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アシフ・カパディア監督『AMYエイミー』インタビュー

Vodafone Summer Series, Somerset House, London, Britain - 20 Jul 2007

 

(c)Rex Features

数々のヒット曲を生み出し、グラミー賞を受賞。27歳にして突然逝世したエイミー・ワインハウスのドキュメンタリー映画『AMYエイミー』が、没後5年を迎える今年公開される。破天荒なイメージが先行する彼女が、恋愛に悩んだり、家族や友達との時間を大切に過ごしていた素顔、さらに名曲が生まれた背景を、その楽曲とともに改めて振り返る本作は、アカデミー賞をはじめ海外にて30冠以上の映画賞を獲得。アイルトン・セナのドキュメンタリーも手がけるなど注目を集めるアシフ・カパディア監督に、制作の過程を聞いた。

 

──エイミーとは生前どんな関係だったのでしょうか?

アシフ「直接の接点はなかったんですけれど、僕にとって彼女は非常にパーソナルな存在でした。僕も彼女と同じように、ロンドン子なのでね。彼女はユダヤ人だったけれども、僕はインド系ムスリム人で、住んでいる場所も近所だったんです。生まれ育った環境が手に取るようにわかりますしね。ただ、60、70年代ならまだしも、どうして今この時代において麻薬に溺れる人がいて、それを責任をもって対処する人間がいなかったんだろう、どうしてこんなことが起きてしまったんだろうという疑問が頭をもたげてきたんです。それが、僕と彼女を結びつけるきっかけでした。どちらかというと、元々彼女のファンだったというわけではなかったんです。しかし、『AMY エイミー』を制作したことで、彼女の人となりに本当に魅了されたし、制作をする中でファンになっていったんです」

ÉTÉu1(c)Rex Features

 

(C)Nick Shymansky Photo by Nick Shymansky

 

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(C)Nick Shymansky Photo by Nick Shymansky

──ドキュメンタリーを製作することになったきっかけは?

アシフ「僕はそもそも人に興味があるんです。特に、いわゆる“アンダードッグ=負け犬”に興味をかき立てられるんですよね。エイミーはアーティストとしては非常にポジティヴだけれども、人としてはやっぱりある種の“負け犬”だったわけです。だから興味を惹かれました。映画を作り出す前から人の心理というものに興味があったので、それが今回のひとつの動機になったんです。僕の映画を作る動機というのは、突き詰めたい疑問がそこにあるかどうかなんですよね。『アイルトン・セナ〜音速の彼方へ』も制作に5年かかっているし、『AMY エイミー』も3年かかっている。それだけ付き合っていくわけなので、よっぽど探っていきたい疑問がないとダメなんです。ファンだったから映画を撮ったわけではなくて、色んな疑問を紐解きたかったから撮ったんです」

──劇中にも登場する元マネージャーであるニック・シマンスキーや、幼馴染みの女性2人の信用はどのようにして得ていったのでしょうか?

アシフ「カメラがあると身構えて本当のことを聞き出せなかったりするんですけれど、今回の場合は本当のラジオ番組のように部屋の中で1対1で座り、音を録っているミキサーも別室にして、照明も落としてしゃべってもらったんです。すると取材対象者はほっとするから安心していろいろ話し出すんですね。最初は『嫌だ嫌だ』と言っていた人が1時間、2時間、そして4時間、5時間に話してくれてどんどん心を開いてくれました。取材対象者の彼らもエイミーに先立たれてしまっていろいろ心に抱えていたので、この映画が彼らにとって一種のセラピー的な効果があったんじゃないかなと思うんです。そのせいか、だんだんと私たちを信頼していってくれるようになりました。そうしたら『今度はこいつに話を聞いてみたらいいよ』って友達を紹介してくれるようになりました。最初は「映像なんか持っていないとか言っていたけど本当はあるんだよね」って見せてくれたりして。つまり周りの人との1対1の対話を重ねていく中でその過程を経て映像にだどりつけた感じでした」

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