キャスト・スタッフが歌舞伎の舞台に!京都を描くこだわりが見えたアニメ『有頂天家族』先行プレミアイベント

『有頂天家族』先行プレミアムイベント

2013年7月7日よりTOKYO MX、サンテレビ、KBS京都などで放映がはじまるアニメ『有頂天家族』の先行プレミアムイベントが2013年6月16日に京都・四條南座で開催。集まった約1000人のファンの前で、キャストの櫻井孝宏さん・諏訪部順一さん・吉野裕行さん・中原麻衣さん・能登麻美子さんのほか、原作者の森見登美彦さん、吉原正行監督、P.A.WORKSの堀川憲司プロデューサーを交えて、アニメ第一話の先行上映や作品・キャラクターの魅力についてのトークが行われました。

京都四條南座

会場になった四條南座は、京阪電鉄祇園四条駅そば。元和年間に公許された歌舞伎発祥の地で、歳末の吉例顔見世興行など現在でも数多くの公演の舞台となっています。もちろん、アニメのイベントをするのは長い歴史の中で初になります。

キャスト登場の際に、いなせな和装をまとった櫻井さんと諏訪部さんが舞台正面のせり上がってきて大歓声! 続いて中原さんと能登さんが艶やかな着物姿で花道を歩いて進みました。そして、最後に吉野さんが花道のセリから上がり、ファンを喜ばせました。
セリに乗ったのが人生初という櫻井さんは「にやにやしてました」とまんざらでもない様子で、諏訪部さんも「花道から出るという空気感を出しておいて、最初から一発かましたな、という感じ」とやったりの表情。
一方、吉野さんは「上がった瞬間にすぐ(お客さんの)顔が見えるじゃないですか?めっちゃ恥ずかしいじゃないですか?そのまま出てくるとヤバいから最初から構えてとか、いろいろ考えちゃいました」とシャイな一面を見せていました。

下鴨家 (C)森見登美彦・幻冬舎/「有頂天家族」製作委員会

『有頂天家族』は、狸や天狗のいる京都を舞台に狸界の権力闘争を描いた小説。偉大な父の「阿呆の血」を受け継ぐ下鴨家の四兄弟や、師匠格である天狗の赤玉先生、赤玉先生の手ほどきで神通力を得た妖艶な美女の弁天を中心に物語を織り成します。

弁天と矢三郎 (C)森見登美彦・幻冬舎/「有頂天家族」製作委員会

作品の見どころについて、三男・矢三郎役の櫻井さんは「家族たちがお互いに思いやっているのだけれどボタンの掛け違いのドラマがある」と家族愛がテーマだと強調。弁天と矢三郎との関係についても「振り回されているのを楽しんでいるのだけれど、切なくなる気持ちもある」と分析します。この二人のつかず離れずのやり取りは、第一話から展開されており、シリーズを通して楽しめそう。

櫻井さんは矢三郎を演じた印象を「どこか憎めない、愛嬌のある存在。作りすぎず自然体で臨めて、女子高生やいろいろなものに化けることが出来て楽しかった」と語り、諏訪部さんは矢一郎について「長男中の長男。僕自身が長男なので、一番上だから頑張んなきゃというところに共感が持てるキャラクター。キャストも年齢順ですが、(アフレコ現場で)長男らしさは全然ないです」と笑わせます。
吉野さんは「狸なんですけれど、ほとんどカエルの姿しか見ませんでした。井戸の中にいるので、外の世界に触れることはないかな」と次兄・矢二郎らしいテンションで紹介しました。

一方、末弟・矢四郎役の中原さんは「ほんとうに子供でお兄ちゃんたちにおんぶにだっこ。でも男の子だからやる時はやるもん、という子です」とのこと。
弁天役の能登さんは「敵に回したらちょっと恐ろしい感じかな。何を考えているか分からない、捉えどころのないキャラクターかな、と思います。男子としては、付き合うのは相当苦労しそうな感じ」といいます。その落ち着いた話しぷりには、「この舞台が一回目じゃない雰囲気。しっくりききすぎている」(櫻井さん)、「すぐにお店が出せそうな感じ」(諏訪部さん)、「非常にきれいなうなじをしていました」(吉野さん)と男性キャスト陣が絶賛し、赤面する場面も。

井上喜久子さんビデオレター

また、四兄弟を暖かく見守る一方で宝塚歌劇が大好きという母親役の井上喜久子さんのビデオレターを放映。自己紹介の際に「井上喜久子17歳です。オイオイ」と自分で突っ込みを入れるお約束には、諏訪部さんが「日本の新しい伝統芸能になれるのでは」とコメントして笑いを誘っていました。

第一話がシークレット上映された後には、森見さん・吉原監督・堀川プロデューサーがやはり和装で登場。
アニメ化された映像を観て、森見さんは「京都の町並みが美しくて、アニメの世界に入ってしまえるようだった」と出来栄えに太鼓判。「原作を読んで”これをアニメにするのか、大変だろうな”という印象だった」という吉原監督は、「原作を読んだ人と映像を共有できるのか今も不安ですが、無い袖は振れないので、このままのテンションで行ければ」といいます。

鴨川の背景美術 (C)森見登美彦・幻冬舎/「有頂天家族」製作委員会

アニメ化をするにあたってスタッフのこだわりが見えるのが現代の京都を忠実に再現した美術。吉原監督はこの作品のために一ヶ月間京都に住み込み、約1万枚の写真をロケハンで撮影。「だんだんいいショットを撮ろうとなっていった」と笑いつつ、赤玉先生のアパート近くの商店街を描くために「夜な夜な京都人になるために取材しました」と話しました。
スタッフの粋を結集して制作に当たっている今回のアニメ。「森見先生の記憶にある美しい京都を僕が見たくて、僕の会社で実現したかった」という堀川プロデューサーは、「ファンタジーの生き物を描くのはアニメならでは。森見作品はスペクタクルが後半にあるので、それをどう表現するのか」と語ります。

また、「楽しみにしているシーンは?」という質問に対して、森見さんは弁天がくじらの尻尾をひっぱる場面を挙げ、「原作書いた時はもしかして無駄な場面なのではないだろうかと思っていたのですが、非常に入念に描かれていて(笑)。不思議な愛着のある場面なので、すごく楽しみにしています」とのこと。予告編にも少しだけ入っていますが、本編がどのようになるのか期待が高まります。

最後に記念撮影

森見作品のファンにとっても盛りだくさんの内容になったイベント。京都府のご当地キャラのまゆまろと白須正・京都市産業観光局長から森見さんに花束贈呈。長男の諏訪部さんの「せーの!」という美声を合図に、観客も「下鴨屋!」と声を合わせて配布された紋章入りの手ぬぐいを掲げてパシャリ。
最後は、櫻井さんの「面白きことは!」という声掛けに「よきことなり!」と名文句を全員で唱和してお開きになりました。

既に月刊『コミックバーズ』(幻冬舎コミックス)でのコミカライズ版が連載されているほか、森見さんの書き下ろし短編「冬の女神と毛玉たち」が収録された『有頂天家族公式読本』が2013年6月下旬に刊行予定。アニメ放映前に作品の世界について復習しつつ、京都の街並みに思いを馳せてみると良いのではないでしょうか。

TVアニメ『有頂天家族』公式サイト
http://uchoten-anime.com/

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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