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【緊急インタビュー】小金井女子大生刺傷事件について優月心菜に聞く 「関係者もファンも危機感を持つべき」

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2016年5月21日に東京都小金井市で起きた女子大生刺傷事件。被害にあった冨田真由さんがアイドル活動をしていたと報じられたこともあって、さまざまな方面に激震が走る中、歌手・声優として活動している優月心菜さんが事件について『Twitter』で「アイドルは、あなただけのものじゃないし、あなただけに接しているわけでもありません」と持論を展開。大きな注目を集めました。

※参考 男性ファンが女性アイドルの体部20箇所を刺した事件をうけてとあるアイドルのツイートが感慨深いと話題に(Togetterまとめ)
http://togetter.com/li/978090 [リンク]

もともと優月さんは地下アイドルが「出会いドル」になっているとして「色恋営業」に異を唱えており、漫画アプリ『comico PLUS』で連載中の『アイドルになりたいっ!』で原作者としてその実態を明かすなど、以前よりアイドルとファンとのあり方に警鐘を鳴らしていました。
ここでは、そんな優月さんに緊急インタビュー。ツイートの反響やSNSの危険性、表現活動をする上で考えるべきことまでお聞きしました。

「ファンとの距離が近くなりすぎると、曲を聴いてくれなくなる」

ーー今回の小金井の事件に関連したツイートが、かなりRTもされたわけですが、これほど注目されると思っていましたか?

優月心菜さん(以下、優月):正直な話、こんなに広まるとは思っていませんでした。ですが、前から同じ事をずっと言い続けていたのに、今回のような事件がないと伝わらないというのが悲しいな、と思いました。

ーー優月さんは『お願い!ランキング』(テレビ朝日系)で地下アイドルの多くが「出会いドル」になっている現状について発言してもいますし、連載している『アイドルになりたいっ!』でもアイドル活動していく上でのリスクについてテーマにしていらっしゃいます。それが伝わっていない、と。

優月:ツイートが「売名でしょ」と言われることもありますね。あと、自分も以前には(接触の対応が分からず)ファンを病ませてしまったこともあるし、ライブに行くお金を他人から借りれなくなった人が事件を起こしてしまったこともありました。だから、「お前もノルマを強要していたのにどの口がいうのか」といったリプライもありました。

ーーおそらく優月さんもいろいろな事件や試行錯誤や教訓があって、今の考え方に行き着いたのだと思います。アイドルが握手会やハグ会のようなファンとの接触が中心になって、一番の問題は何だと考えていらっしゃいますか?

優月:色恋営業によってファンと距離が近くなりすぎて、アイドルに恋をしたり友達感覚になってしまうこと。そうすると無料や値段の安いイベントには来てくれるのだけど、曲を聴いてくれなくなったりCDを買ってくれなくなったりしましたね。

ーー本来は活動する目的の歌が聴いてもらえないという本末転倒な状態になってしまう、と。

優月:そういった色恋営業をやっているアイドルが多いし、それをよしとしている風潮が、アイドルを接客業だと勘違いしているファンを育てていると思います。私のファンでも、そういう子たちが出ている対バンのライブで向こうにいってしまうこともありますし。でも、そういうことをやっているアイドルの意識を変えることが大事だと思っていて、「メジャーなアイドルに負けずに集客を頑張る」という競争心を煽ってファンを付けるという現状があるけど、色恋営業をしても一人では限界がある。人気のアイドルは事務所がついてプロモーションにお金も使って、作品を作っているということを気づくべきです。

ーー特に地下アイドルの場合、一人で活動をしているとファンとの交流が第一になってしまいがちになるのではないでしょうか。

優月:多くの勘違いしている女の子たちは、作品にお金をかけずに色恋営業をしているのですが、お金がないなら活動をやめるか、事務所に入るなり、協力をしてくれる人をつけるべきです。そうしないとどんどん間違った方向に進んでいくと思います。

ーー小金井の事件では、被害者の女子大生が「アイドル」か「シンガーソングライター」かといったことも論議されています。とはいえ、アイドルもミュージシャンも両方出るイベントは増えていますし、その活動内容が近づいている面もあるのではと思うのですが、優月さんはどうお考えですか?

優月:私の友達のシンガーソングライターも最初は一生懸命交流をやらずに頑張っていたんですけれど、一回アイドルと対バンしたことがあって、アイドルの営業方法をまねしちゃったんですよ。そうしたら、ファンのリクエストのままに歌うようになり、何を歌いたいのかわからなくなっちゃって「どうしよう」と悩んでいて……。距離が近くなるぶん、演じる側もファンが支配する状況になっていることもありますね。

ーーファンとどのような関係を築いていくのか、真剣に考えて活動をしている人はまだまだ少ないという印象ですか?

優月:ファンにちやほやされることが楽しくて生きがいに感じちゃっている子も実際たくさんいますね。「今の環境はいいし、私のファンはいい人だから」と思っている子も多い。だから、ファンの側も今回の事件のことを「ストーカーが起こした事件じゃないか」と言ってしまう。それぞれ活動している子のファンが危機感を持っていないというのが、ものすごく怖いことだなと思います。

「SNSの危険性についてみんなが気づくべき」

ーー小金井の事件では容疑者のものと見られる『Twitter』アカウントも見つかっていて、被害者に対して執拗にリプライを返していますが、SNSをどう使っていくのかも考えるべきだと思います。

優月:私もSNSが危険だと思っていて、対面でないぶん怒りや愛情がどんどん募っていってしまうこともありますよね。『Twitter』もメールやチャット感覚になってしまいますし。私の場合は全部リプライをしないルールにしています。上手に使えない子ほど返信をしないようにする必要がある。「俺だけには返していない」といったことが見えてしまうので、メールより危険です。あと位置情報。以前に番組でやっていた撮影用に用意された住宅がバレてしまったことがあって……。ほかに現場の駅が写っていた床で特定されてしまったこともあるので、画像も気をつけた方がいいです。

ーー『Twitter』以外のウェブサービスはどうでしょう?

