官民交流の罠

官民交流の罠

今回は河野太郎さんのブログ『ごまめの歯ぎしり』からご寄稿いただきました。
※この記事は2013年10月31日に書かれたものです。

官民交流の罠

今回の公務員制度改革法案の中に、官民交流の拡大というものが盛り込まれた件。

官民交流も、あるいは官僚の現役出向も、もともとは若い官僚を民間企業に出していろいろと勉強させ、その知見を役所に戻ってから生かしてもらおうという制度だ。

その制度を、民主党政権になって、霞が関が悪用し始めた。

若い官僚を勉強のために民間企業に送り出すのではなく、退職勧奨されるはずの官僚を、肩たたきする代わりに民間企業に送り出すということを始めた。天下りのあっせんができなくなったために、現職のうちに雨下りと同じことをしてしまおうということだ。

こうした官僚が役所に戻っても、その経験を活かして何年仕事ができるだろうか。それどころか、役所に戻ったふりして退職し、この間までいた民間企業に戻ったりする。

これがおいしいということで、今回の公務員制度改革の中に官民交流法の一部改正なるものを紛れ込ませ、この新「天下り」を拡大しようというというのだ。

内閣官房の担当者は、「そんなことはよもや考えてもいません」というが、では入省何年まで、あるいは役職で課長補佐の手前まで等と上限をつけろというと、ひたすら下を向いて黙り込む。

そのうちに「交流人事については、国会に詳細にご報告しております」などと言い出す。

では、どの程度、国会に「詳細に」報告が行われているだろうか。

人事院が出している官民人事交流に関する年次報告を見ると、官民交流で平成24年度に民間企業に派遣された官僚は81人。

年次報告には「交流派遣の要請の時に占めていた官職」を記すことになっている。しかし、81人のうち実に9人は「大臣官房付」というなんだかわからない肩書になっている。さらにもう一人「大臣官房秘書課付」。

それぞれの年齢は記載されていないのでわからない。

経産省大臣官房付の派遣先は、
ブラザー工業株式会社 経営企画部プロジェクトマネジャー
(関連する業界団体、財界団体、金融機関に関する渉外業務等)

国際原子力開発株式会社 企画調査部長

株式会社リコー リコー経済社会研究所産業・企業分析主席研究員
(シニアマネジャー 管理職相当)

日本電産株式会社 人事部シニアマネジャー

豊田通商株式会社 金属本部金属資源部上級経営職

株式会社明電舎 経営企画グループ支配人

株式会社アサツーディ・ケィ 総合企画本部管理職(局長待遇)

農水省大臣官房付
株式会社伊藤園 経営企画部担当部長

農水省大臣官房秘書課付
株式会社松屋フーズ 商品本部長付室長

文科省大臣官房付
三菱重工株式会社 技術統括本部イノベーション推進部主席部員
(管理 特別専門職)

派遣先の役職を見る限り、とても若手のつくポジションとは思えない。

さらに、XX省XX局付という肩書が7人、課付・部付が3人。

平成23年度に官民交流で民間企業に派遣した官僚の平均年齢は42.1歳。民間から省庁に派遣されてきた者の平均年齢が33.4歳であることと比べると明らかに高い。

しかも、民間に派遣された官僚の多くは、係長や係員であるので、平均年齢が40歳を超えているということは相当高い年齢の者が何人も含まれているだろうと推測できる。

つまり、若手官僚のトレーニングのためという本来の趣旨を逸脱していることが行われているのだ。

さらに今回の改正で、派遣先に学校法人も含まれることになる。

学校法人というのが今のはやりだ。学校法人の事務局長や事務の教授ポストに官僚がつくケースが増えている。そのおいしい学校法人を官民交流の対象にしようとしているのだ。

さらにNPO法人や公益法人も対象にできるようにしている。

野党自民党は、民主党が官僚の現役出向を拡大したことを厳しく追及してきた。それが与党自民党になったら、手の平を返すのだろうか。

望月行革推進本部長は、30日の会合で、この部分については、委員会で修正すべく、検討していくことを明言した。

執筆: この記事は河野太郎さんのブログ『ごまめの歯ぎしり』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年11月04日時点のものです。

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 官民交流の罠

寄稿

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

記事ランキング