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リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(後編)

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今回はどらねこさんのブログ『とらねこ日誌』からご寄稿頂きました。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/367369をごらんください。

リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(後編)

(前編)はこちら→

「リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(前編)」 2013年06月18日 『とらねこ日誌』
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20130618/1371549428

※注意※

前編記事中にある腐らん病対策の高分子吸収体ですが、効果が無いと考えられているとコメント欄でご指摘頂きました。この件についてHさんは効果が無いのであれば止めようと思う。早いうちに効果が無いことが分かったのはラッキーです。ちなみに周辺の農家は自分のところの他の園地ではどろ巻き法をやっています、とお話し頂きました。

前編では「実は無農薬には魅力がある」と語ってくださったHさん。では、どうして無農薬に挑戦しないのでしょうか。

■ 無農薬には魅力がある?


(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://px1img.getnews.jp/img/archives/2013/06/0115.jpg


ど:魅力があるのに挑戦しないというのはやっぱりリスクがあるんですよね。

Hさん:ええ、無農薬無肥料の定義はおいといて、木村さんが推奨されている農薬散布なしに大きなリンゴを実らせた事自体はすばらしいと思いますよ。だけど、木村さんのウェブサイトを見ると安定した収量を確保できてないみたいなのですよ。


ど:確かにそうみたいですね。特に2009年は不作で十分に供給できなかった旨が以前掲載されてましたね。他にも友人や来訪された方にも収量が十分でないという話をしている様子が、ネット上でも見られますね。

Hさん:今の収量の7割しか確保できなくても毎年安定して収穫できるのなら、やってみたいとは思いますが、木村さんはそこまで至るまでに数年は収穫なかったようですし、現在も収量などのデータを公表してませんからね。


ど:リスクが大きすぎるわけですね。

Hさん:そうした数値の公表無しに、他の農家はなんで無農薬栽培をやらないのか?というのはフェアじゃあないですよ。木村さんの農法に成算があるのなら、きっと青森県りんご協会(その他、県や研究所などの信頼できる機関の指導はかなり参考にしているとのこと。勿論、失敗もあるため全面的に信用しているわけではないですと仰っていました。)などからアナウンスがあると思うんですよね。ですけど、そうした動きは今のところないですからね。ある程度信頼しているそうした研究機関などが検証し、再現性がある事がしめされれば、農家は農薬使用に変に拘らずに採り入れると思いますよ。


ど:意外と柔軟なんですね。

Hさん:そうですね。商売ですからメリットがあれば挑戦しますよ。逆にそれが無いと思っている人が多いから手を出さないんです。普段の栽培でも、農薬を使わずに虫や病気を手間がかからずに撃退できる方法があるのなら、ちゃんと利用するんです。腐らん病対策でも、良い方法があれば新しいアイディアがあればどろ巻き法でもオムツでもとり入れますし、害虫の天敵がいればそれを利用したり、と。

■ リンゴに対する誤解あれこれ


(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://px1img.getnews.jp/img/archives/2013/06/028.jpg

豪雪によるリンゴの枝被害。わい化栽培だけでなく、雪による枝折れは農家にとって深刻な問題。放置すると病気の原因となることも。


ど:では、もう一つ質問したいことがあるのですがよいでしょうか。ツイッターでこのまえリンゴが古くなると表面がテカテカするワックスについて書き込んだのですが、けっこう反応があったのですよ。アレって農家が出荷するときに塗っているのだと思っていたという方がけっこういらっしゃるんですね。あれは、リンゴ自体が分泌していて、虫を付きにくくしたり、水分が飛ぶのを防いだりしているんですよね。

Hさん:ああ、なるほど。ワックスはジョナゴールドにでやすいですねぇ。自分のところにもそんな誤解をする人いますよ。でも、一番多いのはいわゆる「みつ」についての誤解ですねぇ。


ど:え、そうなんですか?どんな誤解なのですか。

Hさん:「Hさんのところのリンゴは自然でイイねぇ、ちゃんと蜜が不揃いに入ってるからね」といわれるんですよ。話を聞くと、注射で蜜を入れているんじゃないかと思ってるみたいなんですね。


ど:いやぁ、それは全く考えた事なかったです。

Hさん:「みつ」は今でこそ人気ですが、昔は「りんご密病」なんて呼ばれてまして、長期保存すると「みつ」の部分が悪くなりやすいから生理障害とみなされてたんですよ。


ど:へぇ~~~

Hさん:「みつ」はフジという人気品種に入りやすいんだけど、完熟したあとに中心部に貯まることから、完熟りんごの証しでもあるので確かにみつりんごは甘いですね。でも、みつが入っていないというクレームなんかもいただくことがあって、品種による違いがあることや、必ず入るわけではない事を説明するのが大変ですね。


