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「起業するアイデアがなければ考えよ、それに尽きる」 孫正義×ルース大使 対談全文(後編)

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米国務省「ConnectUSA」が主催するオープンキャンパスで実現した対談

 ソフトバンク孫正義社長とアメリカのジョン・ルース駐日大使の対談で、2人は起業を目指す人々を導く「メンター」のあり方について語った。孫氏は自分のなかで「心の師」「ヒーロー」を作り、その人物のようになりたいと夢見ることが重要だと語る一方、ルース大使は、専門的な知見・知識を持った人物を「メンター」とし、頼ることを勧めた。

 また、ニコニコ生放送視聴者からの「起業はしたいが、アイデアがない場合」についてアドバイスを求められると、孫氏は「Think!(考えよ)、それに尽きる」とし、ルース大使も「まったくの同感」とした。

 以下、対談を全文書き起こして紹介する。

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http://live.nicovideo.jp/watch/lv66635936?po=news&ref=news#1:08:03
・「ジョブズはあえてリスクをおかす人だった」 孫正義×ルース大使 対談全文(前編)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw130151

■「『日本が好き』、だからといって他国と戦うわけではない」

司会: アメリカからの支援ということで、今回の震災、私たちも大変世界との繋がりを意識した機会になったと思うのですが、孫さんも震災の復興支援、積極的に取り組まれていて、この「3.11」後の世界、社会というのを私たちがどう生きていけばいいという風にお考えになっていらっしゃいますか。

孫正義(以下、孫): 3月11日の震災前は、このような原発事故や津波、大震災のようなことを、私はあまり考えていませんでした。深く考えたことは無かったのです。新聞を読んだり、あるいはテレビのニュースを観たりして、他人事のような気がしていたのです。どこか違う場所で起こっていること、私自身に繋がりのある、あるいは私の家族に直接関連のあるものではないという気がしていたのです。

 でも、3月11日以降、まるっきり私の見方は変わりました。「これはやはり支援しなければならない」と感じました。本当に大きな悲劇で何かしなければならないという気持ちになりました。ですので本当にがらりと物の見方が変わった気がします。私は日本で生まれて、日本が大好きです。ですので日本の人たちを支援し、支えたい。3月11日以降、これがきっかけになって、私の頭の中がどこか切り替わった気がします。本当に日本が大好きなのだということがわかりました。「何とかしなければならない」、「日本の人たちをサポートしなければならない」と感じました。

 日本が好き。日本人が好き。だからと言って「他の国と戦う」というわけではありません。2つの種類の人がいると思います。日本が好き、本当に好き、だから「他の近隣諸国と戦わなければならない」、そして「日本だけを守ればいい」と考える人もいます。そういう人が一方にいれば、もうひとつ別なタイプの人がいます。自分の国、自分の国の人たちが大好きであれば、同じように近隣諸国の人たちも大好きだし、そこの国の人たちも、その国も好き、「だからお互いに助け合うのだ」と考える人がいます。私はその後者のタイプの人間になりたいと思います。日本を深く愛している。そしてこの悲劇のあと、なおさらその愛を強く感じるようになりました。それと同時に海外にいる人たちにも手を差し伸べたいと思います。そしてお互いを尊重し合うことができればと思うのです。ですので、アメリカの人たち、アメリカとも支え合いたい。あるいは、韓国、中国、その他の国々の人たちともお互いに支え合っていきたい。人と人の関係と同じです。自分が大好きであれば、そしてだからといって周りと喧嘩をするのか、それとも自分が大好きだから他の人たちも助けたいと思うかだと思うのです。

ジョン・ルース氏(以下、ルース): まったくそうだと思います。これが「トモダチ」の精神ですよね。もうひとつお話を聞いていただきたいのですけれども、もちろん被災地に訪れた時に、本当にインスピレーションを受けるような話というのがたくさんあるんですけれども、(岩手県)陸前高田(市)の戸羽市長に会いに行きました。彼もやはり非常に悲劇的な、かつインスピレーションを与えてくれる話をしてくれました。

 津波が襲ってきた時に奥さんがそこにいるとわかっているが、自分の家に行く代わりに市庁舎に残ってできるだけ多くの陸前高田の市民を避難させようと、あえてそちらを選んだのです。どうしてそんな辛い1日を過ごすことができたのかという時に、彼は8歳の息子を失ったという自分の秘書のほうを指差して、「こういう人たちのために自分は強くなければならないんだ」と言いました。そのあとアメリカとしてさらに協力できることは何かと聞いた時に、「ちょっと考えてみたい」と言われて、いまから1か月程前に私のオフィスに来てくださった時には、「アメリカとして私どもに協力してれるというので、もう1度よく考えてみました。市長としてはぜひとも陸前高田の若い人たちがアメリカに行ける機会を与えてほしい。英語を勉強し、それ以外のことも勉強したい」と言われました。そうすることが彼らの未来にとって最も良い準備になると考えたわけです。これもやはり実際に辛い時に起きたことが何かというだけでなく、日本とアメリカの間、起きたことを「トモダチ作戦」に引き続いてまた続けていきたいと思います。

