恐るべきティーンエイジャー達の新作が伝える、深く広いポップ・ミュージックへの理解。~リス(Liss)『First EP』(Album Review)

恐るべきティーンエイジャー達の新作が伝える、深く広いポップ・ミュージックへの理解。~リス(Liss)『First EP』(Album Review)

 名門XLレコーディングスと契約を結び、4曲入りの『First EP』でデビューを果たした、デンマークの4人組バンド、リス(Liss)。メンバー全員が十代のうちに2015年に結成され、「Try」そして「Always」という楽曲をインターネット上に公開してきた。甘く柔らかな、しかも驚くほど練り上げられたソングライティングを武器に、注目を集めるようになったインディー・バンドだ。

 「Always」はメランコリックな陶酔感とソウルフルなグルーヴを併せ持つナンバーだったが、『First EP』に収録された楽曲はいずれも新曲。XLのロディ・マクドナルド(これまでにザ・エックスエックスやサヴェージズ、ドーターなどを手がけてきた)がプロデュースしたサウンドは、豊かさと洗練に満ち溢れている。

 大胆な音の隙間からエモーションを立ち上らせて始まるリード曲「Sorry」は、うっすらと悲しみに染まる歌声が、ハーモニーワークやトロピカルなフレーズに彩られてゆく。ギター・バンドとしての基本構造を持ちながら、音楽的なヴィジョンの広がりが素晴らしい。続く「Good Enough」はファンキーなヴォーカルの節回しでグルーヴを牽引してゆくナンバーだが、メロディのフックをしっかり残してゆく。

 そして3曲目の「Miles Apart」は、オーガニックとエレクトロニックの絶妙な配合と、AORばりのアレンジが効いた逸品だ。コーラス・パートの一度聞いたら覚えてしまうキャッチーな響きに至るまで、隙が見当たらない完成度の高さを誇っている。EPを締め括るのは哀愁のレゲエ・チューンとなった「Without Me」であり、ストリングス風のシンセ・サウンドがドラマティックにフィナーレへと導いてゆく。捨て曲の見当たらない一枚だ。

 もちろん、メンバー4人の才能は目を見張るものがあるけれども、大人の階段を上る若者が感受性を解き放ったとき、こんなにも広く深いポップ・ミュージックへの理解が生まれ、哀愁を宥めるための楽曲が生まれるのだということにこそ、感動を覚える。決して背伸びした作風でないことは、楽曲群の一貫したマインドの在り方からも明らかだ。今春には欧州諸国をツアーで回り、夏季のフェス出演も次々に決定しているリス。いずれ、来日公演にも期待したいところだ。(Text:小池宏和)

◎リリース情報
『First EP』
2015/05/13 RELEASE
iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/first-ep/id1104537511

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