ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

「妻じゃないから不倫じゃない」? 身内同士が複雑に絡み合う三角関係の裏側~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

DATE: BY:
  • ガジェット通信を≫

源氏33

「妻じゃないから不倫じゃない」モヤッとした理由で職場復帰

源氏が京を去る直接の原因となった朧月夜は、厳しい監視のもと、自宅謹慎をしていました。自宅で密会中の現場を実の父に見られるという出来事は、世間を賑わす大スキャンダル。今だったらスポーツ紙の一面を飾り、マスコミも殺到するような大騒ぎでしょう。当然、尚侍(女官長)の仕事も自粛しています。

「全部私のせいよ……」朧月夜は自分を責め、暗く泣き沈んで暮らします。現場を押さえて激怒したわりに、この娘が可愛い右大臣は見ていられません。かわいそうになって、太后や朱雀帝に許しを請いました。

その結果、「彼女はそもそも尚侍だ。尚侍は公務員であり、女御や更衣といった妃の立場で起こしたスキャンダルではない。よって、反省したのであれば復帰させてもよい」という結論に。正式な妻じゃないから不倫じゃない、と言われているようでなんかモヤッとしますが、ともあれ朧月夜の復帰が決まりました。

「来世でも愛すると誓う」気弱な男の意外な告白

復帰後、帝は以前にもまして彼女を寵愛し、誹謗中傷もものともせず、側から離しません。もともと源氏との関係は黙認していたものの、いざはっきりと裏切られるとさすがに…と思っていた帝ですが、なんだかんだでやっぱり朧月夜にゾッコンラブ。裏切られようが、弟のことを好きだろうが、やっぱり好きだ!!

お母さんの太后や、おじいちゃんの右大臣の顔色ばかり伺って、なに一つ自分の思い通りにできない帝。彼からすると、朧月夜の自由奔放さ、やりたい放題ぶりは一種のあこがれなのかもしれません。婚前交渉に浮気、その場で考え、その場で動く。朧月夜の行き当たりばったりな行動はどれも、帝が逆立ちしたってできないことばかりです。

一方、赦されてありがたいとは思いつつ、朧月夜は復帰に気が進みませんでした。当たり前ですが、他にいる帝の妃たちはじめ、あちこちからバッシングされて針のむしろ。事あるごとに叩かれます。何より、いつも考えているのは帝のことではなく、源氏のことばかりです。内緒でこっそり手紙のやり取りもしています。

帝も、彼女の胸の内を占めているのが源氏だと知っています。ある日、宮中での音楽会があった時、「彼がいなくて寂しいね。まるで光を失ったようだ。父上(桐壺院)が「源氏と仲良く助け合うように」とおっしゃったのに、結局守れなかった。きっと罰を受けるだろうな」。困ったことに、帝は帝で源氏が大好き。遺言を守れず、弟を助けられなかった罪悪感に苦しみます。

「最近は世の無常が身にしみて、長く生きようとも思わない。もし私が死んでも、須磨に行った人との別れほどは悲しんでくれないんだろうね。残念だよ。よく、恋人たちは「生きている限り」と誓うが、私はそんなものじゃない。来世でも、あなたを愛すると誓うよ」。

帝は「恋ひ死なむ後は何せむ生ける日のためこそ人の見まくほしけれ」恋に死んで何になる、生きてるからこそ、好きな人に逢えるんだろ!という万葉集の歌を引用しています。帝は今生だけでなく、生まれ変わった来世でもこの愛は変わらないと誓います。口説き文句とは言え、ただ気弱なだけかと思いきや、意外に押してくる朱雀帝。なかなか萌えます。

朧月夜はずっと耐えていましたが、このひと言で涙腺崩壊。「ほら、その涙は誰を思って流すんだ。私か、源氏か?」帝はこんな風にちょっと責めたりしながら、朧月夜をいじります。彼女としては、帝が心からそう仰って下さるのがありがたく、申し訳なく、もったいない。まあ、このセリフを聞いて泣かない女がいたらお会いしてみたいですね。

