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戦場で生まれる“怖い噂”の数々

 日本では「口裂け女」や「ベッドの下に潜む男」など、海外では「13日の金曜日」など、常に人々の心のどこかに恐怖を感じさせている“都市伝説”だが、とりわけその伝説が生まれやすいのが“戦場”だ。

 兵隊やテロリストたちの幽霊、陰謀説など戦場には幾多の都市伝説が生まれる。確かに、人間の負の感情が渦巻く現場だと考えれば、それは当然のことなのかも知れない。
 気鋭のノンフィクション作家、石井光太氏が執筆した『戦場の都市伝説』(幻冬舎/刊)はそうした戦場や紛争地域で生まれた都市伝説や噂話を通して、「不都合な真実」を解き明かそうとする意欲作だ。
 本書の中から、2003年に勃発したイラク戦争での話「僕の仲間を助けてください」をピックアップしよう。

 アメリカは戦争終了後も治安維持のために10万人を超す兵士を駐留させていたが、その中にトムという30代の軍医がいた。トムはいい勉強になると考え、小さな基地で、一人で医務業務を担っていた。
 次第に相手の武装勢力の攻撃が激しくなり、重症患者が運び込まれることも多く、トムも多忙を極めていった。そんなある日、眠っているトムの元に、イラク治安部隊の兵士から、「今から緊急の患者を手術室に運び込みます。頭を撃たれて危険な状態です」という内線電話が入る。危険な容態の患者を追い返すわけにはいかないと、手術室に向かったトムだが、誰もいない。ただベッドにはぬくもりが残り、血がついていただけだった。
 その後も、「マハト」という兵士が瀕死状態になっているという連絡が入るが、手術室に行っても無人で、ぬくもりと血だけが残されていた。変だなと思うトムに、さらにまた同じような連絡が入る。けが人が基地ではない別のビルにいるという。日が明けて、仲の良い部隊長の部下とともにビルに向かうと、奥の部屋に腐りかかった遺体が3体、抱き合うように倒れていた。その中の一人の軍服には「マハト」という名前が記されていた。
 その後、トムはその廃ビルにやってきた治安部隊の兵士から、3人についての話を聞き、きっとこの兵士たちは死んだ後も助けを求めて自分に電話をかけたのだろうと思い、手を合わせたそうだ。

 これが実話か嘘かは分からない。しかし、戦争が終わったあとも続いた戦闘のむごたらしさや悲惨さを感じ取ることはできるはずだ。また、当時、救命ではアメリカ兵が優先されイラク治安部隊の兵士たちは二の次になっていた現実もあった。
 石井氏は、戦場における待遇の「格差」は、生命の「格差」を生むことになったといい、「弱い立場にいるために死ぬことになった兵士たちへの罪悪感が、治安部隊のイラク兵の幽霊話になったように思えてならない」(p100より)とつづっている。

 本書にはこうしたエピソードが18話、掲載されており、そのエピソードに対して石井氏が解説を加えている。いずれも信じがたい話だが、その裏から見える戦争や紛争の本当の姿の醜さを知ることができるだろう。世にも奇妙な戦争の噂を読んでみて欲しい。
(新刊JP編集部)



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