならびに量的緩和政策のアシンメトリー(非対称)こそがギリシャ問題の元凶なのです。

Market Hackとは?
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*1:「プラザ合意」『ウィキペディア(Wikipedia)』より
1985年9月22日、G5(先進 5ヶ国蔵相・中央銀行総裁会議)により発表された、為替レート安定化に関する合意。
http://ja.wikipedia.org/wiki/プラザ合意

*2:「BRICs(ブリックス)」『ウィキペディア(Wikipedia)』より
経済発展が著しいブラジル (Brazil)、ロシア (Russia)、インド (India)、中国 (China) の頭文字を合わせた4ヶ国の総称。
http://ja.wikipedia.org/wiki/BRICs

執筆: この記事は広瀬隆雄氏が編集長を務めるブログ『Market Hack』からご寄稿いただきました。

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