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裁判は死んでいる・・・JR西日本の無罪判決(中部大学教授 武田邦彦)

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今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

裁判は死んでいる・・・JR西日本の無罪判決(中部大学教授 武田邦彦)

2005年4月25日、JR福知山線で脱線事故があり、乗客106人が死亡した。当時の社長と社長経験者が業務上過失致死罪などで起訴されたが、2013年9月27日に神戸地裁は全員、無罪の判決をした。

裁判官は「誰も責任を取らないことに違和感があっても、個人の刑事責任は厳格に考えなければならない」とした。4人の被告のうち、3名は検察が不起訴としたものを強制起訴した裁判だった。

私も裁判の鑑定を長くやってきたが、日本の裁判には大きな特徴がある。
1)日本の刑事事件の有罪率は99%を超え、諸外国の60-80%と大きくことなる。
2)日本では「有罪」は検察が決めるのであり、裁判官は形式的に判決を下すだけである。
3)庶民には厳しく、お金持ちは無罪になる。

裁判というのは検察が「有罪」と考えて起訴したものが裁判に掛けられる。そして、検察から起訴されたら最後、無罪判決を得た人は0.5%程度、つまり200人に1人しかいない。

裁判官は刑事事件の判断をせず、検察が起訴したら有罪とするという原理原則を持っている。それは裁判官の出世と深く関係し、「検察に逆らう(国家に逆らう)と出世できない」という不文律があるからだ。

今回はさすがに裁判官も106名の殺人事件(業務上過失致死というのは、故意ではないだけで殺人事件と言える)に犯人がいないという違和感があることを認めている。

JRは「安全に乗客を運ぶ」ことを義務としていて、「カーブでスピードを出しすぎると脱線して人が死ぬ」ことは誰でも予見できる。ところが、判決ではカーブでスピードを出しすぎないようにする措置は「義務ではない」としている。

つまり、「安全に乗客を運ぶ」ことはJRの任務ではなく、人が死んでも構わない(人が死なないような規則がなければ、規則に従ったので、本来の任務に反しても犯罪ではない)という奇妙な結論になっている。

カーブでスピードを出しすぎると人が死ぬということは当然だから、それを防ぐ措置をしていなければ、「故意の殺人」と言っても良い。人が死ぬことが判っていて電車を走らせる。何のために走らせているかというと、お金をもらうためだということになるので、「お金を得るための殺人」と考えられる。

今回の結果は、現在の裁判制度(裁判官が独立した専門職ではない)であれば当然のことで、JRの社長ともある人を有罪にすることは制度的にできないのだ。国家、役所、大会社を守って個人を切り捨てるという「国あって国民あり」という全体主義が日本では正しいとされ、「国民あって国あり」という民主主義は裁判官は支持していない。

私の判決
「鉄道はスピードを出しすぎると脱線、転覆などによって乗客が死亡するのは理論的、経験的に紛れもない事実である。従って、「スピードを出しすぎない措置」をしないで列車を運行することは死亡することが予見されている状態での運行になる。

運転手は人間なので居眠り、錯覚などが発生するのも理論的、経験的に紛れもない事実である。従って、「スピードを出しすぎない措置」というのは、運転手を教育し、運転手が間違いを犯してもスピードを出しすぎない措置をしないと列車の運転をしないのが、鉄道会社の社長のもっとも基本的な任務である。

紛れもないことをせずに放置し、お金のために漫然と列車の運行を続けたので、故意による殺人と認定される。」

(改正刑法12条(国会で未審議))

罪となるべき事実の発生を防止する責任を負う者が、その発生を防止することができたにもかかわらず、ことさらにこれを防止しないことによつてその事実を発生させたときは、作為によって罪となるべき事実を生ぜしめた者と同じである。

(江戸の判決例)

江戸町奉行の記録によれば、火災に巻き込まれた親を救出しなかった子供が「子であれば、自分が焼け死んでも親を救うべきであるのにそれをしなかったのは人倫に反する大罪である」として打ち首とされた。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年10月02日時点のものです。

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