ど:評価は時代とともにかわるものなのですね。私も食品学などをやっていたので、食品成分についてはちょっとわかるのですが、「みつ」の部分にたまっているのは糖アルコールの一種ソルビトールで、ソルビトール自体の甘さはショ糖(砂糖の主成分)を1とすると0.5~0.6ぐらいなので、たいして甘くないんですよね。なので、その部分を食べても美味しいわけじゃないし、アレは細胞から水があふれでている状態なので食感もよろしくないし。

Hさん:なるほど、ソルビトールの甘さですか。


ど:話をずらしてしまってすみません。他にはどうですか?

Hさん:う~ん、あとはやっぱり農薬についての誤解が多いかな。まかれた農薬は植物にしみこむと思っている人が多いんですよね。


ど:ああなるほど、自分の周りにもリンゴの皮は農薬がしみこんでいるから絶対食べちゃダメという人がいますね。本当のところはどうなのでしょう?

Hさん:基本的に内部に浸透して残留するような薬剤は危険だから認められて無いと考えて良いですよ。だから、農薬を散布したあと雨が続くとせっかくかけた農薬が流れてしまって、効果がでない(流れる事もそうですが、効果が出るぎりぎりまで薄い濃度で使用するように設定されているので、雨で薄まれば十分な効果が期待できなくなります。それぐらいの配慮がなされているそうです。)なんて事があります。なので、農薬散布は晴れが続くときに行うものなんです。かけたら吸収されてとどまるのならそんな苦労はないですけど、安全が優先ですから。


ど:農薬って流れちゃうんですか。

Hさん:そうですよ。それと農薬をかけて病気や虫に喰われないようにするのは、主に葉っぱに対してで、実には基本的に直接はかけないんです。収穫前1ヶ月以降は全く使わないですよ。


ど:へぇぇ、そうなんですか。

Hさん:袋かけはしますけど、袋を外したあとに虫にやられるなんて事はあまりありませんね。基本的にリンゴ果実自体には農薬いらないんですよ。熟したりんごの敵はカラスです。美味しそうなのばかり狙いやがる。


ど:カラスは頭イイですからねぇ。

Hさん:葉っぱにかける農薬も、昆虫がサナギから成虫にならないような薬とか、特定の昆虫にだけ効果があるとか、無差別に殺すような薬でもないんですよね。


ど:農薬をまいて育てた野菜は虫も食べないなんて誤解もありますよね。

Hさん:そうそう、そんな誤解。農薬がかかるとそこから中に入り込んで農薬に汚染した野菜になってしまっているというイメージは強いんですよね。だから虫も食べないと。


ど:植物を育てた事がある人だと理解して貰いやすいのですが、一般の人はそういうものかと思ってしまいますよね。農薬まいて虫食いの被害がない野菜でも、アオムシを乗っけてあげればちゃんと食べますからね。市販の野菜クズで、昆虫飼育ができるので試して貰えれば笑い話にしてもらえると思うんですけど。

Hさん:そうそう(笑)。そういえば、不可能だと考えられていた無農薬栽培に成功、というキャッチコピーですが、個人的には元々不可能とは思ってはいないですね。


ど:といいいますと?

Hさん:近所に比較的放任の農園があって、ほとんど病害虫の防除をやってなかったのですけど、秋にはちゃんと実ってましたね、小さかったですけど。


ど:へぇ~、育つ物なのですね。

Hさん:小さいのは摘果もちゃんとしていなかったからで、収量に拘らなければ可能なのかな、と。でも、これが成り立ったのは周囲の農家がちゃんと病害虫対策をやっているからだと思うんですよね。


ど:周囲の防除にフリーライドしている・・・と。

Hさん:そういうことです。例えば木村さんのところも、そうじゃないというのであれば、それを実証するために、周囲に農園のない地域に圃場を用意し、研究者と一緒に実証研究すれば良いと思うんです。でも、そんなことをしているという話はききませんね。


ど:もし有用な農法であり、それを周囲が採り入れるのには不可欠な検証でしょうね。

Hさん:木村さんの件かどうかは不明なのですが、この地区の農家の方で、農薬散布を行わない農家の人がいて、害虫や病気の発生源(この件とは別に、農薬をまかない農園に隣接する農園を農薬の試験地としているという企業からの情報もあります。無農薬農園に近いところは実験対象となる害虫が多く、試験に丁度良いからという理由だそうです。)になってこまると役場に団体で苦情を訴えたなんて事がありましたね。役場としてはどうしようもないみたいでスルーされたようですけど。


ど:安易に採り入れる人が続出すればそういう事が今後もおこるかも知れませんから、注意が必要ですね。

Hさん:繰り返しになりますが、木村さんの苦労や努力の結果、現在の成功があるのは素晴らしいと思うのですけど、残念ながら数字がありません。それが大学や研究機関などがきちんと条件を揃えたところで検証していただければいいなぁと思うのですけどね。


ど:良さそうなところがあればどんどん採り入れる貪欲さはリンゴ農家にある事がわかりました。

■ でも本人は危険なのでは?