アメリカ留学を決意したときの様子を語る孫氏

: 私自身も16歳の時に父が入院しました。彼は本当に病気を患っており、吐血もしていたのです。胃の病気だったのですけど、非常に深刻な状況でもう死ぬのではないかと心配されたほどなのです。あの時、私は「アメリカに留学をしたい」と言っていました。私の叔父や叔母など、親戚一同、私を留めさせようとしたんです。「止めなさい」、「正義、お父さんが入院している時になぜ、アメリカ留学したいなんて言うのか」と。私はこう言ったものです。お医者様に聞いたら幸いにも父は回復すると、ただ時間がかかるという話だったのです。そこで、皆に反対されたあとで私は父に聞いたのです。「お父さん。私はアメリカに留学をしたい」と。「正義、行きなさい」と言ってくれたのは彼だけなのです。そのほうが私は幸せだと。父は「アメリカに行って、君が勉強して、より強い人間になるほうが、そのほうが私にとっても自分が幸せでいられるし、強くなれる感じがする。君が私の希望なのだ。だから行きなさい」と本当に言っていたのです。

ルース: 100万ドル、やっぱり差し上げたほうがいいんじゃないですか。

: ははは。そうですね。そうしなくてはいけません。

ルース: 「アメリカに絶対留学しよう」という決意を持っていたわけですね。私はいろんな人と話していくなかで、「どうして学生はアメリカに留学するべきではないのか」、それはちゃんと日本にいて就活(就職活動)しなきゃならないとか、あるいは金銭的理由もあるでしょう。また繰り返し聞いたのは「安全ではないじゃないか」、「アメリカは怖いところじゃないか」と。また(アメリカで)取った単位を、アメリカの大学から日本の大学に移すことができないじゃないか。またいわゆるアカデミックイヤー、1年の始まる時期が(日本とは)違うということもあります。

 本当にアメリカに行きたい、そしてハードルがあるのだと思っている人たちにぜひとも言いたいんですけど、もちろん(アメリカで)やるべき点が無い理由というのはいくらでも思いつくことができると思います。ただそういうことによって自分がやりたいことを止めてはいけないと思います。とにかく自分で「これはやるんだ」と決めなくてはいけません。それは「自分がやりたいからやるんだ」(という気持ち)。しかもこれをやることによって自分のためになるし、さっき話した視野が広がるとか、いろいろ行くべき理由があります。そうなった時に金銭的なハードルであろうが、すべて解決できるわけです。奨学金というものも潤沢にあります。アメリカ大使館は皆様方の支援をします。「こういう奨学金がある」ということもご紹介致しましょう。また単位を動かす、あるいは持って来るという話に関してもやり方があると思います。また、就職という観点からすれば、単に長期的な目から見る限りにおいては、(留学を経験することで)人材としてさらに価値がある人になると思います。ですからどんなことがあったとしても、この決断を下すうえでの障害にはなりません。

■登る山を決めなければ、人生は「ただ徘徊しているだけ」

ヨーダの教えを引用した孫正義氏(右)

: 我々の年齢だと『スター・ウォーズ』をご覧になってますよね。ジョージ・ルーカス(監督)の作った『スター・ウォーズ』という映画です。この映画には「ヨーダ」が出てきます。ヨーダが「ジェダイの騎士になるには」という話をします。「フォース(理力)がある。見えるものを見るんじゃない。聞こえるものに耳を傾けるな」と。「フォースだけを察知しろ」と。するとジェダイが「フォースとは何なのですか」と、ヨーダは「フォースというのは、それは君のマインド、頭の中にあるものだ」と答えていました。まさにああいうことだと思うんです。自分たちがやりたいというスピリッツですよね。

