これからの都心鉄道[5]延伸計画の実現で何が変わるのか?

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これからの都心鉄道[5]延伸計画の実現で何が変わるのか?

実現するかどうかは別として、世間では数多くの鉄道の延伸計画が取りざたされている。例えば、常磐新線(つくばエクスプレス・秋葉原~東京)や東京8号線(有楽町線・豊洲~住吉)の延伸計画がその一例と言えるだろう。もしも延伸計画が実現すれば、交通利便性の向上や街の発展に大きく影響するはず。そこで、鉄道ジャーナリストの渡部史絵さんに詳しく聞いてみた。【連載】これからの都心鉄道

住まい選びに大きな影響を及ぼす通勤事情。今後数年~10年後などの未来に向けて、都心の鉄道がどんな風に変わるのか? 路線ごとの便利になるポイントや特徴を紹介します。

都心へのアクセスが向上 相模鉄道の大きな変化

さまざまある延伸計画だが、「私が特に注目しているのは、“相模鉄道(以下、相鉄)、JR、東京急行電鉄(以下、東急)の直通線”です」と渡部さんは言う。

「この直通線は、相鉄線西谷駅を経由し、新たに設置する羽沢駅と東急東横線日吉駅を結ぶ連絡線です。完成すれば、相鉄線とJR、東急線との相互直通運転が開始されます。そして、各鉄道の利便性が向上します。さらに東急線の場合、東急線が相互直運転を行っている東京メトロ南北線や埼玉高速鉄道線との相互乗り入れも可能になります。現在、相鉄、東急、東京メトロともに、相鉄線との三社相互直通を発表していませんが、将来的には十分考えられる構想だと思われます」(渡部さん、以下同)

では、この3つの路線が直通になることで、利用者であるわれわれの生活は何が変わるのだろうか?

「東京を貫通し、神奈川県と埼玉県を結ぶ新たなルートがまた一つ増え、利用者の選択の幅が広がるわけです。さらに、日吉駅から東横線系統に乗り入れた場合は、東京メトロ副都心線を経由して西武鉄道・秩父線の飯能駅や東武鉄道・東上線の森林公園駅までの運行も考えられます」

この計画が実現すれば、その効果は相鉄・JR・東急の3社だけでなく、東京メトロや東武鉄道、西武鉄道にも波及する。渡部さんによれば、「現在、相鉄、JRの直通線は2019(平成31)年度、相鉄、東急の直通線が2022(平成34)年度の完成を目標に、工事が進められています」とのこと。非常に楽しみな延伸計画だが、実現まではもう少し時間がかかりそうだ。

地下鉄7号線の延伸計画とは?

渡部さんは、相鉄・JR・東急の相互直通以外でも、注目している計画があるのだそう。それは、地下鉄7号線の延伸計画。と言っても、多くの人にとっては「地下鉄7号線ってどこ?」というくらいの認知度だろう。聞き慣れないこの7号線について、渡部さんが説明してくれた。

「7号線は、目黒~赤羽岩淵を経由し、浦和美園駅までを結ぶ東京メトロ南北線と埼玉高速鉄道線(SR)の総称です。東京メトロが運営する南北線を延長する形で建設され、赤羽岩淵~浦和美園駅間は、埼玉高速鉄道線として運行しており、東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道線、東急目黒線の3路線が相互直通運転をしています」

渡部さんは続けて、こうも話す。

「元々この区間は、都市交通審議会答申の7号線にあたる部分で、計画ではさいたま市の岩槻(いわつき)や埼玉県・蓮田市の蓮田(はすだ)までの延伸が計画されていますが、現在のところは浦和美園までの暫定開業となっています。現在、早期に岩槻までの開業を目指し浦和美園駅~(仮称・埼玉スタジアム駅)~岩槻駅の区間およそ7.2kmの予定線で計画が進められています。岩槻駅まで開通することで不合理な現在の盲腸線(ほかの路線に接続していない行き止まりの路線)と別れを告げ、本格的に首都圏のネットワークの一部へと成長が期待される路線です」

