仮面ライダーのクリーチャー達を産み出した「世界の韮沢」のライブドローイングイベントが開催される
以前の記事「マジックだけで何でも描く“阿佐ヶ谷の韮ドン”は“世界の韮沢”」(ガジェット通信)でもお伝えした韮沢 靖さんの個展 “NIRAISM” が東京・阿佐ヶ谷で絶賛開催中(~2010/2/28まで)だ。韮沢さんといえば近代『仮面ライダー』シリーズの怪人デザインでも有名なデザイナー、イラストレーターでもあり、世界的な造形作家でもある。
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今回は“Vol.01 「Succubus」”と銘打たれたこの個展の取材、そして韮沢靖さん本人へのインタビューを試みた。
– “NIRAISM” Vol.01 「Succubus」について
今回の展示はイラストだけでも50点余り(もちろん、そのほとんどが肉筆による原画)。他には立体造形物なども多数展示。妖艶(ようえん)、という言葉そのものの女性(もしくは女性的なクリーチャー)が会場の壁面を取り囲んでいる。ちなみに「Succubus(サキュバス)」とは「淫魔」「夢魔」などと訳される女性の悪魔。
壁面を占める多数の展示は画集『カメレオン』(2000年・グラフィック社)の原画から。肉筆ならでは妖しげな線、原画だからこそ見れる色合いなどを楽しむことが出来る。
中には、知る人ぞ知るゲーム専門誌『GAMEST EX』(新声社・1997年廃刊)での連載イラスト(こちらも原画)といったレアモノも展示されている。
他にもオモチャの祭典「スーパーフェスティバル」でのパンフレット表紙の原画、フィギュアのパッケージ用だけに書き下ろされたコミック形式のイラスト版画、『VooDoo Hawaiians』(元プリンセスプリンセスのギタリスト・中山 加奈子さんのバンド)のアルバムジャケット原画など、「女性キャラクターの展示だけ」にも関わらず、種類は盛りだくさん。
また、ポスター2枚とTシャツ用のイラストは今回のために書き下ろされた新作だ。もちろん、「ビッグボード」に描かれたライブペインティングは毎日の書き下ろし作品。ちなみにセクシー極まりない「緑のタコ」はこの取材の前日(2/22)に仕上がったばかりの大作だったりする。
ギャラリー『白線』の斉藤さんは「(韮沢さんは)クリーチャーでも非常に有名だが、氏の描く女の子も相当に魅力的です。ぜひ、注目してほしいですね」と語る。
ガジェット通信(以下 ガジェ):今回は「Succubus」開催、お疲れ様です。
韮沢靖さん(以下 韮沢):ありがとうございます。
ガジェ:今回はクリーチャーだけではなくこういった魅力的な女性も描かれた、ということですが、筆のノリなどはいかがでしたか?
韮沢:そうですねえー・・・実際、大きいボードで描くのは気持ちが良いもんで。マーカーもね、滑(すべ)らかで楽しいです!
ガジェ:前回ライブドローイングを初めて見せていただきました。ニコニコ動画などで見た方も含め、「すでにそのボードの中に『在るモノ』をマーカーを使ってほじくり出しているかのようだ」という感想が散見したように思います。
韮沢:(屈託無く笑う韮沢さん)
ガジェ:彫刻をする人が、石の中に対象を見出すかのような感じでした。実際に真っ白なホワイトボードの中に、(韮沢さんの目には)描く対象は見えてらっしゃるんですか?
韮沢:そうですね。構図と“アタリ”は、ある程度、は見えてます。でも、実際に線引いて見ないと、「線の重さ」っていうんですかね…どの辺のディテールを描いて、どう描きぬけたほうがいいか、ってのは線入れてみないとわからないこともありますね。
ガジェ:描いてみて初めて、また、わかる、という。
韮沢:ええ、ええ、そうです。
ガジェ:描いている途中で「あれ、思っていたのと違うからこういう描き方にしたほうがいいかな」というような“軌道修正”をされることもあるんですか?
韮沢:ありますね、あります!でかいとやっぱり多少の…こう、思ってたバランスと(違って)崩れているところがあるので。ただ、その間違ったのを逆手にとって、…悪く言えばごまかしているわけですけど(笑い)、結構そのごまかしが面白くなったりしているときがありますよ。
ガジェ:それも含めてライブだったりするわけですね。
韮沢:ああ、そうですね!
ガジェ:ご自宅やアトリエで描かれるときと、ライブで描かれるときでは、描き方の方法は全く違ったりするものですか?