優月:『ツイキャス』も危ないです。知り合いがお外配信をして、どこでやっているか分かってしまって、(ファンに)追跡されてしまうということがありました。場所が分かるのは本当に怖いことだと思います。

ーー今回の事件では、被害者の親族が警察に相談に行ったのですが、実際動いてはもらえなかったと報じられています。

優月:警察もSNSで書かれていることは「便所の落書き」程度の軽いものでしか扱われていません。友達に相談しても「無視でいいんじゃないか」と危機感をあまり持ってくれないこともあります。SNSの荒らしはサイバーストーカーそのもの。無料で気軽に使えるものだけに、みんな危険性に気づいて、もっと考えて使った方がいいです。

「メジャーなアイドルと地下アイドルでは似ているようで環境が違う」

ーー優月さんがいわゆる地下アイドルの世界の問題に気づくきっかけが何かあったのでしょうか?

優月:昔は私も地下アイドルの界隈が全てで、広い視野で見ていませんでした。でも、有名なアイドルが出演するライブハウスや、撮影会、それに声優の現場と3つのスタッフを経験したんですね。それで、自分がやってきた世界との違いを働きながら感じることができました。

ーーひと口に「アイドル」といっても、グループやライブハウスによってもルールが違いますよね。

優月:そうなんです。メジャーなアイドルグループは、必要以上の接触をしているわけでなく、本人たち以外にもいろいろな人が関わっていて、みんなで一つの作品を作り上げています。なので、ファンの方も、自分は大勢の中の一人と、正常な認識をしやすいんです。売れているアイドルと地下アイドルでは環境が違うし、「ほとんどのアイドルのファンは善良」と言う人もいますが、メジャーのファンはそうかもしれないけれど、地下アイドルのファンは、みんなが善良とは限らないし、環境によっては結構キツイ現場もあります。そういったことを知らないで、発言権のある人が断言してしまうのは危険。もっと業界全体を見た上で危機感を持ってほしいです。今回の件で、現場の客層を知らない方から、メジャーに喧嘩を売ってるなんて書かれたりもしましたが、似ているようで全く別物だから、一緒に見てはいけないと思います。

ーーお話をお伺いしていて、このことはアイドルだけでなく、何らかの表現活動に関わっている人すべてに言えることなんじゃないかと思いました。

優月:はい。シンガーソングライターでも小劇場の役者でも、誰でも社会的常識は身につけておく必要があると思うんですよね。

ーー例えばレイヤーさんや画家さんにも同じことが言えると思うのですが、そういうことを皆が自分事だと感じてもらうためにはどうすればいいとお考えですか。

優月:表現をしているということでは同じだと思ってほしいですね。例えば、舞台とか「アイドル」であるという肩書きを気にするアイドル以外の方って多いんです。ですがアイドルだからとか役者だからとか区別することなく、皆が表現するアクターなんだよ、とやっている側が認識することで変わると思います。

「これからアイドルになる子や、アイドルのファンに同じ思いをしてほしくない」

ーーそれはファンにも同じことが言えますね。優月さんがアイドルのあり方について、積極的に発言していく動機はどういったことから来ているのでしょうか?

優月:やっぱり、自分が間違えたり失敗して、ファンを傷つけてしまったり、他人に迷惑をかけてしまったりしたことがたくさんあったということですね。これからアイドルになる子や、アイドルのファンに同じ思いをしてほしくないし、苦労をしてほしくない。アイドルのできることって本当は素敵なことなので。ファンとの関係に悩んで活動をやめてしまった子も見てきていますが、最初からいろいろな事を知っていればそんなことにはならなかったと思うんです。

ーー現状のライブシーンについて、まだまだ語り尽くすということはないと思いますが、さまざまな表現活動している人やファンの人たちに対してメッセージがあればお願いします。

優月:最近では趣味やアルバイトでアイドルをやっています、という人も増えているんです。でも、そういう子も、一応はどういう業界なのか知っているほうがいいです。「地下アイドルは規制がないのがいい」という人もいますが、個人で完全に責任が取れるならそれでもいいと思うんです。でも、今回の事件のようなことがあれば、家族は心配するし、関係者に迷惑がかかるということをもうちょっと考えた方がいいと思います。
中には完成されたパフォーマンスでなく不完全なものをよしとする人たちもいますけれど、それを「俺が成長させないといけない」と感じているファンも多い。人生の先輩としてアドバイスといってもその人が経験しているものであって、必ずしも相手に当てはまるとは限らないです。全部が一緒だと考えないで欲しいですね。中には敢えてゆるくやってそれを売りにしている子もいます。ファンは、アイドルに自分のイメージを強要してはいけないです。気に入らないなら好みのアイドルを探してそのライブに行くのがベストだと思います。ファンとのあり方は発言力のある人と協力してこれからも考えていかないといけないと思っています。

ーー優月さんのお話が表現活動をする人のあり方を見直すきっかけになれば、と思います。ありがとうございました。

優月心菜オフィシャルブログ「ここなドコだ!?」
http://ameblo.jp/kibiruu/ [リンク]

優月心菜さんの『Twitter』
https://twitter.com/kibiruu [リンク]

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記者:

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

ウェブサイト: http://yaplog.jp/parsleymood/

TwitterID: parsleymood

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