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映画『帰ってきたヒトラー』主演俳優に聞く「ヒトラーの姿を見て喜ぶドイツ人がいた事に驚いた」

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現代にタイムスリップしたヒトラー(本人)がモノマネ芸人として大ブレイク! という奇想天外なアイデアでベストセラーとなった同名小説を映画化した『帰ってきたヒトラー』。6月17日より全国公開となります。

本作で、あまりにもソックリなヒトラーを演じたのが俳優のオリバー・マスッチさん。ドイツ生まれの俳優さんですが、ドイツでもそのキャリアはほとんど知られておらず、つまり“無名”。『帰ってきたヒトラー』製作陣が見つけ出した才能は、劇中で私たちを笑わせ、そしてそら恐ろしい気持ちにさせてくれます。

実際にヒトラーの格好で街を歩き、国民のリアルな反応を撮影するという「ドキュメンタリー」パートも非常に印象的な本作。撮影の中でオリバーさんが脅威を感じた出来事とは?


―ヒトラーに扮したオリバーさんが、予告無しで街頭に繰り出すパートが印象的ですが、どれくらいの時間「ドキュメンタリー部分」の撮影を行ったのでしょうか?

オリバー・マスッチ:9ヶ月間撮影をしました。その中には役作りの準備もあります。例えば、心理学者でカウンセラーの女性2人に来ていただき、私が精神を病んで自分をヒトラーだと思い込み、軍服を着てベルリン中を歩きまわっているという設定で、その患者が治療を受けると。その時にドキュメンタリー用に撮影許可をとった、という設定で、カウンセラー一人一人と面談をする設定で、合計5時間それに使いましたその中で「この人の人格的な問題点はどこにあるのだろう」いうことにカウンセラーの方達は真剣に対応してくれるんですけど、私は即興で演じる、という役の準備をしました。

また、ベルリンで50万人が集まるサッカーW杯のパブリック・ビューイングが行われたのですが、実は反ドイツ的な行動をとるサクラの俳優たちを雇って「ドイツ馬鹿野郎!」「ドイツ弱い!」等と言わせたんです。それで、人々を操作できるか、乗ってくるかということを試したんですけれども、実際やはり乗ってくる人たちがいたのです。

こういったトライを通じて、配給会社が「セミドキュメンタリー」の手法で撮影出来ると判断をしました。その判断に至る前というのは、やはりヒトラーはドイツで非常にタブー視されているテーマですし、外国人を敵視する傾向が高まっているので行けるかどうか確信が持てなかった。しかしこうしたテストシューティングを経て、GOサインが出たのちの残りの4、5ヶ月の撮影期間で更にドキュメンタリー部分の撮影を続け、ドイツ中を回りました。最初から私はパフォーマンスをする必要がなくて、人々の方から反応をしてくれました。

それで、私は父親のように優しく、「あなたの問題は何ですか?」と語りかけました。と同時に、当時と同じようなヒトラーの台詞を言っていたんですけれども、人々の中には「今度の選挙で投票するよ!」という右寄りな政治を願っているという本音を言ってくる人もいました。


―ヒトラーに扮したあなたと接した、一般の方の反応をどのように感じられたか教えて下さい。

オリバー・マスッチ:やはり中道である国民がどんどん右へ傾いているということですね。場合によっては極右の方へ傾いているということです。数年前のドイツではなかったことなんです。今回私たちは2台のカメラを撮影とちゃんとわかるように回しているんですけれども、その前で外国人を敵視する発言をするドイツ人がいるということ。これはやはり一線を超えてしまっているなと感じました。

国民というものがいかにたやすく操作されてしまうということや、困っている問題に対して簡単な方法を提示してくれる人のほうに迎合していってしまう、そういう人が出てくるならば民主主義を捨ててもいいとまで思っている国民もいるということを感じました。強い指導者がほしい、そういう人がいるなら選んでも良いという人がいるんですよ。

それからヒトラーが1933年につくった労働強制収容所があるんですが、現代でも必要だと言ったり、「私を選挙で選んでくれるか?」と聞いたら「Yes」という人もいて非常に驚きました。撮影の終りの方でペギーだという運動も出てきて、ドイツだけでなく世界中に右傾化見られるのが危険だと思います。民主主義というのは第2次世界大戦での約6千万人の犠牲の上に勝ち取ったものですし、しかも壊れやすいものですから、これをしっかりと守らなければいけないと思っております。選挙の時には我々は本当に注意しなければいけないと思っております。

―2015年に公開された映画ですが、現在世界各地で注目を集めている過激な扇動者を思い起こす人も多いかと思います。このことについてあなたはどう考えていますか?

オリバー・マスッチ:この映画を見ている観客の中で、ここ笑ってほしくないなという所で笑っている人が残念ながらいるんですね。どこのシーンかっていうと、ゼンゼンブリンクがユダヤ人排斥等の人種差別ジョークをどんどん書かせるシーンがありますよね。外国人への敵対的なこととか、強制収容所についてのジョークを皆で書くという。それまではヒトラーが現代に甦ってめちゃくちゃで面白い展開で非常にコミカルに展開してきたんですけれども、実はあのシーンで、観客が「あれ?ちょっとこれ違うよね」「今まで笑ってきたけど実はこれって笑っちゃいけないんじゃないの」って感じてもらいたい所なんですけれども、あそこで笑う人がいるっていうのも事実なんですね。街頭インタビューした人の中にも、現実的にそういう人がいるってことですね。

―日本も現在、というかここ数年、十数年はずっとそうだと言わざるを得ませんが、政治的な混乱や問題を抱えています。そんな日本にメッセージをいただけますか。

オリバー・マスッチ:まず、私達が勝ち取った民主主義を大事にしてほしいということ。そして選挙に行くときもよく考えてほしいということです。民主主義というものは壊れやすいものですから、一旦壊れたら手に入らない、だから守っていくということ。不安を煽る人がいます、でもそういう人についていかないでください。

―貴重なお話をどうもありがとうございました。

『帰ってきたヒトラー』6月18日全国ロードショー
ヒトラーの姿をした男が突如街に現れたら?「不謹慎なコスプレ男?」顔が似ていれば、「モノマネ芸人?」。リストラされたテレビマンに発掘され、復帰の足がかりにテレビ出演させられた男は、長い沈黙の後、とんでもない演説を繰り出し、視聴者のドギモを抜く。自信に満ちた演説は、かつてのヒトラーを模した完成度の高い芸と認識され、過激な毒演は、ユーモラスで真理をついていると話題になり、大衆の心を掴み始める。しかし、皆気づいていなかった。彼がタイムスリップしてきた〈ホンモノ〉で、70年前と全く変わっていないことを。そして、天才扇動者である彼にとって、現代のネット社会は願ってもない環境であることを……。

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記者:

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

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