【健康と安全】 飲酒運転考(1) 飲酒運転とはなにか?(中部大学教授 武田邦彦)

【健康と安全】 飲酒運転考(1) 飲酒運転とはなにか?(中部大学教授 武田邦彦)

今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
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【健康と安全】 飲酒運転考(1) 飲酒運転とはなにか?(中部大学教授 武田邦彦)

飲酒運転とは「飲酒をして運転をする」ということで、昔はそれで良かったのですが、現在では「機器で測定して「酔っている状態」で運転する事が飲酒運転」と定義が変わっています。

つまり、昔は一杯飲み屋でお酒を飲んで運転して家に帰ってはいけないということですから、「乗るなら飲むな、飲むなら乗るな」というコピーが流行したのです。

この前、九州で「前日にお酒を飲むのは禁止」というバス会社があることが報じられました。そうなると毎日、車を運転する必要のある人は「一生、お酒が飲めない」と言うことにもなります。

私の知り合いの土建屋さんは、家族で一所懸命働いて家計を支えていますが、夜はビールを飲むのが楽しみ、そしてぐっすり眠って、朝は奥さんと仕事に出かけます。もちろん、軽トラックにはシャベルや一輪車など工事に必要なものを一式、乗せています。そして、そんな生活を何10年としています。

でも、前日にお酒を飲んではダメということになると、その人は仕事を辞めるか、晩酌の楽しみをあきらめるかを迫られる事になります。かくゆう私も、酒酔い運転の取り締まりがこの記事で示すような「非科学的」なので、お酒を飲んだ翌日は運転をしないことにしていますが、それは私の職業からそれができるからで、本当に土建屋さんは可哀想です。

飲酒運転がいけないことは当然で、社会的には一定のアルコールの血中濃度を決めなければなりません。

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この表は世界各国の飲酒運転基準で「呼気中の基準」を示しています。国によってはまれに血中の濃度の基準しかない国もありますが、血液検査をすることはできないので、そのような国は基準がないのと同じです。

この表からわかるように、血中のアルコール濃度の基準は世界的に、厳しい国が0.25(mg/L,以下単位は省略します)、普通の国が0.38で、まだ規制のない国も多いというのが現状です。

それに対して日本だけは飛び抜けて厳しく、0.15となっていますが、これは博多の飲酒運転事故前には0.25だったのですが、社会的な糾弾を受けて規制が厳しくなったものです。

それでは、いったい、酒酔い運転とはどう言うものなのでしょうか? そしてどのような規制をするのが酒酔い運転が行われない社会を作る方法なのでしょうか。まず、次のデータが必要です。

1)血中アルコール濃度と事故率の関係
2)血中アルコール濃度の経時変化

当然のことですが、「飲酒をしたら車を運転してはいけない」というのは不適切な表現です。10年前に一度、お酒を飲んだら一生、車を運転してはいけないということになります。つまり、正確に表現すると「飲酒をするかどうかではなく、血中のアルコール量(通常、呼気中の測定から換算)がどのぐらいなら危険」ということです。

だから、血中アルコール濃度と事故率の関係を調べ、それが「容認される限度」を決める必要があります。

【健康と安全】 飲酒運転考(1) 飲酒運転とはなにか?(中部大学教授 武田邦彦)

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ここに、原発の被曝についての被曝限度の決め方について「国際基準」の図を示しました。現代社会の危険性・・・農薬、毒物、添加物、車、タバコ、痲薬など・・・について、すべてこのような考え方で規制値を決めます。

まず、「絶対に安全」というレベルがあります。それがこの図では左の(免除レベル)になります。つまりこれ以下のものなら社会は何の問題にもしないということです。また右には(線量限度)とありますが、これは「仕方が無いから、この値で規制しよう」ということで、英語でtolerable(我慢できる)範囲ということです。規制値は「我慢できる数値」で決まります。

そんなバカなことはない、と思う方が多いと思います。被害が出ることが判っているのに、「我慢できる範囲」とはなにか!と思うでしょう。でも、人間はそれで仕方が無いのです。たとえば、交通事故では1年間に5000人の死者がでます。それでも車は走っていますが、これは5000人が「我慢できる範囲」だからです。

火災でも1年に2200人が死亡しますが、消防法や建築基準法をもっと徹底的にして、たとえば「木造の家は認めない」、「3階以上のビルはダメ」とか「マンションで火を使ってはいけない」などとすれば、死亡者はゼロに近づく可能性があります。

でも、それでは生活が困るので、「2000人ぐらいは仕方が無い」と言うのが「我慢できる範囲」です。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年08月27日時点のものです。

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