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音楽家・坂本龍一インタビュー 『レヴェナント:蘇えりし者』でチャイコフスキーに勝利した秘話を明かす

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本年度アカデミー賞で主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)、監督賞(アレハンドロ・G・イニャリトゥ)、撮影賞(エマニュエル・ルベツキ)の3冠を獲得した映画『レヴェナント:蘇えりし者』

舞台は19世紀アメリカの未開拓の荒野。狩猟中に熊に喉を裂かれて瀕死の重傷を負ってしまった主人公ヒュー・グラス(ディカプリオ)は、狩猟チームの仲間ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)に愛する息子を殺され、その場に置き去りにされてしまう。フィッツジェラルドへの復讐を果たすため、グラスは大自然の脅威にさらされながらも約300kmの旅を生き抜くことを誓う。

いよいよ4月22日(金)より日本公開を迎える本作は、日本が世界に誇る音楽家・坂本龍一が音楽を手掛けたことでも大きな話題を呼んでいる。

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――今回の作曲にあたり、坂本さんが新たにチャレンジした部分があれば教えてください。

坂本:映画音楽は、はっきりとしたメロディを持つのが通常です。でも今回の場合は、イニャリトゥ監督から「メロディよりもサウンド。サウンドの積み重ねが必要だ」と言われました。だからメロディや既成の映画音楽らしいものを極力排除して、ノイズっぽいサウンドになっている。さらに「ミニマルな(最小限の)音楽にしたい」ということだったので、そのあたりは徹底しました。僕が手掛ける映画音楽としては初めての試みでした。

――中盤は主人公のセリフが少なく、ある意味でスクリーンに映る“自然”が主人公となっていることも関係しているのでしょうか。

坂本:静かな森の中でも、よく耳を澄ますと木の葉や枝がすれるような音が聞こえるんです。森にはたくさんの生物が息づいていて、その複雑な音の重なりが底流には存在している。今回はそういう音を目指したとも言えます。それでも、イニャリトゥとの確執……とも言える関係は大変でしたよ。今まで仕事をした中でも一番難しい監督だったかもしれません。

――確執というと?

坂本:作曲を依頼された最初の段階では、使用したい音楽をイメージするために、各シーンに既成の楽曲が仮で当てられていたんです。それを僕が作る音楽で一つひとつ上書きしていく。中には高名な音楽家のクラシックなどもあって、僕の音楽が負けちゃうと劇中でそちらの曲が使われるわけです。それは悔しいじゃないですか。実は最後の最後までチャイコフスキーの曲が使われているシーンがあって、何度トライしてもイニャリトゥは「ダメだ」と言うんです。こちらもかなりムッとしながら、「とにかく録音まではやらせてくれ。出来上がったものをちゃんと聴いてから判断してくれ」とお願いしました。少しケンカっぽくなりながらも、最終的にはチャイコフスキーに勝ちましたよ。僕としてはとても満足です(笑)。

――そんなやり取りがあったんですね。

坂本:2人の人間がいれば好みや考えも違いますから、衝突するのは当然ですよね。もちろん、お互いに最大限のリスペクトをもって仕事をしていました。チャイコフスキーの件はあまりにも大変だったし、お互いに苦い思いをしたので、「Trust me!(信用してくれ)」と書いたTシャツを作って彼にプレゼントしました。苦笑いしていましたよ(笑)。

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――今年度アカデミー賞で主演男優賞を獲得したレオナルド・ディカプリオについて、演技をご覧になった感想を聞かせてください。

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よしだたつき

記者:

PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

TwitterID: stamina_taro

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