異彩漫画家・桜壱バーゲンが語る“あの頃の”塚本幼稚園

メディアで連日報道される森友学園問題。その大きなきっかけとなったのが「園児に教育勅語を唱えさせる」「運動会の宣誓で“安倍総理ガンバレ!”と言わせる」、さらに園児への虐待疑惑まで浮上した塚本幼稚園だ。あの可愛らしい水兵風の制服もすっかり見慣れてしまったが、まさかの人が「子供の頃に塚本幼稚園に通っていた」と『Twitter』で告白していた。

今問題になってる大阪の塚本幼稚園は俺が通ってた幼稚園だけど当時は保育園くらいの小さな幼稚園で教育勅語なんか覚えさせられた記憶ないなぁ…やだな〜俺の思い出の幼稚園が汚されて(-。-;

数々の実話誌での体験ルポで知られ、そして近年では『漫画ルポ 中年童貞』『絶望の犯島』がスマッシュヒットした漫画家・桜壱バーゲン先生( @b_sakuraichi )が、まさか塚本幼稚園の卒園生だったとは! 「もう48年も前の話だから覚えてないですよ~」とおっしゃるところを無理矢理お願いして、当時の塚本幼稚園についてうかがってみました。

「俺もおもらしで謝罪させられてたかも…」

--メディアを騒がしている塚本幼稚園ですけど、桜壱先生はいつ頃「あれ、卒園した幼稚園が出てる!」と気づいたんですか?

桜壱 正直、幼稚園の名前とか忘れてたんですよ(笑)。それが連日のように塚本幼稚園塚本幼稚園って出るから、「あれ? 聞いたことあるぞ? これ行ってたところじゃないか」って記憶の片隅から引き出された感じで。

--もう完全に消えてたんですね。

桜壱 俺が通ってたのが48年前ですからね。それにニュース映像で出て来るじゃないですか、「安倍首相頑張れ!」みたいなやつ。そこに出てくる広いグラウンドとか、昔はなかったから。本当小さい保育園みたいな感じだったんで、自分が通ってた幼稚園とイコールにならなかったんですよね。教育勅語とかそんな教育受けたことなかったし。受けてたらいまだに覚えてると思いますよ(笑)。

--では、もう当時は普通の幼稚園だったと。

桜壱 俺が行ってた頃は、あの籠池のおばはん(籠池諄子副園長)のお父さん(森友寛氏)が園長で、もう普通の幼稚園でした。籠池夫妻が運営に関わってからですよね、今みたいになったのは。

--もう当時の記憶は全然ない感じですか。

桜壱 幼稚園の頃とかそんな覚えてないですよ~。その頃の思い出ってふたつしかないんですよね。4歳か5歳ですかね、幼稚園に行くことを親からまったく知らされてなくって、母親に着替えさせられて、「今からここ通うから!」みたいなの言われて「通わなきゃいけないのか……」みたいなの思った、てのは一番古い記憶なんですよね。あともうひとつ、教室の中で先生の話聞いてた時に、おもらししちゃったんですよ。

--幼稚園ならありますよね。

桜壱 それで脚を閉じてなんとか垂らさないようにして。そしたら周りにバレなかったんですよ。その後はどうしたのか覚えてないんですけど……自然に乾いたのかな(笑)。そしたら今の塚本幼稚園のニュースで、おもらししたら「申し訳ありません!」て言わされるとか、汚れたおむつ持って帰らされるって話じゃないですか(笑)。それ聞いて「何て恐ろしいんだ!」って思いましたね~。

--今だったらそのおもらしで謝罪させられてた!

桜壱 そうなんですよ。その2つしか思い出ないんですけどね。本当、テレビで見たときは敷地の広さとかぜんぜん違うんで、気づかなかったんですよね~。その後で引っ越したんじゃないかなあ……(注・平成18年に現在の場所に移転)

かつて塚本幼稚園周辺はガラの悪い下町だった


--正直、今回桜壱先生に取材に行くまで、塚本幼稚園って大阪とは知ってましたけど、具体的な場所は知らなかったんですよね。あらためて調べてみたら、最寄り駅でいえばJR東海道本線の塚本駅、あと阪急の十三駅にも近いんですね。

桜壱 淀川区と西淀川区の境あたりで、当時はもう工業地帯です。俺が住んでた頃は1日3回くらい光化学スモッグ注意報が来るような、今の中国みたいな感じですよ(笑)。

--では周りに住んでるのも工場の人とか?

