最近の国際的な税金の事件がよく分かる良書:お金持ちに捨てられる日本 超増税社会を生き抜く知恵、奥村眞吾

最近の国際的な税金の事件がよく分かる良書:お金持ちに捨てられる日本 超増税社会を生き抜く知恵、奥村眞吾


今回は藤沢数希さんのブログ『金融日記』からご寄稿いただきました。

最近の国際的な税金の事件がよく分かる良書:お金持ちに捨てられる日本 超増税社会を生き抜く知恵、奥村眞吾

「お金持ちに捨てられる日本 超増税社会を生き抜く知恵 [単行本(ソフトカバー)]」 奥村 眞吾(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4569811655/

タイトルから、なんとなく日本の政治経済に物申す的な本で、過去に実際に物を申してきた僕は、そういう類書もたくさん読んでいて、なんとなく満腹感があっていいや、と思っていたのだが、読んでみるとこの本はそういう類のものではなくなかなか面白かった。
(政策提言関連の本は、ちょっと食傷気味なのだが、それでも、日本が所得税の最高税率を55%にしたのは狂気の沙汰だし、依然として高い法人税率など、ボーダレスな世界の中で、日本国民はアホな政府のせいで大変な損をしていることは変わらず、そういうことを訴え続けるのは重要ではあると思っている)

著者は、日本とアメリカにオフィスを構える税理士で、国境を跨ぐ税金問題に詳しい。
この本の何が面白かったかというと、最近の重要な国際的な脱税などの税金絡みの事件が多数解説されていることである。
フェイスブックの共同創業者が上場前に節税のためにアメリカ国籍を捨てていたり、フランスの俳優がフランスの最高税率の引き上げに抗議してロシアに移住する際にはロシアのプーチン大統領が直々に市民権を授与したり、中国ではGDPの2割(約120兆円)が役人への贈り物、業者からのリベートなどの裏金だそうで銀座やマカオで中国人が高級時計などを買い漁っている理由などなど。
個人的には特に面白かったのが、スイスのプライベートバンクの最大手のUBSとアメリカ政府の工房である。
実際にはアメリカ政府とスイス政府の攻防であるが、UBSは顧客情報をあっさりとアメリカの税務当局に渡してしまった。

また、現在の日本の法人税率は世界の中で抜きん出て高く、多くの企業が多国籍化しているので、当然だが、グループ企業同士の取引などを巧妙に使って、日本での利益を低くしようというインセンティブが働く。
こうした脱税事件なども詳しく解説している。
しかし、Amazonなどは、日本最大のEコマースになったが、日本では法人税を払っていない。
Amazonはアメリカの会社で、日本の倉庫などは恒久施設ではないという主張だが、相手がアメリカ政府だけあって、アメリカがこうだといったら、日本はそれに従う他ない。
こうして、日本からどんどん税収が海外に逃げていく一方で、日本の法人の4分の3は赤字なのである。
中小企業の経営者は、生活と会社が一体なので、わざわざ必死こいて働いて利益を出して税金を納めるよりも、売上も適当にして、経費を計上して、赤字にして高い税金など納めないのである。

それにしても、こんな日本の異様に高い法人税率を放置し、所得税の最高税率を引き上げたのだから、日本はみんなで貧しくなりたいのだろう。
こうした日本の税制が改善されない限り、急成長するアジア経済の中で、日本から流出する富が、香港政府やシンガポール政府を潤し続けることになるだろう。

ところで、この本を読んで改めて思ったのは、鳩山由紀夫の脱税問題は非常にアンフェアだったということだ。
毎月1500万円もの金額を、贈与税や相続税を逃れるために、様々な名義で偽装して母親が由紀夫氏に送っていて、総額は10億円にもなった事件である。
金額、悪質性から言って、これがふつうの民間企業のオーナーなら牢屋に入ってもおかしくない脱税事件だった。
しかし、首相ということで何の捜査もなされなかったのである。
法の下に平等という、法治国家としての最も大切なことが曲げられてしまったのである。

執筆: この記事は藤沢数希さんのブログ『金融日記』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年05月10日時点のものです。

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 最近の国際的な税金の事件がよく分かる良書:お金持ちに捨てられる日本 超増税社会を生き抜く知恵、奥村眞吾

寄稿

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。