【BOATRACE女子】女子王座決定戦まもなく開幕 『BOATRACE』初心者が楽しむポイントは?
以前は「競艇」の名称で知られていた公営のモーターボート競技、現在は「BOATRACE」という名称になったことはご存知でしたか? ネットで舟券が買えたり、レースもストリーミングで視聴できたりと、実はネットと相性がよくなってきている『BOATRACE』について、「ガジェット通信で女子王座決定戦の取材をしませんか?」と声をかけていただいたので行ってきました。全3回のシリーズで、『BOATRACE』と女子王座決定戦の見どころ、注目選手インタビュー、そして優勝者へのインタビューをお届けします。
第1回はBOATRACE振興会 広報部広報課の小林真菜美さんに、これから『BOATRACE』を見る初心者にも分かる『BOATRACE』の観戦ポイントやその魅力、2月28日に開幕する華やかな女子王座決定戦の見どころを聞きました。
※記事には図や写真を多数掲載しています。すべての写真が見られない方はガジェット通信をご覧ください。
まず“スピード感”を見てほしい
ガジェ通:初めて今から『BOATRACE』を見てみようという方に、見て面白いポイントを教えていただきたいのですが。
小林:約80mk/時で疾走するボートを水面際で見ると迫力を感じることができますし、ターンマーク(コーナーに設置されたブイ)を回る瞬間は選手にとっても駆け引きの場です。ターンの仕方によって、後ろの選手は水しぶきや水の流れを受けるので、そういったところからどういうふうに後ろのボートが動くのかというところを見ていただけると楽しめると思います。
実際にレース場へ行くと、スタートラインを6艇が全速力で越えるときの音ってすごいんですよ。結構音っておなかに響くんだなって実感することができます。ウェブで見ていただくとなかなか感じないので、本当は生で見ていただくのが一番面白いと思うんですよね。ボートの重さが150~160kgなのですが、それが80km/時で目の前を通過していくというのは、なかなか日常では体験できないですよね。
レースの流れ
ここで、『BOATRACE』ではどういう流れでレースが展開するのかを見ていきましょう。レースコースは1周600m。コーナーにはターンマークが設置され、スタート後に最初に回るマークを「1マーク」、次に回るマークを「2マーク」と呼びます。6艇はスタート後の直線から1マークをターンして、ふたたび直線を走って2マークをターンして周回。合計3周して着順を決定します。
レース前にボートが待機するピットは2マーク側にあり、ピットから出た6艇は2マークを周回する「待機行動」をとります。6艇それぞれは自分が走行するコースを自分で決めることができ、待機行動中に6艇がどのコースに入るかの駆け引きを展開。スタート30秒前にはほぼコースが決まり加速を開始し、スタートの瞬間を目指して全艇が全速で走行します。
『BOATRACE』では、決められた時間内にスタートラインを通過する“フライングスタート”という方式を採用しているのが特徴です。「大時計」と呼ばれる、会場に設置された時計の秒針が12時から1時を回る1秒の間にスタートラインを切るというルール。それより早くスタートした選手は「フライング」、それより遅れた選手は「出遅れ」として、そのレースには出ていない欠場の扱いとなります。欠場した艇の舟券を買っていた場合、全額が払い戻されるのでご安心を。
まず頭に入れておきたいのは、“インコースの選手が有利”ということ。上位の着順を目指すには、走行距離が最短で済むインコースを走るとレースを優位に進められます。インコースを取り合うバトルが繰り広げられレースのハイライトとなる1マークのターン、ターンでの攻防に用いられる技術、ターンへの布石となるスタートについて観戦ポイントを伺っていきます。
最初のターンにドラマがある
ガジェ通:スタートを切って、最初のターンのところで勝負が決まるそうですが、そこがやはりレースで注目してほしいポイントですよね。
小林:そうですね。ほとんど最初のターンのときに1着になるボートが決まってしまうんです。これは、先頭のボートが波を引き起こすので、その影響を後続のボートが受けてしまうところにあります。
レースで使用するモーターとボートは、抽選で選手に割り当てられる決まりになっています。同じモーター、ボートなんですが、個体差があり“いいエンジン”を抽選で引き当てた選手は、直線での差を詰めることもできるので、時には着順争いが熾烈(しれつ)を極めることもあるんですよ。
スタート後、いちばん最初に180°向きを変える1マークでは6艇がいっせいに向きを変えるので、いろんなことが想定されるんです。たとえば内側が空いていたりだとか、アウトコースの人の方がスタートが速かったのでグルーっと内側に入ってこられたりとか。選手もそこをどう回ろうかと思いながらスタートを切って、180°転進する中でいろんなドラマがあるんです。6艇がいっせいにターンするのが、レースの中で1マークが最初で最後になるので面白い。
