テストステロンが暴力的な犯罪を招く?男性ホルモンの不思議な作用
「テストステロン」という言葉に聞き覚えはあるだろうか? テストステロンとは男性ホルモンの一種である。近年では犯罪の原因を脳やホルモンなどの内分泌機能に求めるアプローチが注目されており、その中でもテストステロンには特に注目が集まっており、多くの心理学者や生物心理学者が研究を行っている。ここではテストステロンの基本的な働きと、テストステロンと攻撃性の関係について研究を進めている学者の代表的な仮説を紹介していきたい。
そもそもテストステロンとは何か?
テストステロンはコレステロールを原料にして、男性では睾丸で95%、副腎で残りの5%を製造している。主な働きとして思春期の時には「声変わり」や「陰毛が生えてくる」などの第二次性徴を促進させる働きがあり、成人以後には骨格や筋肉の成長に関わってくる。メンタル的な作用としては性欲を亢進させ、良く言えば「ワイルド」悪く言えば「粗暴」さを形成するといわれている。なお、テストステロンは男性専用ホルモンではないので、女性でも卵巣や副腎でテストステロンを分泌している(ただし、分泌量は男性の5~10%程度)。余談だが、男性ホルモンが多いとはげるという仮説にはテストロンが変化したジヒドロテストステロンというホルモンが関わっているようである。
テストステロンと攻撃性に関する仮説
アメリカの心理学者であるジェイムズ・M・ダブスは113人の受刑者を対象に唾液の中に含まれるテストステロンの量を調査した。すると、テストステロンの量が多い受刑者ほど暴力的な犯罪を犯していることが分かったと述べている。さらに生物心理学者のバンクスは一般人を対象に血液中に含まれるテストステロンの量と非行の相関関係を調査した所、テストステロンの量が多いほど非行にはしる傾向があると発表している。バンクスと同じく生物心理学者であるフィンケルシュタインも第二次性徴が遅れている患者に治療としてテストステロンを投与したところ、患者から攻撃的になったという自己報告があったと発表している。 1980年から2000年までの間にテストステロンと攻撃性について14の調査が行われたが、10の研究で上記のような関係がみられたという。
テストステロンは凶暴性の元凶なのか?
上記の仮説だけみるとテストステロンは凶暴性の元凶に感じられるかもしれない。しかし、最近の調査ではテストステロンが攻撃性を増すのではなくて、攻撃性が高まることによってテストステロンが増加するという研究報告も出てきている。テストステロンは攻撃性に大きく関わってはいるようだが、必ずしも決定的な要因ではないというのが、最近では主流の考えとなっているようである。
テストステロンはポジティブな使い方としてED改善やアンチエイジング、メタボの改善や心臓や血管の強化にも利用されている。悪役扱いせずに上手に付き合っていきたいものだ。
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photo by Rafael Chacon Photography
※この記事はガジェ通ウェブライターの「浅川 クラゲ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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