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専業主婦に居場所なし!Mai68世代

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bancyo
フランスでは共働きがあたりまえなのですね。専業主婦はとってはきついそんな状況には歴史的な理由があるそうです。今回は大山田権之助さんのブログ『フランス番長』からご寄稿いただきました。

専業主婦に居場所なし!Mai68世代
まいったね。専業主婦への風当たりの強さには、まいったね。

今回は久々に、「番長に聞け!」のコーナー。悩める子猫ちゃんのお悩みを、番長が快刀乱麻、ズバッと解決しちまうぜ。さっそく行ってみるかい。
———
フランスの夫と結婚し、渡仏して3年半になる日本人です。
日本ではデザイナーの仕事をしていましたが、フランスではなかなか仕事が見つかりません。
そうこうするうちに子宝に恵まれ、無事に出産しました。
現在は専業主婦として、まもなく2歳の誕生日を迎える息子を育てています。

でも、主婦でいることに疲れ果ててしまいました。

夫はとても優しく、理解があって、無理に仕事を探さなくてもいいよ、と言ってくれます。
ところが、まわりのフランス人は私が仕事をしていないと知るや、「なんで働かないの? まいにち家の中に閉じこもってるの? アタマがおかしくならない? 仕事は探してるの?」と、まるで私に非があるか、気でもふれてるんじゃないかと言わんばかりなんです。
さらには、「あなたの国では女性の労働は抑圧されてるの? 自由を奪われてるの?」なんて聞いてきます。

それでも、他人なら笑ってすませることもできますが。
夫の母も、同じようなことを会うたびに聞いてくるんです。最近では、夫の実家に行くのが苦痛で仕方ありません。
夫は「気にしなくていいよ」と言ってくれますが、そんな風に割り切れないんです。

どうしたらいいんでしょうか?
私の周りにはおかしなフランス人が多いのでしょうか?
———

では番長が質問にお答えしよう。

まず第一に、アンタの周りのフランス人はごくごく標準的だ。日仏カップル、ことにフランス人男性と日本人女性による夫婦では、しょっちゅう聞くタイプのお悩みと言っても過言じゃねえぜ。

第二に、残念ながら、これはどうしようもねえ。フランスってのはそういう国なんだ。専業主婦という選択肢は存在しない。昔はあったが、なくなっちまった。

よう、そんな顔せず、最後まで聞いてくれよ。

フランスに住んでるアンタなら釈迦(しゃか)に説法だろうが、実際、フランスで仕事をしていない女性ってのはまあ少ねえ。既婚、未婚にかかわらずな。30代でも80%の女性が仕事を続けてるっていうデータもあるくらいだぜ。

いやいや、フランス人でも仕事を見つけるのは難しいんだ、まして日本人にとっては至難の業だってのは、よくわかるよ。もしアンタがフランス語をしゃべれねえとなれば、なおのことだろう。しかも、ちっちゃな子どもを育ててるときた。職探しなんて、とてもじゃねえよな。

番長、そこは深く同情する。

だが、フランスではそんなこと、知ったこっちゃねえんだ。遅くとも生後6ヵ月、たいていは3ヵ月もすれば、母親は子どもをベビーシッターに預けて働きに出かける。その後も立ち止まることはねえ。フランスってのは、保育園をはじめとする託児制度はすこぶる充実してるし、企業の方も働く母親に理解がある。そもそもサービス残業で引っ張るなんてことはないからな。ほとんどの女性は働き続けるわけだ。

番長、女性が十二分に能力を発揮できる社会というのは、掛け値なしに素晴らしいと思うぜ。なんだ日本は、保育所入るのに倍率10倍だなんてのは、とんだクソッタレの後進国だな。仕事をしたいのに芽を摘まれちまってる女性はたくさんいることだろう。こいつはまったくとんでもねえ、今すぐなんとかすべきだ。

そういう意味では、フランスは大したもんよ。

ただ、働くことが強制されているのだとすれば、これはまた話が別だぜ。そして番長が思うに、フランスではすべての成人に対して直接間接に仕事を強制する空気が、確実に存在している。その例が今回のお悩み主が遭遇している、無邪気かつある意味でぶしつけな質問だな。