「嫉妬するにはバイタリティがいる」穏やかな三角関係の裏側

「源氏のことは恋しい、でも帝は私を愛して下さる…」。不実だけど魅力的な源氏か、誠実で穏やかな朱雀帝か。モテモテの朧月夜が大いに悩む中、三角関係がいよいよ本格化、といったところです。

一夫多妻の世界では、1人の男性に対して複数の女性が当たり前なので、1:2の構図がなかなか生まれにくいです。そのため、三角関係の話はだいたい”男と女と男”パターン。逆に”女と男と女”パターンは、六条と葵の上のように、力のある女性が突出した時に初めて起こります。

源氏と頭の中将も、源内典や末摘花などを争いましたが、それはあくまでゲーム的なもの。比べて、”朱雀帝→朧月夜→源氏”の三角関係は本気モードです。でも本気とは言え、取っ組み合いのケンカもなければ、痴情のもつれの殺人も起こらない。その背景には「他の誰かを好きになることくらい、あるよね…」という諦めが感じられます。

浮気されたら嫉妬する?しない?嫉妬されると嬉しい?嬉しくない?など、この手の論争は尽きませんが、一つ言えるのは「嫉妬するにはバイタリティがいる」ということ。

自分の愛する人がどこかで他の誰かと…という想像をたくましくし、あれこれ考えて怨恨を募らせるのは、相当疲れることだと思います。生霊になるほど源氏を愛する六条は、ある意味ものすごくパワフルな人なのです。

「誰かと争うよりは穏やかに過ごしたい、そのためには多少不本意でも、長いものに巻かれ、強い人たちに振り回されることもやむを得ない」というのが、朱雀帝のスタンスです。だからといって朧月夜を諦めたりはしません。激しさよりも忍耐こそが彼の武器。3人の間は穏やかですが、妥協のない恋愛模様が描かれています。

千年も変わらない、解決しづらい身内問題の呪縛

帝は続けます。「跡取りになる男の子がないのが残念だ。父上のご遺言通り、皇太子を実の子のように思ってはいるのだが、思い通りにならない事が多くてね…」。

帝は源氏とも、皇太子とも仲良くしたい派ですが、太后や右大臣がそんなことは許しません。「遺言に背いてしまった」とか「源氏がいなくて寂しい」とか、彼のクヨクヨはストレスになり、どんどん溜まっていく一方です。

強情な右大臣ファミリーの血を引いているとは思えない、気弱な帝。祖父や母とはまったく正反対ですが、こんなファミリーも結構いそう。さらに、帝と朧月夜は年上の甥と年下の叔母という関係なので、どっちを向いても血がつながっています。気の毒なほどがんじがらめです。

太后と朧月夜は姉妹ですが、自信家なところ、派手好きなところは似ているものの、性格は異なります。一方はお父さんの望む通り、エリートコースを歩み続けた”優等生のお姉さん”。一方は”言うことを聞かない気まぐれな妹”。帝はこの姉妹の間で振り回されているとも言えます。

祖父と母と叔母、そして亡父と異母弟。帝を悩ます問題はいつも身内のことばかりです。家族の問題がとても難しく、解決しづらいのは、千年後の今の時代も同じですね。

帝の家族の呪縛は解けることなく、後年は娘のことで非常に悩みます。この娘が源氏の老後を真っ黒に塗りつぶす、とんでもない存在になるのですが…。

簡単なあらすじや相関図はこちらのサイトが参考になります。

3分で読む源氏物語 http://genji.choice8989.info/index.html
源氏物語の世界 再編集版 http://www.genji-monogatari.net/

(画像は筆者作成)

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 相澤マイコ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

ガジェ通ウェブライターの記事一覧をみる ▶

記者:

ウェブサイト: http://rensai.jp/

TwitterID: anewsjp

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。