選手はこのとき何を考えているかというと、この短い時間の中で自分がどういう戦法で行ったら、だれよりも先にこのターンマークを回れるかを考えています。回る瞬間って、そんなに考えている時間はないので、突発的に自分の体が動くようになっているんですね。
私たちはなかなかボートに乗る機会がないので想像つきづらいのですが、ものすごい雨が降っているときに車を運転していることを考えてください。前がほとんど見えないと思うのですが、ボートの選手は常に前があまりよく見えていないんです。なぜなら水しぶきがすごい立っているから。
「ここのターン空いてるな」というときに、約80km/時でシートベルトなしで、体がむきだしの状態で全速力で突き抜ける、ということをやらないと勝てない、ということがあるんです。その勇気たるや、すごいことなんですよ。
2着3着の攻防にも注目
小林:1マークをターンすると1艇が抜けでる展開が多いんです。レースが進行するにつれて2着以下とは結構差がついてきます。そこから先はまた駆け引きになるんですよ。1番最初に走るボートというのは、先に何もいない。波が全然立っていない状態で、スキーで言えばだれもいないゲレンデを滑っていくように、すごく走りやすいです。2着以降の選手は前に選手が走っているわけですから、引き波と言うんですけど、波がある中を進むんです。そうなると当然ボートは操縦しにくくなりますし、プロペラも100%力を伝えられない。そこでライン取りが重要になってくるんです。
1周600mで直線は300mなんですが、直線を300m進むとまた180°転進しなければならないんですね。では今度どうやってターンしていこうかということで、2着3着が入れ替わったりするんです。2着3着の駆け引きはレース中にずっと続いているので、最後までドキドキハラハラしながら見ていただけるレースなんです、というのを意外と知らない方が多いんです。
「逃げ」「まくり」「差し」を覚えてもっと楽しく
ガジェ通:ターンのときのテクニックで、「まくり」「差し」というものがありますよね。ターンを見ている方はどう楽しんだらよいのかポイントを教えてください。最初のライン取りで選手の戦略が見えてくると思うのですが……。
小林:まず、一番内側のコースからそのまま先頭を走ってしまうのが「逃げ」です。
「差し」というのは、内側のボートがターンするときに、ターンマークとボートの間を空けてしまう。そのときに後ろのボートが先行するボートとターンマークの間に入っていきます。先行するボートの内側に入って、そのまま追い抜いて先に行ってしまう。これが「差し」です。
「まくり」というのは今度は逆で、外側のボートがスタート時に助走がつけられて、スタートラインからターンマークまで15mの距離の中でちょっと先に出られた。このとき、外側のボートはなるべく内側に行きたいんですよ。だからグーっと中に入ってきてしまう。このまま、内側のボートの頭を押さえながら先にターンマークを回っていく。これが「まくり」です。
ガジェ通:インの選手が先行していたら「逃げ」になるかもしれない。インの選手がうまく回れなくて内側に空きが出てしまうと、ほかの選手は「差し」に来る。外の選手がスタートがよくてインよりも先行していたら「まくり」が出る。
小林:そうです。レース場では“出走表”を無料で配布しています。「スタートタイミング」や「勝率」など予想に必要な情報が書かれています。最初は難しいんですが、「こういう選手が6人出るとしたらどういうレースになるかなあ」と想像して、それが思ったとおりになっていくと、またそれで面白くなっていくと思います。
スタートはここを見る
ガジェ通:初心者の方が『BOATRACE』を見るときに、スタートのルールが分かりにくいと思うのですが……。
小林:すごく分かりにくいです。
ガジェ通:決められた時間内にスタートラインを通る必要があって、そこをめぐる駆け引きがあるんですよね。そこを分かりやすく見るポイントというのはありますか。
小林:スタートの前に駆け引きがあるんです。ピットから6艇のボートが出てきて順番に並ぶところから既にレースが始まっていて、そこでどこの場所を取るかという駆け引きが始まるんですね。
選手がどのレース、どの枠順でピットからスタートするかはレース前日に決定します。ピットアウト後はコース取りが自由にできるルールです。たとえば6号艇(アウトコース)が一番インの1コースを取るにはいち早くコースどりをしなければならず、スタート時の助走距離が短くなってしまうというデメリットがあります。当然選手はみんなインコースを狙ってピットアウトすることになりますので、スタート直後に様々な駆け引きが行われるわけです。当然、1枠の艇が一番早くコース取りをできることになるので、初心者の方には“インコースが有利”ということで説明しています。