自給自足の農家なんかを除けば、家庭の中には、少なくとも一人は稼ぎ手が必要だ。ゼニっ子を稼いでモノやサービスを買うためにな。この稼ぎ手は、必ずしも男性である必要はない。女性が支えている家庭なんてのはゴマンとあって、かくいう番長も母子家庭の出身だからな。

しかし、夫婦がともに働かなきゃいけないといういわれはない。働くのは自由だが、働かないのも自由。少なくとも片親は働かなくてもいいはずだ。そのへんでどういう形態を取るかは、それぞれの家庭に任されるべきだからな。

ところが、家事や子育てに専念するから働かないというのは、フランスの価値観に背くことだとみなされちまうんだな。

なぜか。こっから、ちと長い話になるぜ。

なあアンタ、フランス人が何より誇りにしている歴史的な出来事、もちろん知ってるよな。そう、1789年のフランス革命だ。だがな、もっと最近のできごとで、ほとんど同じくらいに重視されてる革命があるんだよ。

5月革命、メ・ソワサントウィット(Mai 68)だ。

もともとは学生運動だったんだが、ベトナム反戦の動きとリンク、労働者の間にも広がってフランス全土で約1000万人がストに突入、国の機能は完全にマヒした。この動きは世界各地に波及、日本でも全共闘の活動となって現れたわけだ。

という割とよく知られている側面のほかに、フランスでは重要な役割があった、とされているんだな。それが、女性解放運動としての側面だ。むしろ現在のフランス社会ではこっちの意義の方が強調されてるように、番長には見えるぜ。

この5月革命は単なるスト、反戦運動ではなく、旧世代打倒という意識が強く働いていた。当時のフランスはまだ、古い時代の名残を色濃く残していた。今でも階級社会だが、当時は異なる階級が交わる機会なんてのはより乏しかった。カトリック教会も、まだまだ強い力で各地を支配していた。社会はより硬直していて、権威主義的だったんだな。

で、家族には家父長制が根強く残っていた。大黒柱はお父ちゃん。女性は貞淑な良妻かつ賢母であるべきだ、家庭を守るものだ、とされていたわけよ。子猫ちゃんたちには到底信じられないかもしれねえが、不倫や婚前交渉なんてのも、おおっぴらには認められていなかった。そりゃそうだろ、協議離婚すら認められてねえ時代だ。この時代はまだ、世界中のどこの国でもたいていそうだがな。かのフランスも例外ではなかったというわけよ。

だから、若者の間には社会に対するイライラのほかに、ムラムラも募っていた。それが証拠に、5月革命の発端となったパリ第10大学(通称ナンテール大学)の学生運動は、「女子寮に入れろ!」っていう男子学生の叫びから始まったんだぜ。

女子寮に入れろ!
女の子たちと、ニャンニャンゴロゴロさせろ!

どうだいこの、若い男たちのほとばしるような性欲の炎(ほむら)。番長には、とてもひとごととは思えない暑苦しさだぜ。

ま、当時の学生の名誉のために言っておくと、この男子学生の女子寮への入室禁止規則廃止要求、大学改革案への反対とともに出されたんだがな。レジの店員さんが若い女の子で、『ニューズウイーク』と『ニュートン』に『デラべっぴん』を挟んで差し出す男子高校生、みたいに見えなくもないぜ。うがちすぎかい。

ともかく。歴史的に見ると、5月革命は、運動自体としては敗北する。ド・ゴールが総選挙に打って出たところ、運動に共鳴していた左派政党は全然議席を取れなかったからだ。右派、保守派の圧勝よ。騒いでいたのは一部の人間だけだったってことなんだろう。大部分の国民は、続く混乱に嫌気がさしてたのかもしれねえな。

一方で、女性解放の動きは着々と進み、あらゆる場面で女性差別の撤廃が広がった。その例が以前に書いた、協議離婚。そして、人工中絶の合法化。ともに1975年のことだ。ピル使用もこの時期に解禁された。フランスの元国教であるカトリックは避妊を禁じている。乱暴な言い方になるかもしれんが、避妊と中絶、堕胎は煎(せん)じ詰めれば同じことだからな。フランスでは、今もコンドームよりピルの使用が避妊法としてはより一般的なんだぜ。

仕事、雇用の機会も、その延長線上に位置する。以前のフランス社会では、女性が社会に出る、会社で働くなんてのはまだまだ夢物語だった。なんせ、女性に対する求人自体が乏しかったわけだからな。
そういう空気を一変させたのが5月革命だった、というわけだ。