ルース: 私はダース・ベイダーを相手に戦う機会が無くて、本当にほっとしていますよ。

: スティーブ・ジョブズも言っていました。「自分に聞いてみろ」と。「他の人に自分の人生を決めさせてはいけない」と言っていました。自分自身に聞こう、自分の心に聞いてみるんだと。インスピレーションに聞いてみよう。あなたが、あなただけで、自分のために、自分の人生のために決める。他の誰も自分の妨げにさせてはいけないということを言っていたと思います。そういうことです。自分自身でまず決める。私の言い方ですとこういう風に言うんです。(画面で)1ページあるんですけども・・・。これです。「登る山を決める」ということです。あなたはどの山を登りたいのか、あなたはどの山を選んで、自分の人生において登るのか。その山を決めたら、どんな困難も乗り越えられます。しかしどの山を登るかを決めないで、ただ歩き回っていると、それはただ徘徊しているだけなんです。人生は皆に1度きりしか来ませんし、あっという間に過ぎてしまいます。ですから、ただ歩くというのは止めましょう。山を登りましょう。自分の夢という山を登るべきだと思います。

ルース: それ以上、素晴らしい表現はありませんね。

司会: ここで留学に関するツイッターでの質問がいくつか届いていますので、2つご紹介したいと思います。17歳の女性からです。「大学を日本にするか海外にするかで迷っている高校生にアドバイスはありますか。これからの時代に向けて、若い人がやっておくべきことは何ですか?」。それからもうひとつの質問ですが、「留学には沢山の選択肢があると思います。例えば留学先の国も、アメリカ以外にも沢山あります。留学をすると決めたとして、その中でもアメリカにフォーカスすることの持つ意味は何なのでしょうか?」。お2人それぞれいかがでしょうか。

「それがどこであれ、海外に行って勉強することは人生を豊かにする」と語るルース大使

ルース: 私はもちろんバイアスがかかっているので、ぜひとも皆さんにはアメリカに来ていただきたいと思っています。しかし海外留学の話をする時には、もちろんこれは「日米」のイベントではありますけれども、当然のことながら海外留学をするということで、それがどこであれ、海外に行って勉強することは人生を豊かにします。

 もちろん私どもの視点からすればアメリカに留学することの利点はあります。いろいろなコミュニティーに参加したり、英語を話す人たちに囲まれて生活することによって英語の実力も上がっていきます。ただそれ以外にも、これは個人的にバイアスがかかっていますが、日米の絆がある、そしてまた過去からの深い関係があるということもプラスでしょう。私が繰り返し言っていることですが、日米の軍事同盟が強いかどうか、戦略的な同盟関係がどうかについては心配していませんし、また日米の経済上の関係も一切心配していません。唯一心配があるとするならば、長期的にこの人と人との繋がりというものを日本とアメリカとの間で維持し続けることができるか。それだけが気掛かりです。

 そのための重要なメカニズムとして、若者にアメリカから日本に来てもらい、勉強や仕事をしたり、また逆に日本からも同様に若い人たちに勉強にそして働きに来てほしいと思っています。しかし同時にグローバルな時代ですから、当然ながら世界の他の地域も経験していただきたい。アメリカだけでなく、他の国に留学したり住んでみることも価値のあることだと思います。

: 私の場合をお話しします。16歳の時に高校を辞めてアメリカに行くべきなのかを考えていました。悩んだ末に、自分自身に問いかけて答えを導き出しました。日本にも入りたい大学はありましたが、もし自分が日本に留まって日本の大学に合格したとしても、すでに日本語はわかっているし、日本という国についても十分とは言えないかも知れないが大体は理解ができている。大学を卒業して、またアメリカに留学したとしても、いずれは日本に戻って来るんだと考えると、一生を考えた時に、若い時に4、5年間、他の国を見てみたとしたら、例えば他の文化や生活を見てみたら、それはきっと自分にいろいろな新しい視点を与えてくれるのでは無いか、と(考えました)。私の体験や考え方も広げてくれるのではないかと思いました。

 そういうチャンスを自分に与えるべきかどうか考えた時に、「やるべきだ」と思ったのです。先ほども言ったように、いったん自分の会社を始めたら、あるいはどこかに就職したら、仕事を辞めて出て行くのは難しくなります。今そのチャンスがあるのであれば、やはり学生の時にやっておくべきだと思ったのです。それもひとつの理由として留学を決めました。

 2つ目に「なぜアメリカか」ということです。私にとってアメリカは、「ただアメリカだ」というだけではありません。私はカリフォルニア大学で学んでいたのですが、海外からの留学生が沢山いましたので、アメリカ人とだけ付き合っていたわけではありません。先ほどシリコンバレーの話をされましたが、そこにいる起業家の方々や従業員、さらには経営者も皆、純粋なアメリカ人だけではなく中国人もいればインド人もいるし、韓国人もいる。いろいろな国の人たちがいます。彼らもアメリカにやってきて勉強し、シリコンバレーで新しいビジネスにチャレンジしました。そこで積み上げた知識や経験、そこで繋がった人脈を持って母国に戻り、起業するのです。

