テレビが楽器に早変わり『Braun Tube Jazz Band』が超カッコイイ!

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Braun Tube Jazz Band

2010年2月3日~14日まで開催されていたメディア芸術祭。ここでは多くの現代アート作品が展示されていた。タマネギの生長の様子を順番に彫刻にした『growth modeling device』、微粒子の嵐を体験できる『Nemo Observatorium』、パチンコ玉が飛び跳ねて音楽を奏でる『ベアリング・グロッケンII』など、誰でも楽しめる作品が多かった。

growth modeling device

そのなかでも非常に注目を集めていたのが『Braun Tube Jazz Band』だ。これは旧式のブラウン管テレビを打楽器にしようという作品で、演奏者がテレビの画面に触れると、音が出るというもの。これはブラウン管から出ている電磁波が体を伝わり、ギターアンプに音声の信号となって入るという仕組みだ。演奏が始まるとテレビには様々な音が光の模様として映し出され、奏者がそれに触れることで音楽を作り出していく。普段見慣れたテレビが別のカタチに変わってしまう様子に、誰もが驚き、見入っていた。



この作品の作者の和田永(わだ えい)さんは多摩美術大学情報デザイン学科に在籍する学生アーティストだ。前作『Open Reel Ensemble』は学生CGコンテストで優秀賞に輝き、SUMMER SONIC 09にも出演している。この作品がどうして生まれたのか、インタビューをしてみた。

和田さん

――この作品のきっかけは?
ある日、テレビにケーブルを間違えて刺してしまったんですね。音楽の端子を、テレビの映像の端子につないでしまったところ画面には光のシマ模様が表示されて、「あっ、音って映像になるんだ」ということに気づいたのが最初のきっかけです。それが面白くていろいろな音を映像にして遊んでいると、ある日近くに置いていたラジオが音を出していることに気がついたんです。そこで、ふとギターアンプに刺したケーブルを手で持ってテレビに触ったら、スピーカーから音が出てきたんですよ。光の模様が音に戻った訳です。つまり、模様が映っているテレビからは、模様と同じ電波が出ていたんです。これにものすごく驚いて、作品のイメージが一気にできあがりました。

――この作品のテーマは?
生まれたころからテレビに囲まれた生活をしてますよね。毎日受動的にテレビ放送を見続けて来た。僕はメディアとのつきあいはそれだけじゃないとおもっていて、もっと能動的にテレビをみてみると。もう、テレビを叩け!!と。(笑)これで楽器になる訳です。
来年大量にブラウン管テレビは捨てられる運命にあると言われていますが、テレビを叩いて演奏している人たちが頭に浮かんだんです。これまでの役割が終わって、新しい使い方と音楽が生まれるかもしれない・・と妄想しました。

――この作品はブラウン管でないと動かないですよね。PCの液晶ディスプレイや地上派デジタルへの批判なども込められているんでしょうか?
僕がこの作品を作れたのは、とても安く沢山のブラウン管を手に入れることができたこともあります。昔何万で売っていたものが、社会が変わると数百円か無用の長物。批判とまではいかないけれど、僕らは時代の流れに乗って生活をしている訳ですが、その乗り物からちょっと降りて休憩してみると、面白い発見もあったりするんです。

――和田さんの別プロジェクト前作『Open Reel Ensemble』同様、音楽だけでなく作品自体が非常に作り込まれているように感じます。ご苦労などはありましたか?
この作品は中古のテレビとビデオデッキを何台も使うのですが、置き場所がなくて…。実家に置いたら、家族に「やめて!!」と怒られました(笑) 賞をとってからは少し許されてます。
お金もないので、メディア芸術祭でいただいた賞金を費やして展示用は制作しました。
ビジュアルには凝っているんです!今回は鉄骨を使ったのですが、全体の制作には数ヶ月かかりました。

――今後はどういった活動を?
DIY(自宅工作)のおもしろさを広げていきたいですね。それはモノづくりだけではなく、音楽も、アートも。それらを一体化させながら、今まで観たことのないライブ・コンサートを生み出していければと思います。そして音源としても、実物の展示作品としても、磨きをかけて様々な形で発表できればと思います。是非良かったら「生」を堪能しに足をお運びください!
 

演奏の様子

作品は今後バージョン・アップを計り次の活動を展開するとのこと。ただ身体に電波を通すということだけあってそんなに回数のできないレアなパフォーマンスになるそうだ。
また和田さんは2010年2月27日に渋谷DUO Music Exchangeでライブを行う。そちらは、『Open Reel Ensemble』としての出演だ。今後の活動も要チェックだ。

スティーヴ エトウ × Open Reel Ensemble “工場稼働 2010”

ベアリング・グロッケンII

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■第13回文化庁メディア芸術祭
主 催:文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁・国立新美術館・CG-ARTS協会)
会 期:2010年2月3日(水)~2月14日(日)
会 場:国立新美術館(港区・六本木) 東京都港区六本木7-22-2
入場料:無料
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※この原稿は伊予柑([NKH]ニコ生企画放送局)さんからの寄稿です。

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