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【治水・災害行政の不足】増税してもおそらくダメ?!(中部大学教授 武田邦彦)

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今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
※この記事は2013年09月15日に書かれたものです。

【治水・災害行政の不足】増税してもおそらくダメ?!(中部大学教授 武田邦彦)

(今日、18号が来て、警報だらけですが、中心気圧は980hPaときわめて弱く、暴風圏が小さいという台風です。それで被害がでる、警戒が大変というのは、どうしてでしょうか?)

治水や災害を未然に防止する行政が極端に遅れている。「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズや少し珍しい気象現象が起こると「地球温暖化だからCO2削減」などと言っているうちに、水害やその他の自然災害の行政がなおざりになっていた。

もともと基本的に日本の災害行政は国民の方を向いていない。昔から「旧に復する」ということで、「現在の自然をそのままにするのが良い」という間違った考えを環境団体も支持し、国交省も議論するのが面倒で、しかも利権から言っても「旧に復する」というのが都合が良いので、それに従っている。

しかし、自然というのは徐々に変化していくものだ。たとえば崩れやすい崖は大雨の時に崩れて土の持つ安息角(崩れない角度)になる。若い山が急峻で、年老いた山がなだらかなのは自然のなせるワザだ。自然は変化していく。

だから、
1)崖崩れなどが起きたら、二度と起こらない角度に変える、
2)より積極的に災害が起こらない前にその地域と行政が話し合って、なだらかな地形に変えておく、
などが必要で、行政はつまらないリサイクルやイベントなどに身をやつしていないでより高度な行政に変えなければならない(地方公務員の意欲と力不足の所もある)。

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もう一つは河川と都市排水の抜本的な改善だ。

川も山と同じで、ずっと同じ姿ではない。

川が流れるのは水のポテンシャル・エネルギーで、関東平野であれば利根川、濃尾平野は木曽三川の運んだ土砂でできたもの。この土砂は上流の急峻な山を削って海を埋め立てたものだから、川の護岸工事を人間がしたら、その時に本当は同時に川が運んでくる土砂の移動も川に代わってやらなければならない。

ところが、「この地方にだけ見られる独特の構造物であったが、明治時代に入って木曽川、長良川及び揖斐川の三川の大規模な治水事業により水害は激減した」となっているだけで、水害が激減してなにが変わったかを考えていない。水害が激減したというのは上流からの砂利も栄養も土壌も二度と再び、濃尾平野に蓄積するわけではない。その意味では水害がなくなって、自然は「破壊された」ことになる。

かつて平野を作った土砂は川底にたまり、川は堤防によって天井川になる。それを浚渫するには川のポテンシャル・エネルギーの一部を人間のガソリンを使わなければならない。しかしガソリンはお金もかかり(私はそうは思わないがCO2も排出して)環境の負荷を与える。川の砂を浚渫しないので川底があがり、雨が降ると、下水の水をポンプであげる始末になる。だからさらに水害が増える。

名古屋の浸水災害はまったく人為的なもので、治水の失敗を意味している。1時間50ミリで道路に水があふれるのだから「我々はなにができますか」などとお役所を防衛することなど言わない方がよい。

なんとバカなことをしているだろう。でも、現代の日本社会では「人間社会と自然を調和させて発展させる」という力は無い。賛成派と反対派がいがみ合い、奇妙な事をし続けている。

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私が気象庁の「過去に記憶の無いほど」という表現に怒りを感じるのは、少し前までは温暖化の責任にし、今は過去の責任にして、「水害や自然災害を少なくした日本の自然とはどういうものか?」を考えないのだ。時に私が「少し急峻な山を削って陸地を作ったら」というと、「自然を変えるなど、何を言っているのだ!」と罵倒される。

自然災害とは何か、人間はその中でどのように生きていくのか、人間と自然、生物の関係はどうあるべきか、そんなことは議論にもならず、ただどこかの会社の利権が優先されるだけである。そして、国交省内の気象庁と治水や道路を考える国交省の部署とは建設的な話をしない。

この際、奇妙は表現を止めて行政の遅れを具体的に指摘して行く方が犠牲者に対して私たちがするべき事だろう。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年10月02日時点のものです。

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