ルース: それは非常に重要なポイントだと思います。シリコンバレーでは80の異なった言語が話されています。非常に多様化した地域です。それはアメリカすべてに言えることかも知れません。私は25年間シリコンバレーで仕事をしていましたが、いま孫さんが言われたように中国から、インドから、イスラエルから、そしてヨーロッパの国々から若い学生だけでなく、若い起業家がやってきました。そこで勉強あるいは起業をするなり、アメリカで学んだものを手に自国に戻って行きました。そのようなトレンドの結果として、それぞれの国における起業家環境というものが非常に強化されたわけです。お互いに学び合ったということです。

: 「Yahoo!」の創業者ジェリー・ヤンさんは台湾出身です。セルゲイ・ブリンさんは「Google」の創業者ですが、ロシア出身です。いろいろな国の方々がいて、まるでITのワールドカップです。それこそがシリコンバレーです。私が大学を卒業して、起業して10年20年経って、ようやく初めて他の国々に行くことになりました。そしてまた新しい体験をして、さらに自分の体験が広がることになりました。ですので他の国に行くということを否定はしませんが、私にとってはアメリカ、シリコンバレーに行って学んだことは本当に素晴らしい経験となりました。

ルース: 先ほどのコメントを撤回します。皆さんぜひアメリカに来てください。

: 私にとっては本当に欠かせない体験でした。ただおっしゃったように、どんな国や言語であっても、既知のものや今ある環境以外のものに触れる、慣れているところから飛び出す。しかも若い時に、心だけでも若い時に飛び出すということが大切です。

ルース: そうです。心が若いということが大切です。私にとって外交という分野で仕事をすることと日本に来て海外で生活すること、これは今までとまったく違った経験でした。その結果、心が若返っていればと思いますが。

: 若返られたのではないですか?

ルース: 髪の毛は生えませんでしたけれども。

■「インドかアメリカ、どちらに進出すべきですか?」

2人には来場者から起業に関する質問がなされた

司会: ここで起業に関する質問もひとつご紹介したいと思います。この質問はニコニコ動画からなのですが、ニコニコ動画の来場者数は日本語音声チャンネルで15,000を超えたということです。また、英語音声チャンネルのほうも9,000近くの来場者にご覧いただいています。ありがとうございます。そのニコニコ動画(の視聴者)からのご質問をご紹介します。東京都の男性の方です。「起業はしたいけれども、アイデアが無かったり挑戦した時のリスクを考えてしまいます。アドバイスがあればお願いします」。

: もし起業するアイデアが無いのだったら、「Think!(考えろ!)」。それに尽きます。

ルース: それに追加することはありません。まったく同感です。

会場: (笑いが起こる)。

司会: ありがとうございます。インターネット、ツイッター、ニコニコ動画、ネット中継での質問、大変多数いただいています。すべては紹介しきれないのですが、ここでいったん会場の皆さんからのご質問を受け付けたいと思います。お2人にぜひ聞きたいということがある方。ではさっそく手を挙げてくださった、あちらのiPadを掲げている男性の方、お願いします。

来場者A: ありがとうございます。ルーフィー・チャンと申します。韓国から来ました。IT会社を起業したばかりです。2つ質問があります。私はアメリカにビジネスで行く予定なのですが、またインドにも(孫氏の)お父様同様進出したいと思っているのですが、もしあなた(孫氏)が私ならどちらを選びますか。それが1つ目の質問です2つ目は、例えばインドを選んだ場合に100万ドルをいただけますでしょうか?

: 私があなたでしたら、両方の国を選びますよ。アメリカを見ればもちろんビジネスチャンスは沢山あります。私もインドに何度か行ったことがありますし、中国にも何度も行っています。インドはもちろん劇的に大胆に成長を遂げることでしょう。インドには充分なチャンスがあると思いますし、中国にもまだ沢山のチャンスがあると思います。直感で、どの国で行こうと決めたとしても、ご自身だけで決めるべきだと思います。

 ただ私の考えとしては、どの国も訪れてみるべきだと思います。もし可能であれば自分の足で両方の国を訪ねてみて、自分で決めるのが良いと思います。100万ドルに関してですけれども、運が良ければ、私かその他の人からもそれだけの資金は得られると思いますよ。ベンチャーキャピタリストは世界各地にいますから、それだけ良いアイデアがあれば充分チャンスはあると思います。自分の情熱で、自分の事業計画で良いアイデアが出てくれば、お金があなたを追ってきます。