もうひとつ、スタートで何を見ればよいかというと、大時計なんです。これが0秒から1秒の間にスタートするルールなので、0秒より先にスタートを切るとフライング、それより遅いと出遅れになってしまいます。
大きな時計の12秒針がいちばん上に来た時点が「よーい、ドン」なんですよ。ここから1秒の間にスタートラインを通過しなさい、というルールです。ボートにはブレーキがありません。ハンドルとアクセルしかないので、勢いをつけるタイミングがすごい難しいんです。なるべく全速力でスタートラインを越えたいので、風や水面の状態を見ながら、今自分がスタートから何秒前でスタートラインから何m前のところにいるからこのタイミングでアクセルをふかせばいい、ということをずーっと考えながら動いているんです。そこが選手のテクニックです。
それは情報として公開されているんですよ。先程紹介しましたレース場で無料配布されている出走表に過去のスタートタイミングの平均が記載されています。「0.01」とか「0.10」とあるのですが、これは秒針が12時を回ってから何秒後にスタートラインを通過しているのかという数字です。非常に微妙な数字なんですが、ボートの距離にしてみると結構違うんです。
スタートを総括するとまずコース取り。なるべく内側を取りたいというコース取りから始まって、次にスタートタイミングのゼロに近いところを目指していかに全速力で通過するか。初心者の方には一番ここが分かりづらいので、いかに最初にスタートラインを越えるかということに、選手がいろいろ努力しているのが分かっていただければよいかなと思います。
女子だけの戦いに注目
ガジェ通:女子王座決定戦のお話をうかがいたいのですが、まず『BOATRACE』は男女の選手が一緒に参加できる競技であると。そこで特に女子選手は最近どういう活躍をしているのか教えてください。
小林:ボートレーサー約1500名のうち1割、約150名が女子レーサーなんです。女子だけでレースができるのは公営競技では『BOATRACE』だけで、お客様にも人気です。
『BOATRACE』では女子だけのレースもひんぱんに開催されています。女子王座決定戦はその最高峰のレースで、女子レーサーの中で一番強い人はだれかを決めるレースです。初心者の方は女子レースから入っても面白いかもしれません。150名前後だと意外と名前も覚えやすいと思います。
また、ボートレーサーは最低体重がルールで決められています。男性は50kg、女子は47kg。この体重より軽い選手は鉛の重りをつけて調整してレースを走っています。女子レーサーは体重が軽い分、直線でのスピードが出やすいんです。
52名で競われる女子王座
ガジェ通:女子王座決定戦にエントリーするのは何名の選手なのでしょうか。
小林:52名です。これは基準が決まっていまして、対象期間の勝率がよかった選手、女子リーグで優勝した選手、去年の女子王座に優勝した選手が出場できます。
ガジェ通:どういうスケジュールで勝ち上がっていくのでしょうか。
小林:ことしは2月28日から3月4日までの6日間、多摩川ボートレース場で開催されます。前半の4日間は予選です。5日目が準優勝戦、最終日が優勝戦です。予選の4日間レースで、52名の選手が“着順点”を競います。“着順点”は、1着10点、2着8点と着順によって点数が加算され、最終的には4日間の総得点数を出走回数で割った平均点で52名の順位をつけていくんです。
着順点上位18名は、5日目の準優勝戦3レースに出場することができます。準優勝戦は10レースから12レースです。各レースで2着までに入った選手が最終日の優勝戦12レースに出場することができ、ここで1着を取った選手が「女子王座」を獲得、賞金1000万円を手にすることができます。
ガジェ通:今回の52名の中で注目選手を教えていただきたいのですが。
小林:業界では、若手のボートレーサー約300名の中から基準を設けて『スター候補選手』を選出しています。その最高峰が『全国スター候補選手』。2012年の全国スター候補選手は3名、そのうち2名が女性なんです。その一人である平山智加選手が出場するので注目してほしいですね。同年代の選手を見るのもよいですし、ビジュアルで見るのもよいですし、それぞれの思いいれで見ていただいてよいと思います。
52名いるといろいろなキャラクターがいるので……ビジュアル面で人気があるのは鎌倉涼選手、あとはふたごの池田浩美・明美選手、勝率ダントツなのは45歳の山川美由紀選手、最年長では鵜飼菜穂子選手で52歳。昨年の優勝者である田口節子選手も出場しますし、会場となる多摩川ボートレースが地元の平田さやか選手も注目のひとりです。
ネットで参加できる『BOATRACE』
ガジェ通:ネットで舟券を購入できるんですよね。レース中継もネットで見られるんですか?
