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夕方に微笑んで咲く白い花……まるで天使のような彼女~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

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皆さんは夕顔の花を見たことはありますか? 朝顔や昼顔とはまた少し違う趣のある花です。今回は夕顔の花の縁で出会った、ふわふわとした優しい天使のような女性『夕顔』のエピソードを紹介しましょう。

白い花の微笑む垣根と、謎の女

源氏が六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)の元へ通っていた夏のある日。通り道の五条に住む、病気の乳母を見舞いました。小路に民家が立ち並ぶ、一般庶民が住むエリアです。

なかなか家の門が開かないので、源氏が周りの様子など見回していると、隣の家に若い女たちの姿。垣根には白い花が微笑むように咲いています。知らない花です。「あの花は?」「夕顔という花で、こうした家の垣根に咲きます」。源氏は一房取って来るように命令します。

家来が花を取っていると、可愛らしい少女があらわれて、香を焚きしめた白い扇をわたしました。「これに載せてどうぞ、頼りない花ですから」。なかなか粋なはからいだ、と思っているとやっと門が開き、源氏は乳母を見舞います。

幼いころに母や祖母と別れた源氏にとって、乳母は特別な人でした。「ばあや。元気になって、私が出世するのを見届けておくれ」。乳母は涙を流して喜びました。「源氏はおばあちゃんキラー」と田辺聖子先生も仰っていましたが、おばあちゃん子だったせいか、源氏はお年寄りにはとても優しいです。

見舞いの帰り、さっきの白い扇が出てきました。美しい字でラフに「あなたは源氏の君ではありませんか?」と言うような和歌が書いてあります。女の方から何か言ってくるなんて! 源氏はワクワクして返事を持たせ、「一体どんな女だろう?惟光(これみつ)、調べてくれ」。

乳母の子の惟光は、「また悪いクセが出たよ、うちの母ちゃんの見舞いに来てくれたんじゃないのかよ」と不満に思って、「看病が忙しくて、よく知りませんね」と冷たく返しますが、本格的な調査に乗り出します。今まで何の興味もなかった五条の小路が、源氏にとって急に興味深い場所になりました。

身辺調査から後始末まで!探偵業は惟光におまかせ

惟光は源氏の乳兄弟で、源氏のよき理解者であり、忠実な部下です。あれこれ源氏の世話を焼き、女性の身辺調査から浮気の後始末まで、なんでもやります。

早速、惟光から調査報告が上がってきました。あの家主の家族とは別に、夏前あたりから一時的に仮住まいをしている女主人と若い女房たちがいる。身分を明かさないようにとても気を使っているらしく、詳細はなお不明。

「もうちょっと秘密がわからないものかと思い、文を送ったらすぐに返事が戻ってきました。なかなかよい女房がいそうです」。源氏は「もっと言い寄って、女主人の身元を突き止めてくれ」と命じます。惟光はうまく女房を落とし、源氏が女主人に通う緒をつけることに成功。

本命の女性を落とす場合、男の方(家来・もしくは自ら)がまず、彼女に仕える女房といい仲になり、手紙を取り次がせたり、情報収集をしたりする。そして頃合いを見て彼女の元へ案内させる、というやり方があります。まさに『将を射んと欲すればまず馬を射よ』といったところ。

この場合、場所があまりにも庶民的なので、惟光は源氏の代わりに女房と通じたわけですが、平安時代の恋愛戦略ってスゴイな、とあらためて思います。

惟光は源氏と同じお乳を飲んで育っただけあり、家来というより友達感覚な部分もあって面白いです。

源氏がこれほど興味を示すのを「まあ、これだけイケメンなんだから、恋愛に興味がないほうがおかしいよな。オレも女の子は好きだし…。でもご身分がら、もう少し自重してくれるとこっちは助かるんだけど。」と思っています。

年上の美しきマダム、六条御息所との関係

町家の粗末な夕顔の家と対照的に描かれるのが、源氏の恋人・六条御息所の大邸宅です。

六条御息所は前皇太子(桐壺帝の兄弟)の妃だった人で、皇女を一人生んでいます。皇太子は即位しないまま亡くなったので未亡人となり、今は皇女とともに、実家の六条邸で暮らしています(御息所は、皇子・皇女を生んだ妃に対する尊称)。

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