ルース: 素晴らしい質問だったと思います。しかも皆さんの姿がすごく良かったので、写真を撮って世界中にツイートで流しました。

司会: ほかに質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。では、真っ先に手が挙がったあちらの男性の方、どうぞ。

来場者B: 選んでいただきありがとうございます。私は名古屋の大学に通っている学生です。直接質問ができるということで緊張しております。すみません。質問を忘れてしまいました! あ、思い出しました。

: 立ってください、お顔を見たいので。

来場者B: 私は21歳なのですが、お2人が私の年齢だったら何をしたいと思いますか? 「女の子と遊ぶことが楽しい」ということはわかっていますので、それ以外で何をしますか。

孫氏「女の子には『追いかけられる』ことが大切です」

: 私が21歳の頃は・・・19歳の時に起業しましたからもう自分の会社を始めていたんですね。勉強もしていましたし、非常に忙しい時期でした。ただその時にビジネスマンになるんだという、つまり起業家になるという夢も抱いていました。ですからあなたの年齢の頃は「大きな夢を持つ」、それこそが最も重要だと思います。あなたの夢は何なのかを考えてください。そして誰よりも強い情熱を持ってください。それがあればどんな夢でも実現できると思います。

来場者B: 私の夢は来週「ソフトバンクアカデミア」に参加するんです、それがまず夢ですね。

: 我々も社外の方々から「ソフトバンクアカデミア」の学生になっていただくのを歓迎していますから、チャンスは皆さんにあります。ありがとうございます。でも競争が激しいので相当頑張ってくださいね。

来場者B: もちろんです。ありがとうございました。

: あと、若い時には女の子ばかり追いかけている場合じゃないですよ。女の子に「追いかけられる」ことが大切です。あなたが大きな夢を持って輝いているということであれば、女の子は皆追いかけて来ます。そうあってほしいものです。

司会: なぜか拍手があがっておりますが。では質問のある方は手を挙げてください。

: (これまで男性ばかりなので)女性がいいですね。

来場者C: 素晴らしいトークセッションをありがとうございます。カトウ・カナコと申します。立教大学の学生です。ひとつ質問がありますが、海外留学をする学生の支援について、具体的にどういった支援をしようとなさっているかを教えていただけますか。特に具体策が今あるのであれば、お話しいただければと思うのですが。

: 今はまだ話し合いをしている段階なんです。ルース大使と共にこの話を始めたところなんです。この先数ヶ月以内に何らかのプログラムを立ち上げようではないかということです。

ルース: リチャード・メイという私どもの文化担当官が前席におりますけれども、在京大使館の彼ないしは私どものチームの誰でも構いませんけれども連絡をしてください。海外へ留学するためのコースを見定める上で協力をさせていただきます。

司会: ほかに質問のある方、どうぞ。

来場者D: 一橋大学のヒラヤマと申します。私は会社を経営していまして、シリコンバレーと違って、メンター(指導者)になるような経営者の方が自分の考えでは非常に少ないかと思っているのですが、孫さん自身がそういった若手の経営者のためのメンターになるということはお考えではないでしょうか。

: メンターというのは「心の師」のような感じの存在のことですね。メンターが「メンタイ」に聞こえて、「博多の明太子かな」と思ってしまったのですけれども。いわゆるメンターという先輩ですね。わかりました。メンター制のメンターですね、「師匠」とでも言いましょうか。

 私はまだ小さいんです。私にもまだヒーローは沢山います。スティーブ・ジョブズがそうですし、ビル・ゲイツも私のヒーローです。まずはそういう自分のヒーローを持つことです。もちろん私があなたのヒーローということであれば、私は非常に嬉しいです。ただあまりにも偉大な人物が沢山いらっしゃる。そしてそういった方々から学び取ろうという情熱を持っていれば、自分自身がお手本としている人のようになろうとすること自体が良いことなんです。

 そういった意味で16歳の時から私の一番のヒーローは坂本龍馬だったんです。だからこそ私は海外留学という道を選んだのです。特に若い時に自分のヒーロー、その人のようになりたいということを夢見るのは、自分にとって非常に役立つことだと思います。ですから私自身もあなたのヒーローになれるように頑張ろうと思います。

来場者D: ありがとうございます。

■来場者「誰もが起業家になるのはいいことなのでしょうか」

「起業に関わった人は、助けを求められると助けてやりたい気持ちがある」

司会: メンターについてはルース大使も詳しいと思います。シリコンバレーの世界でメンターの存在は大きいと思うのですが、日本ではメンターとなってくれる人が少ないといういまの質問、いかがでしょうか。