7号線が岩槻駅まで開業することで、現在は東武野田線による東西のアクセスだけだが、新たに南方向への軸が出来上がるそう。というのも、東武鉄道・野田線(東部アーバンパークライン)との接続ができ、野田線沿線から東京メトロ南北線を経由すれば、都心方面へのアクセスが格段に便利になるのだとか。【画像1】浦和美園~岩槻間(約 7.2km)については、埼玉県とさいたま市が共同で調査・検討を行っており、「埼玉スタジアム駅(臨時)」、「中間駅」、「岩槻駅」(いずれも仮称)の3駅の新設が検討されている(さいたま市平成26年度 地下鉄7号線延伸に関する報告書より抜粋)

【画像1】浦和美園~岩槻間(約 7.2km)については、埼玉県とさいたま市が共同で調査・検討を行っており、「埼玉スタジアム駅(臨時)」、「中間駅」、「岩槻駅」(いずれも仮称)の3駅の新設が検討されている(さいたま市平成26年度 地下鉄7号線延伸に関する報告書より抜粋)

延伸計画が実現されたらどこの街が発展する……?

これらの延伸計画の実現によって、周辺の街が発展することは、住まい選びにも影響があるだろう。延伸の恩恵を受け、発展が予想される街はあるのだろうか? 「相鉄線のいずみ野線沿線や7号線の浦和美園以遠は、新しい街づくりが展開されるはずですので、目が離せない地域になりそうです」渡部さんはこう話すが、その理由は?

何でも、相鉄・JR・東急の直通線が開業されれば、相鉄・JR直通線の二俣川駅―新宿駅が44分。また、相鉄・東急直通線の二俣川駅―目黒駅が最短38分。どちらも現在の所要時間より15分前後の短縮になるという。渡部さんが言うには、時間短縮は地下鉄7号線も同様だそう。

「運行が開始されれば、岩槻~赤羽岩淵駅の所要時間は約26分、南北線の目黒までは約66分で結ばれる予定です。現在、浦和美園駅付近はスタジアムを除けば、都心からそう遠くはない場所でありながら、のどかな地域になっています。しかし、7号線が開業すれば沿線の開発が行われ、都心まで40分程度で到達できる住宅地に発展する可能性は大いにあるでしょう」

都心部への交通利便性の向上に加え、周辺地域の整備や再開発が進めば、「暮らすこと」と「通うこと」どちらも便利になるだろう。とはいえ、これはあくまでも“実現すれば”の話。国土交通省の交通政策審議会では、事業性や採算性に疑問を呈する声もあり、まだまだ課題が山積みだ。今後の動きに注目したい。

やはり、都心部へのアクセスは住まい探しの重要なポイント。これまではあまり興味がなかった地域も、延伸計画が実現すれば一躍候補に!? 今回紹介したもの以外にも、延伸計画はまだまだたくさんある。住まい探し中の人は、参考程度に覗いてみるのも良いのではないだろうか。●取材協力/鉄道ジャーナリスト・渡部史絵(わたなべしえ)氏

2006年より公式に鉄道関係の活動を開始。鉄道の有用性や魅力を発信するため、鉄道に関する書籍の執筆や監修に日々励む。月刊誌や新聞等の連載や寄稿など執筆活動を主体に、国土交通省をはじめ、行政や大学、鉄道事業者にて、講演活動等も多く行っている。著書に『首都東京 地下鉄の秘密を探る』 (交通新聞社新書)、『鉄道なぜなにブック』(交通新聞社児童書)、 『譲渡された鉄道車両』、『路面電車の謎と不思議』(東京堂出版)、など多数。

渡部史絵 公式ブログ●参考

・鉄道・運輸機構 東京支社 神奈川東部方面線だより(平成28年3月発行)

・発表資料 神奈川東部方面線事業に関するお知らせ(平成28年8月26日)

・相模鉄道 公式HP

・都市鉄道利便増進事業 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線 公式HP

・7号線「さいたま市」公式HP

・さいたま市地下鉄7号線延伸事業化推進期成会 公式HP

・さいたま市地下鉄7号線延伸事業化推進期成会 会報誌「SUBWAY NEWS LETTER7」
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/10/120257_main.jpg
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