小林:はい。インターネットバンクに口座があれば、登録してすぐ買えるんですよ。オンライン上の登録画面で申し込めばすぐ、100円から購入できます。これはパソコンだけでなく、スマートフォン、携帯電話などからも投票可能です。ネットバンクを使っている方であれば、全国すべてのレース場の券を買えて払い戻しもすぐにできます。パソコンや電話を通じて舟券を購入していただいているお客さま向けの『TELEBOAT』サイトを開設していますのでぜひ利用してください。
レースは、9時前から始まるモーニングレースから、20時半ごろまで開催しているナイターレースまであり、会社へ行く途中や昼休み、会社が終わってから飲みながらでも参加していただくこともできます。ひょっとしたら飲みながらみんなで予想して、当たったら飲み代が無料になってしまうこともあるかもしれないですよ。
ライブ中継はパソコンであれば『BOATRACEオフィシャルウェブ』からリンクするレース場のサイトから、無料で見ることができます。アーカイブも見られますよ。日本レジャーチャンネルの有料サービスをご利用いただければ、携帯電話からの視聴も可能です。
『TELEBOAT』ウェブサイト
http://www.teleboat.jp/[リンク]
ガジェ通:女子王座決定戦もネットで見られるんですね。
小林:見られます。『BOATRACEオフィシャルウェブ』から開催中のレース場をクリックするとそのレース場に切り替わりますのでご覧ください。
ガジェ通:なるほど。ネットと相性がよいので、読者にもなじみやすそうですね。もうひとつ読者になじみがありそうな話で、ゲームセンターのメダルゲームがあるんですよね。
小林:はい。セガの『StarBoat』というものがあります。著名なレーサーが既に登録されているので、そのレーサーになりきってレースをゲーム感覚で楽しむことができます。「レーサー」の育成ゲームに近いですね。
『StarBoat』(セガ)
http://starboat.sega.jp/[リンク]
『BOATRACE』は当たりやすい?
小林:『BOATRACE』は公営競技の中でいちばん当たりやすいんです。理由は簡単で、『BOATRACE』って6艇しかないので組み合わせが少ないんですよ。ローリスクミドルリターンという感じで、当たる確率が高いんです。『2連単』は、1着2着を着順どおり当てる方法で30分の1。いちばん配当が高い『3連単』というは、1着2着3着を着順どおりに当てる方法で120分の1。他の公営競技と比較すれば、断然当たりやすいですよ。
くじ感覚で楽しむお客さまもいれば、しっかりデータ分析しているお客様もいます。なかには、資産運用の一環として購入されているお客さまもいますよ。
コンピュータが好きなお客様にも、『BOATRACE』はぴったりです。データ分析がやりやすいんです。ボート、エンジンの勝率、選手の勝率、選手のコース別の勝率などに加え、レース場によってもコースによる勝率が違うので、これらの要素を複合して分析することができるんです。
初心者の方には『2連単』をおすすめしています。1着のボートを決めて、2着すべて流しても5通り、100円ずつ買って500円なんですよ。配当が500円以上ついたらプラスですから。1着だけ考えればいいんですよ。あとは2着でだれが来ても当たりですから。たまに500円切るときもありますが、当たったときは楽しいですよ。たった100円の券ですけど、スタートのときはドキドキするんです。ただ見ているときと、100円でも券を買ったときでは見方が全然ちがいます。是非、舟券を購入してみてくださいね。
『BOAT RACE official web』
http://www.boatrace.jp/[リンク]
図3~5、7~8は『BOAT RACE official web』より引用、図9~10は各ウェブサイトより引用
宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
ウェブサイト: http://mogera.jp/
TwitterID: shnskm
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。