桜壱 淀川挟んで梅田とかなんで、色んな人が住んではいましたけど、下町っちゃ下町ですね。まあ、ガラは悪かった(笑)。

--決して上品な街ではなかったと。

桜壱 浮浪者もいっぱいいたし。すぐ近くに川があるわけじゃないですか? リアルに橋の下に住んでましたからね。小学校の頃とか、「浮浪者からエロ本取ろう!」って言って、ひとりがワーワーはやし立てるんですよ。それを追いかけていった隙に、他がエロ本を盗む(笑)。もうろくでもない小学生でしたね~。

--そんなヤンチャな小学生時代を。

桜壱 ヤンチャって言ったらもっとひどいのがいて、学校にヤクザの息子とかいて、俺ら小4でそいつは小2なのに「ウチの親父はヤクザやぞ!」って上級生を脅してくるんです(笑)。そういうのが学校に1人2人じゃないんですよ。

--不良よりタチが悪いですね!

桜壱 ただそれでもウチの小学校はまだマシで、もっとそういうのがゴロゴロいる小学校とか淀川区には他にあって。すぐ喧嘩ふっかけてくるんですよね。小学生なのに声にドスが効いてて嫌なんですよ(笑)。

--淀川区バイオレンス過ぎます!

桜壱 あと下町の思い出としては、親が電気屋やってたんですけど、裏が飲食街で店に遊びに行くと「あそこのお好み焼き屋で飯食うときな」って何百円かもらうんですよ。それでお好みやきか焼きそば食べるんですけど、そのお好みやきがホンットに美味しくて。いまだにそれを抜くのは食べたことない。子供の時に食べた思い出のイメージもあるんだろうけど、それにしても越えるものがない。


--リアル大阪下町グルメですね。

桜壱 あとホルモン焼き屋さんもあって。一本40円か50円くらいの。当時のホルモンって、本当のホルモンですよ。金玉とか。

--「ホルモン」の名前って「肉のいらない部分=放る(捨てる)もん」から来てる、て説ありますけど、まさにそんな部分の。

桜壱 それもめちゃくちゃ美味かったな~。でも下町いい話ってそれくらいですよ。

--話聞いた感じだと、当時の先生の住んでた所ってリアル『じゃりン子チエ』ですね(笑)。

桜壱 あ~、でもあれは俺らが住んでた頃より上品ですよね(笑)。もっとえげつない感じです。


--では最後に「塚本幼稚園にこの先どうなってほしい」という気持ちはありますか?

桜壱 正直、自分が行ってたころの園とはもうぜんぜん別物なんで、思い入れはあんまりないんですよ(笑)。ニュースが起きると見ちゃうけど、自分が卒園したからというよりは単純に面白いなって(笑)。ただ、あの感じで小学校が出来てたら、軍国主義教えてたんでしょ? もっと大きい子に。体育の時間に竹ヤリとかやってそうですよねえ。そんな子が大人になってたらどうなってたんでしょうね……。

桜壱バーゲン先生の言葉から映し出される、かつての塚本幼稚園とその周辺。それは今メディアで映し出される言葉や規則で縛られた幼稚園の姿とは真逆の、フリーダム過ぎる光景だった。先生によると「5年前くらいに久々にその辺行ったんですけど、全く変わってましたね。ボロボロの長屋みたいなのが並んでたのが全部崩されて」とその光景はまったく変わってしまったという。何かと煩わしい現代ではあるけども、小学校入学前くらいは政治や社会のことなど気にせずのびのび過ごさせていいのでは、というのは甘い考えだろうか。

桜壱バーゲン:醜いおっさんとヤバい犯罪者を描かせたら日本一と名高い漫画家。中村淳彦原作の『漫画ルポ 中年童貞』(リイド社)、櫻井稔文名義の『絶望の犯島-100人のブリーフ男と1人の改造ギャル-』(双葉社)が好評発売中。

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