ルース: メンターになれる人たちは大勢いると思います。ひとつ私がキャリアを通して学んだことは、メンターとなり得る人は、人から本当に尊敬されていて、あるいは知見や専門知識を持っているのではないでしょうか。会社を設立した人であれ、会社の資金繰り等に関してよく知っているベンチャーキャピタリストであれ、また弁護士であれ、会社が成長する上でのアドバイスをくれる人であれ、とにかく「助けてくれ」と言えば快く助けたいという気持ちを人は皆持つものだと思います。

 ビジネスの世界にいる人たち、起業家であろうが弁護士であろうがバンカー(投資銀行家)であろうが、どういう立場であれ、皆最初はあなたと同じ立場にいたわけです。ですからほとんどの人たちは「助けたい」という気持ちを持っています。私が奨励することのひとつは、あなたのような人は助けを求めることを決して恐れないでほしいということです。最悪でもノーと言われるだけですから。でもそんなことは無いと思います。ひょっとして、あなたがやりたいことのアドバイスをできるより良いメンターになってくれる人たちを紹介してくれるかも知れません。さまざまな人がそこには大勢いるのです。ただ一番大切なのは、向こうから助けが来るのを待つのではなく、自分から求めてほしいということです。

: メンターにも2種類あると思います。物理的なメンターと言うんでしょうか。実際にあなたにガイダンスを与えて支援をし、日常において助けてくれる人です。もうひとつは、物理的に支援をしてくれるわけではないが、精神的に支えてくれるメンターだと思います。相手が男性でも女性でも良いですが、その人についての映像や本を見て読んで学ぶこともできると思います。そして彼が自分だったらどう考えるだろうかという風に自分で考えてみる。そういったバーチャルメンター、つまりあなたの心の中のメンターというのも、時にはより重要な役割を果たしてくれるのではないかと思います。そういうメンターであれば誰にでもなってもらえるのです。そして絶対に断られることはありませんから。

司会: 他にも手を挙げている方がたくさんいらっしゃいますが、こちらの方どうぞ。

来場者E: ありがとうございます。よく教授や社長はアントレプレナーシップとか、リーダーシップと仰いますが、すごく抽象的で便利な言葉なのですけれども、あまり理解できなくて言葉だけが泳いでいるようで、実際に中身が理解されていない現状があるのではないかと思っています。孫さんが考えるアントレプレナーシップとかリーダーシップは何かということをお聞きしたいのですが。お願いします。

: 起業家、アントレプレナーシップというのは、何か本を読んだだけで、あるいは人から聞いて理解できるものではないと思います。やはりチャレンジしてこそわかるものだと思います。体験してこそわかるものだと思います。

 私はコンサルタントであっても、自分でビジネスを始めたことがない人の言葉はあまり信じたくありません。たくさんのビジネスコンサルタントで、そのスペシャリストだという方はいます。でも自分自身でビジネスを始めたことはない、起業したことがない、もし自分でやってみたらもしかしたら本当は成功しないかもしれない。アントレプレナーシップ、自分自身で体験してこそわかるものだと思います。私が説明して理解していただける、そういうものではないと思います。ありがとうございます。

司会: まだもう少し質問を受ける時間があるかと思います。後ろのほうで手を挙げている女性の方。赤い服の方どうぞ。

来場者F: カレンと申します。お2人とも起業家精神というものを奨励していらっしゃいます。ここにいる人たち皆、それから何千人もの生中継で見ている人たち、皆が起業家になりたいと思っていると思います。でも皆が起業家になりたい、そして皆が起業家になってしまって、皆が自分で会社を始めてしまったら、そこから何か悪影響はないでしょうか。それとも皆が起業家になることはいいことなんでしょうか。

 もうひとつ聞きたいことがあるんですが、孫さんは「自分で登る山を決めろ」と仰いました。もう孫さんは頂上を極められたんでしょうか。それともまだ頂上に向かっているんでしょうか。それともひとつ山を登って、別な山を目指しているんでしょうか。

「本当に起業しようとする人は少ないかも知れない」

: 今日いらっしゃる皆様は、本当に特別な方々だと思います。皆さん「ここに来よう」と思ったわけですから。そして英語で聞いて、あるいは英語で話そうとされているし、それから50%ぐらいの方々はすでに起業しようということに関心を持たれていらっしゃいます。ここにいない、会場にもいらっしゃらない、あるいはここで話を聞いていない方々の半分は、もしかしたら起業することに関心はないのかもしれません。1%でも2%でも、本当に起業家になろうと決心したとしたら、もうそれだけでも素晴らしいことだと思います。考えることはいいですけれども、本当にやろうと決意をする人の数はそれほど多くないかも知れません。でもあなたが起業家になろうと思ってらっしゃることは本当に私は嬉しく思います。

