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「こんな人が私の夫なんて……とても愛せない」ビッグニュースに大混乱! 世にも意外な美女と野獣の電撃結婚 ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

油断したところを不意打ちされ……衝撃の展開に大混乱

玉鬘の宮仕えが間近に迫った『源氏物語』第31帖は以下のように始まります。意訳ですがこんな感じです。

「帝のお耳に入ってご不快に思し召されては恐れ多い。当分世間にはおおっぴらにしないように」。源氏はこのように注意をするが、髭黒の右大将は浮かれてなかなか事実を隠しきれない。

何日かが過ぎても玉鬘は一向に打ち解ける様子を見せず、沈みきって自分の運命を呪うばかりである。そんな新妻を髭黒は恨めしく思うが、一方で想像以上の、けがれなき美女と結婚できた喜びを噛みしめるのであった。

正直、唐突過ぎて何が何やらという感じですが、どうやら玉鬘は髭黒と結ばれてしまったらしい。浮かれているのは髭黒だけ。玉鬘はうち沈み、源氏は髭黒に苦情を言っていますが、あまり効き目がない様子。すでに数日が経過しているようです。

作者の“肝心のシーンは一切描写しない”方針により、玉鬘と髭黒の初夜がどうであったかは定かではありませんが、もともと髭黒のことは「ヒゲモジャのオジサンで嫌だわ」としか思っていなかった彼女だけに、その衝撃たるや想像を絶するものがあります。

結婚と言っても実際は寝込みを襲われたわけですし、玉鬘は男女のことにとにかく疎い。源氏に添い寝されただけで「一線を越えたのでは」と悩んだりするような娘でしたからね。

油断したところを不意打ちされてめちゃくちゃショック! ……というのが妥当な想像かと思いますが、田辺聖子先生の『新源氏物語』では、踏み込む前に髭黒が長々と口上を述べ、自身のプレゼンをするシーンが追加されています。「そういう解釈もアリかな…?」とは思いますが、やはりここでの髭黒は憎まれ役でいい気もします。

髭黒がやすやすと玉鬘の寝室に入り込めたのは、協力者がいたからです。「石山の観音様にも、女房の弁のおもとにも伏し拝んでお礼を言いたい」と髭黒は思うのですが、この弁のおもとは、以前から髭黒の手紙を取り次いでいた担当者です。

彼女は髭黒の熱心な相談を受けるうちに同情し、宮仕えが迫る中、焦った髭黒に根負けしてつい……というわけ。髭黒からは感謝感激されたものの、すっかり玉鬘からは嫌われて、ろくにお務めもできず自宅で引きこもる始末でした。

いきなり美女をゲットした野獣、髭黒ってどんな人?

今までいろいろな例を見てきたが、今回は心の浅い人に観音様のご利益があった結果になった……と、ナレーションは語ります。並み居るライバルを押しのけ、一気に差し切り勝ちを決めたダークホース、髭黒とは何者なのでしょうか。プロフィールを簡単にまとめます。

名前…髭黒(ひげくろ(黒いヒゲがトレードマーク)
年齢…32~3歳(源氏は37歳・玉鬘は23~4歳)
職業…右大将(帝の身辺警護をする近衛府の長官)
性格…真面目で融通がきかない。おしゃれや風流は苦手で、武骨者との声も
家族…正妻(35~6歳)長女(13歳)長男(10歳)次男(8歳)
備考…妹が皇太子の生母。そのため将来は帝の伯父となり、出世が約束されている

髭黒は今で言うと40過ぎの子持ちのオジサン。妹は皇太子の生母で、自身も右大将と出自・将来性は上々。源氏・頭の中将(内大臣)に次ぐ第3勢力といえます。源氏と頭の中将の2強体制が変われば、この人の時代が来るだろうという有力者です。真面目で融通がきかないタイプで、今まで浮いたウワサなどは全くありませんでした。

ここで特筆すべきは数歳年上の妻と3人の子供の存在です。この年上の奥さんの父親は式部卿宮で、紫の上とは異母姉にあたります。母親はあの、紫の上をことごとくいびり倒してきた意地悪な継母です。

3人の子供をもうけたものの、最近はある事情から夫婦仲が冷え込み、髭黒は陰で妻のことを「ばあさん」と呼んで別れたがっていました。それもあって、婚活を考えていた所に玉鬘の評判を聞き、年甲斐もなく夢中になったというわけ。それにしてもばあさん呼ばわりというのは、陰口にしてもかなり残念ですね。

「心ゆかず口惜し」食い違う二人の父親の思惑

源氏は髭黒との結婚に賛成ではありませんでした。「髭黒に玉鬘はもったいない、不釣り合いだ」と思っていたせいもありますが、髭黒を婿にした場合、紫の上の実家との関係がますます悪化するとわかっていたからです。もとから冷戦状態でしたが、こうなった以上、正妻から恨まれるのは当然ですからね。

一方、実父の頭の中将の考えは逆。「これでよかったと思う。宮仕えに出たところで、しっかりした後見はしてやれなかった。中途半端な立場で肩身の狭い思いをするよりは、結婚して幸せになって欲しい」。

確かにこれも真実で、尚侍という女官として寵愛を受けた所で、帝に大事にされなかったらただの愛人。何のための宮仕えなんだか、ということになってしまいます。

源氏は実父の頭の中将の意向を尊重して盛大な婚儀を行います。頭の中将は対応に感謝しますが、源氏の心中はズバリ「心ゆかず口惜し」。納得できないし悔しいが、既成事実ができてしまったからには仕方がないと思う他ありません。

思えば髭黒が直前に、頭の中将にしっかり根回しをしておいたのが功を奏したとも言え、源氏としては二重に歯がゆかったのではないでしょうか。一見無謀そうに見えて、実に計算高くコトを運んだのですから。

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