現代版”二足のわらじ” 複業しながら働く男性に話を聞いた

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現代版”二足のわらじ”

これまで社会人として「働く」ということは、ひとつの会社で定年まで勤め上げるという意味だった。しかし最近、様々な理由から2つ3つと複数の仕事を同時にこなす「二足のわらじ」すなわち「複業」を行う人が増えている。今回、某保険会社で営業職として働きながら、個人で輸入業をおこなうBさんに話を聞くことができた。

――今、どんな仕事をお持ちなんですか?

「利益が出てるのは、ふたつです。ひとつは、今年の4月から働きはじめた保険会社の営業職。契約社員として雇用されてます。もうひとつは、自分で輸入業をやってて、ギターのエフェクターとか、レゴブロック(注:プラスチック製の組み立て玩具)、アパレルなんかを、ネットオークションで売ったり、企業や、一般のネットショップなんかに卸したりしてます。普段は、保険会社で平日の5時、6時まで働いて、夜は自宅で輸入業の仕事をしてる。もうひとつ、ツイッターで知り合った方とスポーツ関連の会社を立ち上げてる最中でして、正確には3つですね。そちらは利益が出てる状態ではないんですけど、まぁ、ガンガン営業して、コスト押さえて、っていうのじゃなくて、長い目で見てる感じ。メンバーはみんな他に仕事を持ってて、楽しくやろうっていう、NPOに近い感じですね。

バランスは取れてると思いますけど、この3つが同じ日にぶつかると、ヤバイですね。6時まで保険会社で働いて、そのあと輸入業のskypeミーテイング、メールを処理して、そのあとスポーツ会社のメンバーと……なんて時は、無理だなと。そんな日もあります」

――元々、自分で商売をすることに興味があったんでしょうか?

「それこそ何歳くらいからか分からないけど、ずっと前から、自分の手で商売をしたい、という思いがありました。高校を卒業して商学系の専門学校に行って、在学中に、アメリカの物流会社をやってる友人のつてで、輸入業をはじめることにしたんです。向こうの商品を彼に仕入れてもらって、日本で売るっていう商売ですね。

一番最初に売った商材は、レゴブロックです。レゴに興味があったわけじゃないんですけど、そのアメリカの友人に「日本だとレゴ人気だけど、どうなの?」って聞いて、仕入れてもらって、当時はヤフオクとか楽天、アマゾンに出して売りました。赤字になったり、売れ残ったりはしなかったけど、利益が千円しか出ない時もありましたよ。そのうち、千円、2千円が、次第に1万円、2万円になって。利益は、けっこうバラバラだったですけど、多いときで12万、13万ぐらいかな。少ないときは4万円とか……。レゴは特に、人気でしたね。日本にないような海外のものを輸入してました」

順調に収入を伸ばしていたBさん。しかし、3月11日の東日本大震災が、好調だった輸入業にブレーキをかける。

「地震で在庫がメチャメチャになったんですよ。実家暮らしなので、自分の部屋で在庫を保管してたんです。地震の時は学校に居たんですが、帰ってきたら、在庫の上に色々とものが落ちていて、レゴのパーツは壊れてる、エフェクターは傷が付いてて、売り物にならなくなってた。自分はけっこうポジティブな方だと思うんですけど、あの時はへこんだ。総額でいうと、20万円ぐらいの在庫がパーですよ。ちょっと萎えちゃって、暫くは輸入業はいいや、と思って、ぼーっとしてたんですけど、学校を卒業して、そろそろ働くかと思って、その時に友人がいた保険会社で契約社員になったんですよね。保険の営業をやろうなんて発想は全然なかったんですけど、やってみたら、サラリーマン生活も悪くないですよ。安定的に給料もらえるっていうのは、単純にすごいことだと思う。こちらの給料は15万円ぐらいで、生活するには困らないです。なんだかんだで、5時、6時には帰れるのがいいですね。今は完全復活ではないですけど、残業があると輸入業の方に支障が出ますから。『正社員になる?』って言われたこともあるんだけど、今の段階では断ってます。ひとつの会社で働くのはリスキーだと思うし、自分でいずれ商売をしたいので、ということで会社には伝えてます。『正社員になりたくないなんて、珍しいね』って言われましたよ」

震災が複業化のきっかけになったとも言えそうだ。Bさんは、現在の「二足のわらじ」状態について、どう思っているのだろう。

「周りからは驚かれます。『ふたつもみっつも、仕事なんてできるの?辛くないの?』って。でも自分の場合は、やってる中で大変っていうのは、全然ない。(増田→ネットでは、仕事が終わってからまた仕事やるなんて考えられない、という意見も多いが?)それはあれですよ、仕事が遊びになってないからですよ。仕事とプライベートを分けてる人だと、やってられなくなるでしょうね。むしろ自分は楽しくやってます。まあ、保険の仕事はあんまり楽しいとは思わないけど、会社としてはしっかりしてる大手なんで、自分の輸入業に活かせるな、手法を真似てみよう、って勉強になるところはけっこうある。シナジーがあると思いますね。まあ、たぶん、輸入業がまた軌道に乗ったら、そちらと、スポーツ関連の会社を軸に色々とやりたいと思ってるので、保険の営業は辞めると思いますが……」

――今後は、複業的な考え方って大事になっていくと思いますか?

「うーん、なんだかんだ言って、大企業や公務員に入って、ひとつの機関に生活を保証してもらおうって考え方も、ある意味合理的な判断ではあると思うんですよね。だから、全ての人にとって重要になるとは思わないけど、そういう人が増えていくのは確かでしょうね」

Bさんは、平成生まれの21歳だ。彼のような、新しい感性で仕事をする人が増えていったら、日本の社会はどう変わっていくんだろうか。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「増田不三雄」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
サラリーマンとして働きながら、職場のトレンドや問題を追いかけています。

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