 ただここにいらっしゃらない、この話を聞いていない方々は、そういう気持ちではないかも知れない。こういうイベントをやること自体、素晴らしいと思います。

ルース: そうですね。今夜、多くの時間を費やして、企業の立ち上げに関して話しました。その意味において、起業するという意味での企業家という話をしていたわけですが、大企業の中にも、やはり起業家精神というものがあります。そしてクリエイティブはスタートアップの会社だけの特権ではないわけであります。

 今、(森ビルの)森さんが最前列に座っておりますけれども、一番最初にお目にかかった時に、いわゆるグリーンコミュニティという夢を六本木に作るということで示していただきました。本当に素晴らしいものでありました。ちょっとこういうお話をしていいかどうかお許しいただきたいんですが、素晴らしい成功を収めた方でありまして、本当にそういうまた新たなる、起業しようというようなことをわざわざする必要もない立場にあるわけですが、非常にその起業家主義的な形で社会にとって今までとは違ういいことをやろうということで力を入れておられます。

 今日ここでは新たなに起業するという話を中心にしてきたわけですが、クリエイティブであり、かつアントレプレナーであるという意味においては、単に新しい会社を立ち上げた時だけに限定したものではありません。また企業を立ち上げるのは、必ずしもすべての人がやるとは限りません。ですから、皆これから外に飛び出して、起業家になるということは心配ありません。ぜひともやってください。

: 2つ目の質問、「山登りで自分はいまどのステージにあるか」ということですが、去年私は10%ぐらい、1合目ぐらいまで来たのかな、20%ぐらいまで登ったのかなという風に思ったこともありました。でも今は3%しか登ってないんじゃないかという気持ちでいます。私にとっての山がより大きくなってしまった。大きなチャレンジを目の前にしています。私はいまも夢に比べて自分がまだ小さすぎるという風に思っています。まだまだ登らなければならないと感じています。

ルース: ひとつ追加させていただきますと、非常に成功した起業家で、かつて「もう自分は山を登り切った」と言った人はいません。必ず彼らはより大きなチャレンジを見つけるものです。

■「ジョブズはiPhone4Sの発表日、次の製品の話をしていた」

「ジョブズは亡くなる前、さらに次の製品の話をしていた」

: そう言えば、確か1週間前でしょうか。アップルを訪問しまして、iPhone4Sの発表がなされたので、それに行っていたんです。ティム・クックさん、アップルの新しいCEOですね。クックさんと1対1の会議をしている時に彼はこう言ったんです。「正義さん、すみません。ちょっと会議を中断しなきゃいけないです」と。「いや、何でどこに行くんだ」と言ったら、「僕のボスが呼んでいるんだよ」って言うんです。iPhone4Sの発表の日で、彼は「スティーブ(・ジョブズ)が連絡してきて、僕を呼んでいるんだ。その次の製品についての話をするから」と言っているんです。その翌日に彼(スティーブ・ジョブズ氏)は亡くなった。皆さんご存じの通りです。自分が死ぬ、その直前の前日でも、彼がティム・クックに電話していた。それも最新の製品の発表の日にです。その当日に次の製品について話をしている。スティーブ・ジョブズは「ティム、早く家に来てくれ。これを話し合いたいから」という電話をしているんです。まさにこういう精神ですよね。本当の意味の起業家精神、死ぬまで起業家なんです。

 私はこう感じました。もう本当に具合が悪く病床に伏している。でも最新の製品の発表のために、彼は長く生きられたんだと思います。彼はきっと体から考えたらもっと早くに亡くなっていたかも知れない。それでもおかしくなかった。しかし彼が情熱を持っていた自分の会社と、自分の愛する夢と、次の製品に関する夢を持っていたから、彼はそこから力を得て、あそこまで生き延びたんだと思っているんです。それが大切ですね。皆さんも我々も、そういう精神を自分の最期の最期まで持ち続けるということです。ありがとうございます。それでは私もネバーエンディングなこの山登りを始めたいと思います。

会場: (拍手が起こる)。

司会: ありがとうございます。スティーブ・ジョブズのパッションというお話が出たところで、ちょっと趣向の違う質問もツイッターからご紹介したいと思います。ナミさんという女性の方からです。「私は今、大学院生です。お2人の大学生時代のパッションを教えてください」。あるいは今現在のパッションということでも構わないかと思うんですが。それぞれいかがでしょうか。

