取調べ中逃走の杉本容疑者、次々に余罪発覚。余罪の「強盗致傷」罪って何?
3月に女性を暴行した罪で捕まり、取調べ中に川崎市の横浜地検川崎支部から逃走した杉本裕太容疑者(20)。本紙既報の通り、逃走後再逮捕されている。その後の状態が明らかになった。なんと余罪が次々に発覚。警察を怒らせてしまって本気モードにさせてしまった代償は余りにも大きかったようで、次から次へと仲間も逮捕されているのだ。
逃走は「犯人隠避教唆罪」で裁かれ、手助けした友人も逮捕→それぞれ処分
まず逃走した時の「犯人隠避教唆(いんぴきょうさ)罪」が適用され、3月24日に追起訴された。毎日新聞によれば、この時逃走を手助けした友人2名も逮捕され、車に乗せて一緒に逃げた20歳の男性が略式起訴されて罰金20万円の刑に処せられたという。携帯電話を貸した別の20歳の男性は、おとがめなしの「起訴猶予(きそゆうよ)処分」となった。
もっと凶悪な強盗致傷罪も犯したことが判明→逮捕。弁護士事務所「非常に重い罪です」
そして、今回の逮捕は、強盗致傷(ごうとうちしょう)罪という聞きなれないもの。
産経新聞の報道によれば、杉本容疑者は「昨年11月18日午後11時半ごろ、遊び仲間の男2人と共謀し、横浜市青葉区の歩道で、帰宅途中の近くに住む男性会社員(46)に殴る蹴るの暴行を加え、肋骨(ろっこつ)骨折や両眼球打撲など全治約1カ月の重傷を負わせて、携帯電話やカバン(現金約1万円など在中)を奪ったとしている。」というもので、簡単にいえば追い剥ぎと暴行である。
これを、強盗致傷罪としたのである。
これはなんだろうか?簡単にいえば、強盗致傷罪とは、強盗罪の凶悪・残虐なものであるとされる。
強盗罪そのものが重罪で、刑事弁護のエキスパートである東京弁護士法律事務所(長谷川裕雅代表弁護士)によると、
(強盗罪は)非常に重い犯罪です。1審で有期懲役を言い渡された被告人の中で執行猶予が付された率は13.7%(平成19年)で、犯罪全体の59.1%を大きく下回っています。(http://taiho-bengo.com/information/zaimei/sub9/index.html)
という。刑法の条文には「強盗致傷罪」について以下のようにある。
「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。(刑法240条)」
強盗が人殺しも一緒にやったら強盗致死だが、実は強盗致傷はその一歩手前、最高刑は無期懲役という重罪である。無期懲役というのは少なくとも30年以上刑務所から出られそうもない、という事実上の終身刑。TBSの報道(http://www.tbs.co.jp/houtama/last/120219.html)によれば獄死も少なく無いという。もちろん、強盗致傷=無期懲役ではなく、刑期は裁判官の考えや、容疑者の反省の度合い(被害者に償いをしたか、反省の態度があるか…)によっても違ってくる。容疑者が被害者に賠償して、毎日反省して懺悔するようなら、罪は軽くなるし、逆にふて腐れて「死刑でもいいです」などとほざけば、重罪になるのだ。
(画像は刑務所で教誨師[きょうかいし]の坊さんに懺悔する受刑者。財団法人日本教誨師連盟HPより。http://www6.ocn.ne.jp/~zenkyo/actual1017.html。長年、教誨師を務められた浄土真宗の高僧・渡辺普相老師によると、「被害者の霊が化けて夜な夜な出てくる」と懺悔で泣き叫ぶ受刑者もいたという)
裁判所の判例「どんな目的の強盗致傷でも絶対に許さない。絶対にだ。」
裁判官はこの犯罪を極めて重く見ており、刑法の判例では以下の様な発言がある。
「強盗致傷罪は(中略)、致死傷のような残虐な行為を伴うことが少なくないので、これを重い情状となし、いかなる目的でなされたとしても重く処罰する」(昭和6年の大審院[現・最高裁]判決…有斐閣『判例六法』平成26年度版より)
余りにも軽率な行為から、大きく人生を踏み外してしまった容疑者。反省して、罪をつぐなっていくのが最善か。
(トップ画像は杉本容疑者を取り調べている横浜地方検察庁公式webページ)
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。