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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#32 528Hz

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この季節になると、野外フェスの話題が交わされることが多い。その都度、音楽の力の素晴らしさを感じるのだが、実は私はただの一回も行ったことがない。何故かは分からないが、地元の沖縄で開催されるフェスにも参加したことがないので、地理的な問題ではないだろう。いい加減そろそろ縁があってもいいとは思っているのだが。

ギリシアの哲人アリストテレスは「詩学」の中で、鬱積したものを解放し魂を浄化させるカタルシスという概念を語っているが、音楽にはカタルシスへと導く力があって、それは宗教的な体験と言うこともできる。そのカタルシスを屋外の大自然のエネルギーに包まれて集団で体験するというのは、きっと大きなものだろう。

その一方で、一人で静かに音楽と向き合うのも大きな楽しみ方だろう。「音楽は魂を整える」とピタゴラスは言っているが、目を閉じてリラックスしながらも静かに集中して聴く音楽には、魂に深く深く染み込む力がある。美しい音楽を耳にすると、つい目を閉じてしまうのも、魂の調整へと向かう身体的な反応かもしれない。

カタルシス、調和、その混合、いずれにしても音楽には、魂のバランスを取るヒーリングの力があることは、多くの人が認めることだろう。

そして、その音楽を支える仕組みとなる音階には基準となる音があって、ドレミファソラシドのラの音が基準音として通常440ヘルツに合わされている。ヘルツとは一秒間に空気が振動する回数の単位で、現在では国際的にラの音がこの440ヘルツと定められている。ラよりも高い音域は、440ヘルツよりも高い周波になり、逆に低い音域は低い周波になる。

基準となるヘルツは、実は時代や地域によって様々だったのが、現在では国際的に440ヘルツに指定されている。世界には無限に音があるのに、基準を作るのは考えれば不自然なことで、実際モーツァルトの時代には、ラは422ヘルツであったと言われている。この440ヘルツ設定に関しては、陰謀論的な見方から様々な憶測が囁かれているが、ここではそれには触れないでおく。深すぎるので。

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私の友人の音楽家たちからは、以前から528ヘルツの噂を聞いていたのだが、この周波数は愛の周波数と呼ばれ、DNAの修復力があるとされていることでも有名だ。この528ヘルツはラを440ヘルツで設定すると、半音を含めてドレミファソラシドのいずれの音からも外れてしまうことになっている。つまりオーディエンスの耳に届く以前に存在を消されてしまうのだ。消えた528ヘルツの音と、基準を440ヘルツに設定したあたりに陰謀論が語られていて、それはそれで面白い話なので、興味がある方は是非どうぞ。権力者は愛の周波数を聞かせたくないようです。
 440設定で作られた音楽がほとんどの現在において、528ヘルツを耳にすることはほぼ皆無で、わざわざこちらから出向いて体験するしかない。幸い528ヘルツ関係の書籍も多く出ているので、そのうちの数冊を読んだり、インタネーットで試聴したり、itunesで買ったりして、実際に528ヘルツに数ヶ月浸ってみた。
 いろいろ聴いた中で、CDに録音された音叉によるトーンだけの音は、チーンと鳴る仏壇前のリンのような感じで、いい音なのだが中々浸りづらい。瞑想やヨガをしている人には問題ないだろうが、一般的には水の音やクラシック音楽と共にあるものの方が親しみやすいだろう。
 その528ヘルツの音を朝昼晩を目安に、日に数度、一度に10分ほど毎日聞き続けた。
 結果は個人的な感想でしかないのだが、穏やかな状態でいられる、というのが大きな効用だと思えた。
 穏やかでいること。実はこれは全てにおいて大切なことである。世の中にある全てのヒーリングが、結局ここを目指していると言ってもいいだろう。逆に言えば、様々なヒーリング方法が存在し、必要とされているという事実は、穏やかで居続けることがどんなに難しいことかを語っている。不穏な状態は様々な病気の原因になる。
 しっかりと集中して528ヘルツを聴いた後では、入れ替わったようにすっきりとして、生命力が増した気になり、澄んだ気持ちで世界を見渡せるようになった。だが、仕事や些事をこなしているうちに、その感覚も消えてしまう。そのタイミングでまた休憩をとって聴く。すっきりする。また失せる。再び聴く。こんな感じで繰り返してみた。時には聴くことを忘れてしまうこともあったが、聴けば確実に心が落ち着いて潤うのが実感できた。

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