ど:消費者は安心してリンゴを食べて良い事が分かりました。ですが、農薬を散布する農家のかたについてはどうなのでしょう? 木村さんの始めた切っ掛けというのが、妻の農薬による皮膚障害という事でしたし。周囲の農家で同様の症状を持っている人などはいますか?

Hさん:うーん、そのような話はきいたことないですね。よっぽど昔であればわかりませんが。農薬を機械で散布するときは防護服を着ますし。あと、農薬の準備中には良くないのかも知れないけど肌の露出があって少しかかってしまう事もあるけど、なんとなくかゆくなりそうな気がするから、水で洗い流すようにはしているけどね。


ど:なるほど。もしかすると、農薬そのものが問題というより、その人が特定の成分に敏感に反応する体質だった可能性もありそうですね。確かに、その人にとってその薬剤は害悪ですから、避けたいという気持ちになるのはわかります。天然の物質でも漆にかぶれる人もいればそうで無い人もいるように、アレルギー反応ってそんなものですよね。大丈夫な人は気にしなくて良い、と。

Hさん:いやぁ、ウルシに実は弱いんですよ。山菜採りでやられた事あります(笑)。自分がウルシに弱いからといって、ウルシはけしからん、撲滅せよとは思わないけどね。

■ 理想のリンゴは?


ど:まだまだお伺いしたい事はありますが、もうこんな時間ですしこれで終わりにしたいと思います。繁忙期だというのに、作業を中断させてしまい申し訳ありませんでした。

Hさん:いえいえ、楽しかったですよ。普段リンゴ農家の話を聞く機会のない人がどんな感想を持つのか楽しみですね。それと、リンゴ農家だけど反復作業は飽きるから丁度良かったよ(笑)。


ど:最後になりますが、Hさんが理想とするようなつくりたいリンゴってどんなものでしょう?

Hさん:そうだねぇ、味も大事なんだけど新鮮なリンゴの歯ごたえというのは長持ちしないのだけど、あの歯ごたえを長持ちさせたいねぇ。そんなガリっとした固さが長持ちするリンゴをつくりたいねぇ。


ど:成算はあるんですか?

Hさん:いや全然無い(笑)。でも、そういうリンゴつくってみたいですね。


ど:今日はありがとうございました。

■ おわりに


(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://px1img.getnews.jp/img/archives/2013/06/036.jpg

リンゴ農家にとって忙しい時期であるというのに、午前中の大事な時間を割いてまで取材を受けて下さったHさんには感謝の気持ちでいっぱいです。

「無農薬は魅力だよ、使わないですむならそれにこしたことはない」と仰っていたHさんの言葉がとても印象に残りました。リンゴ農家の方は消費者に安定して良い品質のリンゴを届けることが最優先と考えており、再現性の確認されていない(しかも周辺への迷惑になる可能性が否定できない。)方法においそれとは挑戦できないのだなぁ、という事が実感できました。事実、農薬を使わない良さそうな方法があれば、その都度とり入れており、新しいことに挑戦しないという頑なな農家というイメージと異なり、柔軟でしたたか(?)なリンゴ農家の実際の姿を見ることができたのはとても貴重な体験でした。

木村秋則さんのリンゴストーリーも感動的ですが、それぞれの農家にも様々な物語があるんだなぁと取材を通して感じたところです。Hさんの理想とするリンゴができた時には、真っ先に買いに行きたいと思いました。

■ 追記6/21

コメント欄にて農薬の使用方法等について、栽培法により違いがあることなどを指摘頂きました。

Hさんの農場は有袋栽培というリンゴに袋がけをする方法ですが、袋をかけない無袋栽培では害虫に対する対策などに違いがあるという事です。

「「リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ」を読んで」 2013年06月21日 『タンボとハタケと』
http://tahata.seesaa.net/article/366998796.html

執筆: この記事はどらねこさんのブログ『とらねこ日誌』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年06月25日時点のものです。

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