韮沢:違いますね。ライブはまさに下書き無しで描くんですが、他のデザインの仕事はやっぱ、下書きしてロットリング(※編注・製図用万年筆。一定の太さの線が引ける)でアウトライン(外郭線)を描いて、それをコピーしたものにコピック(※編注・画材として有名なアルコールマーカー)で着色という形になるんで…まぁ、違うといえば違いますよね。
ガジェ:なるほど、手法的には若干違うときもある、と。普段からああいう(ライブドローイング)風にグイグイと描かれているのかとばかり。
韮沢:いやいやいや。チマチマとやっておりますですね。ハイ。
ガジェ:(笑い)
韮沢:ただね、ビッグボードで下書きすると、鉛筆(の線)を消す作業が一番イヤになると思うんですよね。
ガジェ:あ。(構図とかよりもむしろ)そこなんですか。
韮沢:それよりも、ライブで直接描いたほうが良いかと。
ガジェ:ニコニコ動画などでこれだけのクオリティのライブドローイングをアップされた方っていうのは、韮沢さんが初めてじゃないかと思っているんですが、ネットの反応とかは結構ありましたか?
韮沢:反応ありましたよ!面白かったですねー、いろいろ。このギャラリー(※編注・阿佐ヶ谷『白線』)の前に、劇場がありまして、一服しているお客さんが居るのが見えるんです。その建物からこちらを見ているお嬢さんが「昨日ニコ動で見たオッサンだー!」と。
ガジェ:(一同爆笑)
韮沢:外で指差しているから。こっちも(手招きしながら)「入りな入りな!」なんて。面白かったです。
ガジェ:(笑い) 前回の取材の後、阿佐ヶ谷のお店『MAD HOG KITCHEN』さんにも取材で寄らせていただいたんです。ちょくちょく、こう、呑(の)みに行ったお店でライブドローイングされることとかも多いんですか?
韮沢:そうですねー。まあ、行きつけのところですね。酔った勢いで描いているわけですけど。
ガジェ:(笑い)
韮沢:描いても怒られない店ということで、行きつけのところで(描くわけですね)。
ガジェ:僕(記者)なんかは非常にお酒が弱いので、呑んでしまったら何か描いても線がブレてしまってそれどころではないんですが、(韮沢さんが)お酒を召し上がられた時に絵を描いてもそういったことはないんですか?
韮沢:量にもよります。呑みすぎるとやっぱり…「過ぎたるは及ばざるが如し」なんですけど、全く飲まないよりは、ある程度(お酒が)入ったほうが勢いは出ますね。墨ベタ(※編注・陰影の部分を塗りつぶすこと。ここでは、マーカーで陰を入れていく作業のこと)をガーっといってみたりとか!
ガジェ:おぉ(※ちなみに、この間、ずーっと韮沢さん、ナチュラルにビールを召し上がられてます)。
韮沢:まあ、躊躇(ちゅうちょ)しなくなるってのはありますね!
ガジェ:呑めば呑むほどに?
韮沢:そうですね。程よいところでやめなきゃ、なんですけど。
ガジェ:(笑いつつ同意)
韮沢:呑んでると、「ほどよさ」がわからなくなりますよね。
ガジェ:同感です(笑い)。好きなお酒などは?
韮沢:普段は『里の曙(あけぼの)』という…黒糖の焼酎なんですが、それがほぼ毎日ですね。あと、ビールはサッポロですね!
ガジェ:(新潟県長岡市)栃尾のご出身なので、勝手に日本酒がお好きかと思ってました。
韮沢:日本酒はですね…本当に、次の日とかもダメだし記憶なくすし、やめましたねえー。
ガジェ:(大いに同意)
ガジェ:これからもこうした(個展など)催しが続くと期待しております。
韮沢:はい!
ガジェ:ファンの方に向けて、何かメッセージなどございましたら。
韮沢:(しばし考えて)まだまだ寒いですから、お体に気をつけて…暮らしましょう!(笑い)
ガジェ:ありがとうございます!
韮沢:いえいえー!
終始、こちらの問いかけに「はい」と小気味よい返事を入れつつ答えてくださった韮沢さん。来場されたお客さんにも同じように温かい声をかけているのがとても印象的だった。
「韮沢 靖 個展 “NIRAISM” Vol.01 Succubus」
東京・阿佐ヶ谷 「白線」
http://hakusen.jp/
2010年2月14日(日)~2010年2月28日(日)絶賛開催中。
13:00〜20:00の展示で、期間中は毎日17:00〜20:00に韮沢 靖氏本人によるライブドローイング予定。
入場は500円。
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