なんて偉そうに書いたが、女性の差別をなくしたり、女性の社会進出を促したりといった点で、5月革命がどれほどの役割を果たしたのかというのは、実際のところよくわからねえのよ。

たとえばピルだが、こいつは5月革命の1年前には既に解禁されていた。一方で、女性の労働促進で画期的だった育児休暇の導入となると、こいつは1977年まで待たなきゃならねえ。9年後のことだ。つまりこの時期、フランス社会は段階的に女性の権利向上へ進んでいっていたんだな。ドカーンと革命が起きて、ガラガラポンと社会が変わった、ってわけじゃねえのよ。ゆえにフランスでは「5月事件」なんて呼び方もする。

しかし、実際の役割がどうだったかなんてことは、どうでもいいのよ。5月革命ってのはシンボルなんだ。大多数のフランス人は、5月革命で世の中が進歩的に変わったんだ、と思っている。重要なのはそこだ。

今回のご相談の中に、姑(しゅうとめ)が口うるせえってのがあったな。5月革命が起きたのは、さっきも書いたが1968年。いまから40年ほど前だ。当時の学生たちはちょうど60歳くらいということになる。日本で言う団塊の世代だな。

もうおわかりだろう。アンタが結婚してまもないくらいの年齢だとすれば、姑(しゅうとめ)ってのは、5月革命を自分たちの手で体験・実現してきた世代なのよ。アタシたちがフランスの、ひいては世界じゅうの女性たちを解放したのよ、くらいに思ってんのさ。

だから、とりわけ「自由の侵害」「女性の抑圧」的な問題となると口やかましいんだな。ついでに言えば、アンタの旦那(だんな)をはじめとする同世代、いまの30代あたりは、そういう親たちに赤ん坊のころからとっぷりと物事を教え込まれてきた人たちなのよ。

そういうフランス人から見ると、専業主婦をやってるなんてのは、何をオマエ、あたしたちが血の汗を流すような努力をしてようやく勝ち取った権利をドブに流すようなマネをしてるんだ、ってことになる。ライシテ(政教分離)同様、一種のフランス教と言っていいだろうな。

ちなみにピルの使用もそうだ。日本では避妊といえばコンドームが主流で、ピルはほとんど使われてないよな。おそらく副作用のイメージが強いからだろう。ところが、フランス人に日本ではピルはあまり使われないって話をすると、習慣の違いということ以上に「日本は女性が避妊の権利を行使する自由をもたない、女性の抑圧されたカワイソウな国」ってな視線で見られちまうぜ。

とまあ、そんなわけだから、専業主婦蔑視(べっし)から逃れるのは、フランスに住む限りほとんど不可能だろう。

そうは言っても仕事なんか見つからない、どうすりゃいいんだって?なーになに、泣くんじゃねえ。番長に任せとけ。いい解決策があるから。

あのな、よくよく聞いてみると、フランス人の言う職業なんてのは、あやふやなものなのよ。生計を立てられるほどの収入なんかなくたって全然構わねえんだ。特に多いのはアーティスト系だな。画家にしろ詩人にしろ、ひとっつも作品を売ったことがなくったって、そう言い張っちまったモン勝ちなのよ。

なに、アタシ芸術的素養は皆無なんですって?

話は最後まで聞けよ。
今日からアンタはジャーナリストを名乗るんだ。

で、フランスの情報を日本語にして発信してるって言っとくんだよ。フランス人には日本語で書いてあることなんて読めやしねえ。確認のしようがねえからな。それじゃあまりに良心がとがめるってんなら、日本語でブログでもつけたらどうだい。アフィリエイトなんかを付けときゃバッチリだろうぜ。

実際、それで中村(江里子)先輩や雨宮(塔子)先輩なんかと、やってることはほとんど変わらねえんじゃねえか?あの人たちは、テコでも自分が専業主婦だとは言わないだろう。

いや、まいったね。きまじめなのは日本人の美徳だが、フランスと折り合いを付けるには、上っ面だけでもフランス人のテキトーさに合わせるのが一番だろうと、番長思うぜ。じゃないと長生きできねえよ。

執筆: この記事は大山田権之助さんのブログ『フランス番長』より寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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