ルース: 孫さんは会社を創りたいと思っていたんですが、私は公判の弁護士、裁判担当の弁護士になりたかったんです。これもまったく別な教訓として多くの人たちにアドバイスします。なるべく柔軟性を持って物事に対応したほうがいい。自分のキャリアの進路に関して、あまり凝り固まっちゃいけない。

 私は裁判の弁護士になりたいと思ったんですけど、実際やってみたところ、本当に自分が一番愛しているのはそれではないというのがわかったわけです。その段階で、本当に何をやりたいのかということを考えました。そこでいろいろ試してみました。若い、まだ立ち上がったばかりのシリコンバレーの会社と仕事をしようと思ってやってみたんです。それが本当に自分が一番やりたいことかどうか、わからなかったんですけれど。

 実際にやってみたところ、本当にこれこそが自分がやりたかったことだとわかったわけです。ですからキャリアの上では一歩うしろに下がったわけであります。そして法律の分野からまったく別な分野に転向したわけであります。人からアドバイスを求められる時に、人々に言うことのひとつは、とにかく自分の情熱にしたがって前に進みなさい。しかし一番最初、自分がこれこそ自分が情熱を持っているものだということが、実際にそうじゃないとわかった時に、一歩下がって違う方向に転換をすることを恐れてはならないということを言ったわけです。ですからマサさん(孫正義氏)とは違った道を歩きました。

: 私はもっと若い頃、小学校の時でしょうか。4つの夢の可能性について考えていました。小学校の先生、政治家、アーティスト、そして起業家。その4つの夢の可能性というのを私は考えて、温めていたんです。そこで結局、起業家になろうということを選んだわけですけれども、ただ何らかの先生になりたいという気持ちもまだ強く持っているんです。そこで「ソフトバンクアカデミア」を立ち上げたわけです。別に化学だとか数学を教えるわけではなく、起業家になる、我々のグループ企業の後継者を育てるという意味で始めています。

 ある意味、私は若い頃の夢を、教師になるという夢を追求しているわけです。私はもう決めているんですけれども、60歳、61歳から69歳、60代の中で、私はこの最高経営責任者、ソフトバンクはもう退職をする。退いて、そこからは絵画を追求しようと思っているんです。絵を描こうと。政治家という夢だけはもう追いかけるのをやめました。

ルース: (自分にも)もうひとつ、パッションがあります。それは政治であります。

: ある意味、もうなってらっしゃいますよね?

人生というのは、どちらに向かっていくか、なかなか見えない」

ルース: 常に政治に対する情熱を持っておりました。人生というのは、生きているなかでどちらの方向に向かっていくか、なかなか見えないものであります。私の政治的信条の結果として、若い、しかもバラク・オバマ(大統領)というスターに会うきっかけを作ってくれました。それが結果、縁として今この場に座っているわけであります。今まで私が思ったこともない、最大の栄誉である、最も素晴らしい仕事をすることになったわけでありますので、自分がやりたいと思うことに従って進んでください。金儲けだけのためにやるわけではなく、やること自体が好きだからやるわけです。そうすると必ずやいい結果が生まれると私は信じています。

司会: はい、他では聞けない貴重なお2人の話もうかがえたところで、まだまだ本当にお聞きしたいこと、皆さんも沢山あるかと思うんですが、残り時間が少なくなってまいりました。最後にお2人から一言ずついただいて、このイベントを締めくくりたいと思います。まず孫さん、さまざまな話が出ましたが、今日のディスカッションを振り返ってどうでしょうか。

: 今日ずっと話をしてきたことですけれども、やっぱり情熱を持つことって大切です。夢を持つこと。自分の人生のために、是非、人生は1回しかないものですから。

ルース: 私はその雄弁な言葉に、まったくその通りだと賛成するまでです。それから感謝したいと思います。本当に今夜は素晴らしい時間をいただきました。単にここのご出席の参加者のためだけではなく、何千人もの聴衆者のために、お時間を割いていただいたことに感謝したいと思います。今この場にいる観客の皆様方、本当に素晴らしいロールモデルが私の隣に座っているわけですから、本当に今夜お時間を私どもと過ごしていただいてありがとうございます。また近くお目にかかりたいと思います。

会場: (拍手が起こる)。

司会: 孫さん、ルース大使、ありがとうございました。それではお2人、ここでステージを離れます。皆様、どうぞ大きな拍手でお送りください。

(了)

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・「ジョブズはあえてリスクをおかす人だった」 孫正義×ルース大使 対談全文(前編)
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(協力・書き起こし.com

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「脱原発を叫ぶ前に――」 孫正義×堀義人 対談全文書き起こし(1)

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